2015.12.5 【第5回京大宇宙落語会@京都大学百周年時計台記念館ホール】

 【第5回京大宇宙落語会】

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京大宇宙落語会、タイトル見ただけで以前から気になる会だった。今回OBのたまさんが初めて出演するということでチケットを確保した。チラシの裏にはいろいろと書いてあるけどどうも主旨がよく分からない。「宇宙」と「落語」がどうつながるのか。そしてなぜ「京大」なのか。そんな疑問を持ちながら京大までやってきた。
まだ晩秋の空気を色濃く残すキャンパスを歩いていると、京都大学でない京都の大学OBの僕としては、はるか昔の学生時代の気分を思い出してなかなかいいものだった。
そして、りっぱな時計台の大きなホールで、とにかく不思議な落語会が開演した。

開会あいさつ / 柴田 一成 (京都大学付属天文台長)
福丸 / 道具屋
たま / 陰陽師
染二 / 掛け取り
福丸 / 名月記
中入り
トークショー『宇宙と落語のほんとうにオモロイ関係』
・柴田一成、染二、たま、福丸
(総合司会) 磯部洋明 (京都大学大学院准教授)

最初に柴田さんのあいさつ、山科に花山天文台というのがあって、そこの天文台長をされてる。また、宇宙と落語の関係とかの話になるが依然よく分からない。たまたま染二さんと知り合ったことでこの企画が考えられ、京大OBの福丸さんが参加して「宇宙落語会」は始まったようだ。いつも会っている落語ファンは数名しか見かけず、当然京大なのでアカデミックな空気がかなり会場に立ち込めていたけど、それはそれで悪くはなかった。

そんな中で最初にあがった福丸さん、落語はすべてネタ出しだったけど、「道具屋」は宇宙にはつながらないだろう。今回の落語会について、京大の同級生に来場依頼をしたところ「京大」と「宇宙」と「落語」とどこにポイントがあるのか分かりにくいと言われたらしい。もっともだと思う。福丸さんはやっぱりうまい。以前は若手感があったので落ち着きぶりがかえってそぐわなかったけど、いまはそんなこともなく実にいい佇まいだ。ぱっと見、たまさんより先輩にみえる。

続いて初参加のたまさん、記者会見で 「この会の主旨は」と質問されて、そんなもん分からんと。今回のこの会のPRには盛んに、初めて京大OBの二人の落語家が共演というのが出ていて、たまさん目玉やん、と思っていた。しかし予想通り高座ではいつものたまさん、協会総会での小軽さん問題をまくらでしゃべるも普通の落語会ほど受けず。やっぱりあの事件で落語家逮捕てのは落語ファン以外にはほとんど注目されてないんだ。続いて科学的なショート落語いくつかやって、これは受ける。科学的言うても「炊飯器」とかやけど。まだまだまくらしゃべりたそうやったけど、時間がないからと「陰陽師」に入る。なんとなく超能力ぽいところが宇宙につながりそうな気もするけど、内容はアベノキンテツやからな。これも悪霊の乗り移る異様な様でおおいに受ける。手ぬぐいの見立てで爆笑。

染二さんは「掛け取り」、宇宙的な言葉が散りばめられていて楽しかったけど、後半のトークでいくつか飛ばしたネタが出ていた。それも面白そうだった。この噺はやはり設定に合わせて触りやすいので宇宙的にもOKだった。染二さん、以前はうるさく感じることもあったけど最近随分聴きやすくなってきている。

落語の最後は福丸さんの新作「名月記」、子供がお月さんに疑問を持ってそこからセーラームーンとかが出てくる噺。宇宙の新作てことだけど、落語としてみた場合、福丸さんは古典の佇まいがすごく絵になる人で、だから逆に新作がいまひとつ似合わないように映ってしまう。たまさんは新作の表現方法で古典も処理してるように思える。たまさんから古典の似合う佇まいの片鱗を最近時々感じるんだけど、福丸さんはやっぱり古典を聴きたい。同じ京大OBでも随分タイプの違う噺家二人だな。

中入り後はトークなんだけど、その前に柴田さんが撮った太陽の映像を喜太郎の音楽とコラボしたDVDの一部の紹介があった。この映像の迫力には驚いた。

そして、いよいよトーク。プログラムをみると随分たっぷりと時間がとってあり、落語よりもこちらがメインではと思ってしまう。ここでも柴田さんの話にたまさんが突っ込むという、なにやら繁昌亭とかでよくみかける光景が展開された。仲でも秀逸だったのは「オーロラに向かって鳩が飛ぶことがあるのか」というたまさんの突込み。鳩はオーロラで方向感覚が狂うから、オーロラの近くでは伝書鳩として使えない。という話に対して。先生お二人がいろいろ説明されてたけど、出来レースかと思うほどたまさんシャープで受けていた。
後、これもたまさんの宇宙とは関係ない話で、「上方落語は時間当たりの笑いの密度が濃い」というのも分かり易かったな。こういうところからたまさんの古典のバッサバッサが来てるのかな。終演後に後ろを歩いていた女性二人がこれを話題にしていて「たまさんてさすが経済学部やな」と言ってたのが印象的だった。
最後に質疑応答のコーナーがあり、OBだという女性が「今日の落語は宇宙との関連が薄くて物足りなかったので来年はぜひもっと充実した落語を創ってほしい」。これにもたまさんが「質問じゃなくてリクエストですか」、と反応していた。果たしてたまさん来年も呼ばれるのか。

結局最後まで「宇宙」と「落語」の関係というのはよく分からなかったんだけど、要は柴田さんと染二さんが知り合ってお互い「落語」にも「宇宙」にも興味があってなんとなくコラボできひんかな。というあたりからきているのだろう。そこからいろんな方向に広がって来たこのイベント。来年からは笑福亭たまという強力 (?) な武器を手に入れてさらに発展していくのだろうか。でもとにかく楽しい会だった。
最後にひとつ、トークでのマイクがたまさんと福丸さん二人で一本てのはダメだと思う。きちんと一人一本が必要だ。