2019.2.22 【すこし前のはなし、そして今のはなし@テアトロ・ルセロ】

 【すこし前のはなし、そして今のはなし】

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去年の4月から偶数月最終金曜に開催されることになった 「石橋、落語なフライデー」、6回目の今日がいよいよ最終回だ。もちろん僕は皆勤、プロデューサーの方との落語の好みがあっているのか、いつも楽しくてバラエティにあふれた番組で、期待通りの内容だった。最後の今回は千朝さんと文之助さんという米朝一門の2人のベテランの落語に、小佐田さんを加えて鼎談という、これもまたとても楽しみな番組。どんな話が飛び出すのかとわくわくしながら開演を待った。

弥太郎 / 寿限無
文之助 / 庖丁間男
千朝・文之助・小佐田定雄 / トーク 「すこし前のはなし、そして今のはなし」
仲入り
千朝 / 口入屋

弥太郎さんで 「寿限無」 から。男が訪ねてくる前に、名前についての小噺的なものをいくつか。これで随分印象が違ってくる。正直僕はこの噺 「寿限無寿限無~」 と同じことを何度も聴かされるのが苦手なんだけど、今日の弥太郎さんは、いろいろと工夫があって楽しかった。

そして文之助さん、男と女の小噺いくつか振ってから 「庖丁間男」、あまり聴く機会はないけど、文之助さんで2回目だ。他にも 「茶漬間男」 とかの間男物とでもいう話がいくつかあって、どれも楽しいんだけど、たいがい男と女のばかし合いのようになる。文之助さん、冒頭からリズムよくトントンと運びよく受ける。正に手練れという感じだ。文之助さんも女が似合う。だけどこの噺、正直庖丁がモチーフになり切っていないというか、包丁が出てくる意味が今一つ分かりにくい。だから下げにもちょっとすかされた感じが残る。 

そして鼎談、小佐田さんが先に登場し、二人を呼び込む。千朝さんと文之助さんは同い年で学年は千朝さんが一つ上になる。そして年期も同様に千朝さんが一年上。つまりほとんどこの世界の経験が同じ。千朝さんは米朝さんに、文之助さんは枝雀さんに、それぞれ入門したのは40数年前。 そんな会話から始まって、師匠からの稽古の話になる。米朝さんの稽古は本当に怖かった、と千朝さん。覚えが悪いと機嫌が悪くなるけど、そんなにちゃっちゃいとは覚えられない。で、3年の年期中に10本のネタをつけてもらったと。一方枝雀さんの稽古は丁寧で親切だと文之助さん、でも丁寧過ぎて 「へっつい幽霊」 冒頭の 「おい、道具屋」 の解説が延々と続き稽古が全然進まないと。二人の師匠、それぞれキャラが出ていて面白い。そんな流れで、松之助さんの稽古の話になったりして、とても楽しい鼎談だった。

そして、その後の仲入り中に twitter で訃報を知り驚く。おそらく三人さんも鼎談の時点ではご存知なかったのでは。

最後は千朝さん、滋賀県の大きなホールで素人とプロの歌に挟まって落語をした話で大いに受けてから、ハローワークのことになって、「口入屋」。冒頭から口入屋番頭の小言が絶好調だ。こういうところでも千朝さんの間のない間とでもいう様なしゃべりが軽快感を出す。どこで息継ぎしてるのか分からないように言葉がたたみかけられる。一方こちらは、ぬの屋の番頭、きれいな女子衆が入ってきたとドガチャガドガチャガと大はしゃぎ。こんなおっさんが店仕切っていて大丈夫なのかとも思うほどだ。そして御寮人さんとの面談でスーパー女子衆の事実が分かる。ここの立て弁的なしゃべりも好きだな。聴いていてテンションが上がる。そこから善棚・薪山、ハイライトの場面に。聴かせどころの多いこの噺を全く崩れることなく一気にしゃべりきって、大爆笑が続いた。とてもいい「口入屋」 だった。でも僕が聴いたベストの「口入屋」 は実は2012年大美での当時の雀松さんなんだ。

この企画最終回ということで、いろいろと楽しい会だった。そして思わぬ松之助さんの事もあったりして、この先忘れられない会になった。それにしても千朝さん、文之助さんは本当に達者な人たちだ。僕は米朝一門のベテランの方の中ではお二人に九雀さんを加えた三人が一番好きなんだけど、みなさんの落語にはもう安心して身を任せられる。ほとんど噛んだりしないのも驚異的だな。
そして、この会をプロデュースしていただいた、さかいさんにはぜひ4月以降も続けていただきたいなと願っておくことにする。