2019.12.3 【できらく Forever三金@動楽亭】

 

f:id:tomisin:20191204093741j:plain

さて今日は動楽亭で「できらく」。レギュラーメンバーだった三金さんの追悼の会だ。僕が初めて三金さんを聴いたのは10年ほど前「ダンシングドクター」ていう新作だった。演題通り、医者が踊りまくる。そして失礼ながらあの体型でダンスがキレッキレなんだ。驚いたな。とにかく楽しい高座だった。そんなにたくさん聴いたわけじゃないけど「できちゃったらくご」と「サンキンとキチボー」はほとんど通ってた。で、三金さんと言えばとんでもないエンターテイナーで、彦八まつりなんかでは毎年大活躍。特に今年のフレディ・マーキュリーはすごかった。そんな三金さんのこと「できらく」メンバーの方々が思い出を語りたいのならば、僕らとしては聴かせてもらうしかない。迷わず予約した。そして、別の話なんだけど、去年の3月からあれだけ聴いてたたまさんの落語を一席も聴いていない。21カ月ぶりにそれもこの際解禁だけどなんか緊張する。いろいろと楽しみな会、ぎゅうぎゅうの超満員で開演を待った。

f:id:tomisin:20191204100143j:plain

謎の美女!

全員 / 出番決めじゃんけん

あやめ / 奥野くんのコンパ大作戦

たま / 奥野くんのミステリー

南湖 / 奥野くんの山内一豊

仲入り

三風 / テレショップパニック・三金 ver.

遊方 / 聖なる贈り物

全員+笑金+三金くん / トーク

 

この会といえば、まず出番決めじゃんけんから始まる。新作ネタおろしの会なので、みなさんまだできてないとか言って、なんとか遅い出番を確保しようとするのだけど、三金さんだけはいつも余裕で早い出番になっていたなと。最近はメンバーではなかったたまさんも加わって、この5人が並んだら三金さんがひょこっと出てきそうで冒頭からなんか平常ではなかった。

そしてあやめさんから。昔、コラボ落語てのをやってたことがあって、あやめさんの「コンパ大作戦」と三金さんの「奥野くんのコンパ」を合体させて「奥野くんのコンパ大作戦」てのをつくったので今日はそれをかけると。どちらも聴いたことあるけど、あやめさんのに登場する女性三人組が年齢を偽って、奥野くんと友達の若い男性三人とコンパをする噺。よく出来てたな。元ネタよりも更に面白かった。男三人デブ設定とか、とんでもないフードのオーダーとか、年があわないカラオケとか。あやめさん今日しかやらないて言ってたけど、レギュラーネタにしてほしいぐらいだ。

続いてたまさん、三金さんと師匠の文枝さんとの話をたっぷりと。文枝独演会で「米揚げ笊」をかけた件やアメリカから見台かついで帰った話は爆笑だった。で、こんなエピソードをそのまままとめたら「できらく」の新作になると、シームレスでいつの間にかネタに入っていた。そして今日の噺はあくまで三金リスペクトだと思うけれど、この人の落語がやっぱり面白いのは間違いなくて、他の人とは切り口もちょっと違ってて、何が言いたいかと言うと、たまさんの落語をもう一度聴いてみることにするよ、てことだ。

次は南湖さん、小学生の息子さんが今年繁昌亭の「こどもらくご」に行って、トリの三金さんの「桃太郎」がとても面白かったと言ってたと。で、今回のチラシ見て「桃太郎の人や。桃太郎また聴きたいな」と。三金さんのこと息子さんにまだ言えてないらしい。ここでまた少しうるうるとした。そしてネタは「奥野くんの山内一豊の妻」。あっ、一応言うとくけど、奥野くんてのは三金さんの本名で、三金さんの新作に奥野くんシリーズがたくさんあるのです。まさか今日山内一豊が出てくるとは思ってなかった。舞台は戦国時代の滋賀県長浜、三金とまさこの夫婦が苦労して買った馬で流鏑馬をする。いい噺だった。

休憩後は三風さん、今日のメンバーの中では唯一の同じ一門、三金さんの兄弟子だ。吉本との契約の話から船の仕事に行ってる時に三金さんが倒れた話を聞いて駆けつけたと。そしてネタはおなじみ客席参加型の「テレショップパニック」の三金バージョンだ。前半はいつものこのネタ的にすすんでいくのだけれど、後半三金がなんと売りに出される。スペックは体重120キロ、体脂肪率50%、後の半分は優しさでできてる。ところがあっという間にSOLD OUT。下げがまたよかったな。

最後は遊方さん。かつての「できちゃったらくご」の合宿で、あやめ・遊方・三金と三風・たま・南湖の三人ずつに別れて新作の作りっこをした時のネタをしますと。「聖なる贈り物」は奥野くんの彼女がデブはやっぱりいやだとなって、友達に奥野君に罠をかけてそれを理由に自分と別れるようにもっていこうとする噺。そしてそれはうまくいくのだけれど、その友達が奥野くんとくっついてしまって、それを知った元の彼女に未練がでてきてややこしくなる。とても楽しかった。

最後は全員でトーク。次々と話はつきない。月並みだけどみなさんの話を聴いてると三金さんは本当に愛されてたんだなと思う。そして、あやめさんがこんなこと言うてるとなんか三金君がひょこっと出てきそうなきがするわ、と言って上手袖をみたら、本当に三金くんがでてきた。超巨体だ。六人で記念撮影してたら、たまさんが三金さんのお弟子さんの笑金さんを呼び込むの忘れてたと。で、笑金さん登場してあいさつ。これもいい話でまたほろり。舞台もほろり、客席もほろり。本当にいい会だった。

三金くんはこれからかあちこちの三金追悼落語会をまわっていくらしい。またあえるだろう。そしてできれば来年の彦八まつりで、フレディをやってほしいな。

f:id:tomisin:20191204115952j:plain

メンバーの全員+笑金さん+三金くん

f:id:tomisin:20191204120043j:plain

三金くんアップ!

 

 

 

「とみしんのブログ」はてなブログに移行完了!

今年の2月に、ヤフーブログが12月で終了を発表。ほんとに無責任だなと思ってすっかり書く気がなくなった。それから落語会とかの感想は twitter に上げていたのだけれど、やっぱり長文を書きたい時もあって、はてなブログに移行しました。以前のようにガンガン書けるかは分からないけれど、また少しずつ上げていきたいと思います。なので、こちらでもよろしく!

2019.2.26 【とびっきり寄席@守口文化センター】

【とびっきり寄席】

イメージ 1

京阪・守口市駅前の守口文化センターで行われてる 「とびっきり寄席」、うちからはかなり行きにくいのだけど、雀五郎さん、佐ん吉さん、ちょうばさんがレギュラー固定のいい会だし、落語会以外のお楽しみもあるしできるだけ行きたいと思っている。だけどまだ今日で3回目だ。ネタが出てないので、2月とはいえ世間が一気に春めいてきたこの時期、何がかかるのかと楽しみにしながら開演を待った

佐ん吉・ちょうば / 前説トーク
團治郎 / 看板の一
雀五郎 / くやみ
佐ん吉 / 仔猫
ちょうば / かぜうどん

この会はいつも開演10分前に佐ん吉さんとちょうばさんが登場して前説的なトークが始まる。佐ん吉さんの体調不良の話には驚いたけれど、この幕前トークにはどうしていつも雀五郎さんは登場しないのだろうか。

團治郎さんから、「看板の一」 は初めて聴くけれど、おやっさんの貫録が気持ちがいい。勢いもあってきっちり客席を暖めた。

そして雀五郎さん、「くやみ」 は「何度も聴いている。雀五郎さんの落語は絶妙の間と細かい所作や表情の変化が肝だと思っているんだけど、この噺で言えば、のろけ男が登場して、ききしに勝るすごさでエスカレートして周りを圧倒していく。そして、いくらなんでもまずいと気づくも、ここまでやってもうたからと、なんと再開する。この流れのところで高座と客席の間の呼吸が細かく揺れる様が楽しい。そして僕はこののろけ男や、「近日息子」 の謝らない男の件のように、本筋に関係ないところに脱線して受け続けいつまでも戻ってこないてのがかなり好きだ。

続いて佐ん吉さん、今時の学生は丁稚が分からないと。そして、江戸時代に丁稚から番頭まで出世するのは大変な確率だったという話から 「仔猫」。佐ん吉さんで聴くのは初めて。お鍋の田舎言葉に優しさが出ていていいな。そして事情を知った番頭の怖がる様がリアルだ。最後すべて知られてることを察知したお鍋の諦観、そして長い独白。かなり感情移入してしまう。僕は、この噺聴いた余韻として、この後お鍋は結局どうなったのだろうと、いつも思ってしまうのだけど、今日はきっと引き続き店にいることができたのでは、と思わせる 「仔猫」 だった。

最後はちょうばさん、自分の住んでいるエリアにはまだ屋台のラーメン屋がやってくると。そういえば僕の家の近所ではすっかり見かけなくなったな。そんな話から 「かぜうどん」。ようやく冬が終わりそうで、随分春めいてきたこの時期に真冬噺。でも落語で季節感をあえてはずすのも僕は嫌いじゃない。ちょうばさんのは屋台を担ぐ様が目に留まってなんかほっこりした。現実感が出ていい。 そしてこの噺も 「おひやをめぐる攻防」 がしつこくて面白い。結局客側が押し切るけど、うどんやが突っぱねるような展開もみてみたいな。そして最後は寒さが身に染みるように終わった。多分この冬最後の、いい 「かぜうどん」 だった。

今日もいい会だった。なんて言うのか三人の全く違う個性が、きっちり感じられて楽しかった。2か月に一度なので、もう少しピッチを詰めて来れるようにしたい。てことで、終演後はいそいそととある立ち呑み屋へと向かったのであった。
 



2019.2.22 【すこし前のはなし、そして今のはなし@テアトロ・ルセロ】

 【すこし前のはなし、そして今のはなし】

イメージ 1

去年の4月から偶数月最終金曜に開催されることになった 「石橋、落語なフライデー」、6回目の今日がいよいよ最終回だ。もちろん僕は皆勤、プロデューサーの方との落語の好みがあっているのか、いつも楽しくてバラエティにあふれた番組で、期待通りの内容だった。最後の今回は千朝さんと文之助さんという米朝一門の2人のベテランの落語に、小佐田さんを加えて鼎談という、これもまたとても楽しみな番組。どんな話が飛び出すのかとわくわくしながら開演を待った。

弥太郎 / 寿限無
文之助 / 庖丁間男
千朝・文之助・小佐田定雄 / トーク 「すこし前のはなし、そして今のはなし」
仲入り
千朝 / 口入屋

弥太郎さんで 「寿限無」 から。男が訪ねてくる前に、名前についての小噺的なものをいくつか。これで随分印象が違ってくる。正直僕はこの噺 「寿限無寿限無~」 と同じことを何度も聴かされるのが苦手なんだけど、今日の弥太郎さんは、いろいろと工夫があって楽しかった。

そして文之助さん、男と女の小噺いくつか振ってから 「庖丁間男」、あまり聴く機会はないけど、文之助さんで2回目だ。他にも 「茶漬間男」 とかの間男物とでもいう話がいくつかあって、どれも楽しいんだけど、たいがい男と女のばかし合いのようになる。文之助さん、冒頭からリズムよくトントンと運びよく受ける。正に手練れという感じだ。文之助さんも女が似合う。だけどこの噺、正直庖丁がモチーフになり切っていないというか、包丁が出てくる意味が今一つ分かりにくい。だから下げにもちょっとすかされた感じが残る。 

そして鼎談、小佐田さんが先に登場し、二人を呼び込む。千朝さんと文之助さんは同い年で学年は千朝さんが一つ上になる。そして年期も同様に千朝さんが一年上。つまりほとんどこの世界の経験が同じ。千朝さんは米朝さんに、文之助さんは枝雀さんに、それぞれ入門したのは40数年前。 そんな会話から始まって、師匠からの稽古の話になる。米朝さんの稽古は本当に怖かった、と千朝さん。覚えが悪いと機嫌が悪くなるけど、そんなにちゃっちゃいとは覚えられない。で、3年の年期中に10本のネタをつけてもらったと。一方枝雀さんの稽古は丁寧で親切だと文之助さん、でも丁寧過ぎて 「へっつい幽霊」 冒頭の 「おい、道具屋」 の解説が延々と続き稽古が全然進まないと。二人の師匠、それぞれキャラが出ていて面白い。そんな流れで、松之助さんの稽古の話になったりして、とても楽しい鼎談だった。

そして、その後の仲入り中に twitter で訃報を知り驚く。おそらく三人さんも鼎談の時点ではご存知なかったのでは。

最後は千朝さん、滋賀県の大きなホールで素人とプロの歌に挟まって落語をした話で大いに受けてから、ハローワークのことになって、「口入屋」。冒頭から口入屋番頭の小言が絶好調だ。こういうところでも千朝さんの間のない間とでもいう様なしゃべりが軽快感を出す。どこで息継ぎしてるのか分からないように言葉がたたみかけられる。一方こちらは、ぬの屋の番頭、きれいな女子衆が入ってきたとドガチャガドガチャガと大はしゃぎ。こんなおっさんが店仕切っていて大丈夫なのかとも思うほどだ。そして御寮人さんとの面談でスーパー女子衆の事実が分かる。ここの立て弁的なしゃべりも好きだな。聴いていてテンションが上がる。そこから善棚・薪山、ハイライトの場面に。聴かせどころの多いこの噺を全く崩れることなく一気にしゃべりきって、大爆笑が続いた。とてもいい「口入屋」 だった。でも僕が聴いたベストの「口入屋」 は実は2012年大美での当時の雀松さんなんだ。

この企画最終回ということで、いろいろと楽しい会だった。そして思わぬ松之助さんの事もあったりして、この先忘れられない会になった。それにしても千朝さん、文之助さんは本当に達者な人たちだ。僕は米朝一門のベテランの方の中ではお二人に九雀さんを加えた三人が一番好きなんだけど、みなさんの落語にはもう安心して身を任せられる。ほとんど噛んだりしないのも驚異的だな。
そして、この会をプロデュースしていただいた、さかいさんにはぜひ4月以降も続けていただきたいなと願っておくことにする。

2019.2.20 【桂雀三郎 ツギハゲ落語会@ツギハギ荘】

桂雀三郎 ツギハゲ落語会】

イメージ 1

今日も初めての会だ。雀三郎さんが二席するツギハギ荘の会、キャパは詰めて40人ぐらい。どちらにしてもとても贅沢な会だ。そして開口一番は智丸さんで、中は雀五郎さん。こちらもいい顔触れだ。画像のようにツギハギ荘は古民家に近いような建物なので冬は寒い。大阪が少し暖かくなってきた今日、きっと楽しいだろうと開演を待った。

智丸 / 手水廻し
雀三郎 / 一人酒盛
雀五郎 / 花筏
雀三郎 / 不動坊

智丸さんは、今までも何度か言ってきたけど、大阪弁のしゃべりがいい。べっっちゃっとして粘いんだけど乾燥してるみたいな口跡はなかなかお目にかかれない。引っ張って、止めて、また引っ張って、そういうのが自在だな。こんな感じが本当の大阪のネイティブなんだろう。

雀三郎さん、師匠に習った酔態を細かく繰り返して見せる。こういう時はやっぱり枝雀さんにみえるな。で、段々出来あがってくる様が楽しい。だけど、知らない人見たら変な光景だと。そこから 「一人酒盛」、有名なネタの割に聴く機会は少ない。雀三郎さんでは2回目だ。引越しの手伝いに来た友人に、何もしてもらわなくていい、と言いながらあれこれ言いつけて、自分は飲み続けて結局友人には一杯も飲ませない。現実には有り得ないと思うのだけど、よくこんな台本が書けたなと。無理やりな設定を聴き手に納得させる必要があるので難しいんだろうか。だからやり手が少ないのかな。雀三郎さんはもちろん大爆笑だ。

続いて雀五郎さんは 「花筏」、2日前に千朝さんで聴いたところだ。出だしの 「徳さん、おるか」 がなんとも渋い。雀五郎さん、改めていい声してるな。前半はトントンとリズムよく進んだけれど、途中でプロレスの話に脱線させたのが面白かった。この噺、雀五郎さんでは2回目だけど前に聴いた時はこういうのなかった気がする。そして後半、千秋楽に相撲をとらされそうになり帰ろうとする徳さんに、親方が詰め寄る.夜這いの件を責められた徳さん、「へっ!」 とか 「あちゃー」 とか、ここがなんともゆるくていい。そして二人で作戦を練る。一方父親は千鳥を相撲とらせないよう説得する。てことで結びの一番、四人それぞれの思惑が土俵でぶつかり下げに。この下げも好きだな。

最後は雀三郎さん、松竹座の 「天下一の軽口男」 に出ていた話から、関ジャニの人が出ていたので、客席は30前後の女性ばかりで落語会とは客層が全く違うと。なんか楽しそうな仕事でいいな。そこから、講談師と噺家の違いの話になって 「不動坊」。僕はこの話がとても好きで、特に雪がしんしんと降る中で男たちがあほなことする場面がたまらない。そして雀三郎さんのは、お滝さんをと家主に言われて喜びまくる利吉、怒る三人の男たちと感情表現がぶっ飛んでるのがいい。最後はいろいろ企んだのが失敗してとんでもないことに。
「遊芸稼人」 てのは字面も音もいい言葉だな。しかしこの噺、お滝さんはそこにいるんだけど、セリフな一つもないんだな。こういうこと作者は意図的にやってたんだろうか。

初めての会、小さな小屋での昼夜公演。雀三郎さんは900キャパのブリーゼで独演会をする人なんだけど、こういう小屋でも落語会をする。そしてなぜか40人キャパが満員にならない。それが不思議だけど、僕らにしたらこんなにいい環境で雀三郎さんの落語を聴けるのは何よりだ。だけど、小屋のキャパに応じてなぜかお客さんはやってくる、て誰かが言ってたけどそういうことはあるんだな。どちらにしても、この会もまたおじゃましたくなった。最近魅力的ないい落語会がほんとうにたくさんある。 


2019.2.19 【生喬まるかじりの会2019~一席入魂~@動楽亭】

【生喬まるかじりの会2019~一席入魂~】

イメージ 1

生喬さんの 「まるかじりの会」、今年はゲストと二人で長講一席ずつ。そしてもちろんトークもあり、というとても注目のプログラムとなっている。先月スタートのゲストは吉坊で、今月は紅雀さん。そして来月以降もいいゲスト陣が続く。落語をやって、そのネタの話を中心に二人でトークして掘り下げるという、生喬さんとゲストの方どちらのファンにとってもすごく楽しみな企画だ。さて今日はどうなるのかと考えながら開演を待った。

生心 / 寿限無
生喬ばなし
仲入り
生喬 / らくだ
生喬・紅雀 / トーク

この会は開演前に前座として毎回生心さんが登場する。生喬さんの新しいお弟子さんだ。先月に次いで二回目、今日は 「寿限無」 だ。口の動きが少し気になったけど、しつこくてくどい口跡が何か化けそうな気もする。

続いて生喬さん上がっていろんな話し。京都の綾部での三扇さんの会の話、そして師匠の話。三扇さんの娘さんの話。なんか人柄出て楽しい。

そしてゲストの紅雀さん、久しぶりに落語するとかだけど、聴くのは今年3回目。メールの返信のことで雀五郎さんいらってから 「天狗裁き」、年末の雀喜さんとの二人会で紅雀さんでは初めて聴いた。その時も感じたけど、紅雀さんのは女房のお咲さんがとてもいい。最初優しく、そして怒って喧嘩になって、感情表現が細かくて多彩で、聴いていてとても楽しい。隣人、家主と登場人物がみんな少し派手目なのが紅雀さんらしいか。そして最後は天狗、これも怖さよりも面白さが勝ってる感じで、かなり楽しい 「天狗裁き」 だった。  

仲入り後はいよいよ 「らくだ」 だ。大阪には 「らくだ」 マニアと言われる人たちがいて、ネタが出ていれば演者が誰でも足を運ぶらしい。果たしてそういう人がホントにいるのかは未確認だけど、やはり今日も大勢のお運びだ。 そして僕はこの噺とりわけ好きというわけでもないんだけど、やはり僕自身の傾向として米朝一門の方がよく聴いてる。でも生喬さんでも今日で3回目だ。生喬さんのは冒頭から熊のやたけたぶりと屑屋の善人さがどちらも強調されていて対照が際立つ。無理難題を要求する熊、いやがるけれどしかたなく従う屑屋。だけど、結局は要求をのませる屑屋の交渉力もなかなかだな。そして、らくだが死んだことを聞かされた時のみんなのうれしそうな顔ときたら、らくだがかわいそうに思えてくるぐらいだ。後半になって、屑屋が飲み始めてじわじわと変わってきて、熊との立場が逆になってくる。で、屑屋の長い独白から葬れんの準備、無茶をする屑屋。千日前の火屋へ。そして下げ。一番印象的だったのは、かんかんのうを躍らせる場面での熊の力の入れようがありありとわかったところ。これがあってこそ、かんかんのうを家主が怖がったことがリアルになると思う。さすがにとてもいい 「らくだ」 だった。

最後は生喬・紅雀、二人のトーク。この会はトークでの芸談やネタの話もとても楽しみだ。生喬さん、「らくだ」 は 15年前に師匠から習ったと。師匠の先代松喬はでもあまりやらなかったらしい。そしてなんと兄弟子の当代松喬さんには生喬さんが頼まれてつけたと。ここで、元散髪屋の先代松喬のカミソリの持ち方のこだわりの話が面白かった。で、生喬さん、紅雀さんのことを直感で落語できるところが素晴らしいとほめる。僕も同じだ。「天才紅雀」だと思っている。三重vs滋賀、お互い出身地の田舎話も楽しかった。
ここで、生喬さんが振って、「今、どのネタが好きか」 という話になる。紅雀さんは 「除夜の雪」 の後半じゃなくて、前半の寺子三人の会話の場面が好きだと。紅雀さんの 「除夜の雪」 も年末に聴いた。僕もこの場面がとても好きなんだけど、紅雀さんのはやはりこの場面が強調されていて面白かった。対して生喬さんは 「三人兄弟」  が好きだと。かなり珍しい噺で、調べたら僕は7年前に生喬さんで聴いた一度きりだ。でも噺の内容はよく覚えている。演者の方のこんな話はなかなか聴けない。今日のトークもとてもよかった。

生喬さんの会と言えば、客席をおっさんが圧倒することで有名だったのだけど、1月2月と女性客も多い。ゲストが吉坊と紅雀さんだからということもあるんだろうけど、でも3月も花丸さんだから、またこの傾向は続きそうだ。そして花丸さんのネタは 「たちぎれ線香」 。対して生喬さんは彼岸の月に 「天王寺詣り」 だ。これも見逃せないな。今日5月以降のチラシをいただいたけれど、南天さんの 「算段の平兵衛」 を始めいいネタが並んでいる。今年はこの会、皆勤を目指すかな。

2019.2.18 【千夜九夜物語・第11夜@繁昌亭】

【千夜九夜物語・第11夜】

イメージ 1

イメージ 2

かつて米朝さんが発売したLP全集・23巻について、基本発売順にかけていくという好企画の落語会も今日で
11夜目になる。そろそろ折り返しが近づいているのか。千朝さんと九雀さんという個性の違う達者な二人が、いつも二席ずつ取り組んでいく贅沢な会。今日もいいネタが並んでうきうきしながら開演を待った。

九ノ一 / 東の旅-発端~煮売屋
千朝 / 貧乏花見
九雀 / 京の茶漬
千朝 / 花筏
仲入り
九雀 / こぶ弁慶

九ノ一さん、あがっていきなり 「発端」、九ノ一さんで聴くの久しぶりだし、まさか予期してなかったので意表をつかれた。でもそんな中での 「発端」 はなかなかシュールに聴こえて楽しかった。大体僕はこの噺がかなり好きなんだ。リズム落語というか~僕が勝手にそう呼んでるだけなんだけど~九ノ一さんのようにテンポよく元気に進んでいくと、この噺は本当に聴いていて気持ちがいい。開口一番だけど25分、たっぷりと煮売屋のじき醒めまで。

千朝さん、昔の給食の三角食べとかうさぎ跳びやらされた話で受ける。いつもながら、同年代なのでこの人のこういう話は可笑しくて仕方がない。そこから 「貧乏花見」、この噺聴くと春だな。千朝さんは貧乏に負けないバイタリティの噺だと。本当にそうだな。で、花見に出かけるまでのわちゃわちゃがとても楽しい。ぶつぶつ言いながらもみんな前向きなのがいい。しかし、裸にスミて、ここで爆笑。千朝さんご陽気に踊って桜の宮に登場。場所の設営でもまた爆笑。今日はこの辺りまで。後半の喧嘩の件も聴きたかったけど、今日はさすがに時間がなかったか。

続いて九雀さん、九ノ一さんの発端を楽屋で聴いていてお二人がこれの稽古をしたのはもう40年以上前で、最近はやらない一門も多いらしい。そして、この会完結までまだ14~15回かかりそうだと。僕もそこまで元気でいないと。そこから本音と建前の話をはさんで 「京の茶漬」。京都の建前文化をよく表した話だと。僕は上方落語の隠しテーマの一つに 「京vs大坂」 てのがあると思っているんだけど、その代表的な噺だ。「お茶漬けでも」 と言わせたくてわざわざ京まで訪ねていった大坂の男、明確な目的を持っている方がやはり強くて、言わせることに成功する。でもその後もまだバトルは続く。九雀さんのは二人の気持ちの変化が手に取るように分かって楽しかった。

そして千朝さん、昔の子供はスポーツと言っても野球か相撲ぐらいしかすることがなかった。そして相撲遊びでもいろんな子がいて、個性的な相撲取りもたくさんいたと。そこから二席目は 「花筏」。今日改めて感じたけれど、千朝さんのは間のない間だな。そして会話中の二人を全く演じ分けない。それでも面白くてこういうストーリーものなら筋を知ってても先が楽しみでわくわくする。やっぱりこの人の噺はずっと聴いていきたい。後半、徳さんと親方の思惑、そして千鳥と父親の会話。その四人の思いが交錯する土俵上。で、勝負がついて下げ。この下げも好きだな。スコンと落としてこその下げなので、そんなスコン感がいい。

最後は九雀さん、再び九ノ一さんの 「発端」 に触れて、先ほどのは東の旅の最初の話、今からするのは帰路の大津の宿、同じ東の旅の最後の方の話だとl断って、「こぶ弁慶」。宿探しで声掛けられて 「定宿ある」 でキャッキャ言う喜六。おなじみの風景からスタートだ。旅館にあがって食事になって、なぜか両隣を始めそれぞれの部屋の客と一緒になって数十人の大宴会に。このあたりのどんどん増えていく様がわくわくを増幅させる。そして喜六清八を差し置いて、この噺の主人公 「壁土を食べる男」 が登場する。そこからはとんでもない展開になるのだけど、九雀さんはリズムよくトントンと運ぶので、余りとんでもなさを感じないで噺に入り込んでしまう。しかし、男とこぶの弁慶の掛け合いは楽しかったな。で、このネタも下げ前から下げに至るまでの展開も好きだ。察しがつくけれどでもいいな。なかなか聴く機会が少ないので、もっと聴きたい噺だ。

今日も4席+「発端」で堪能した。でもあと14~15回というと5年ぐらいかかるのかな。なんとかコンプリートしたいものだ。そしてこの会はプログラムがLPジャケットをもじった形になっていて、それをもらうのも楽しみ。今回からまた色が変わった。全部集めるよ。

イメージ 3