2017.2.18 【動楽亭昼席】

【動楽亭昼席】

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さて、今日は動楽亭の昼席へ。ここは毎月1日~20日まで昼席開催、そして夜席および21日~末日までの昼間は貸席となる。上方では当然繁昌亭に次ぐ落語会の開催回数であり、実質的には定席と呼んでもいいと思っている。21日以降に現状昼席を開催していないのは、おそらく土日の昼間にここで落語会を開きたいという噺家のみなさんの希望によるものだろう。そしてここの席亭およびオーナーは、もちろんざこばさんだ。

以上が動楽亭の基礎知識だけど、2月昼席のチラシを見た時に18日は絶対に行かなくてはと思った。
何と言ってもトリが文珍さん、中トリが三喬さん、そして三つ目でたまさんも出る。ただこれは混むぞ、と。しかも土曜日てのが混雑に拍車をかけそうだ。そんなことで、今日は僕の動楽亭昼席での新記録で、11時50分に着いた。7人目だったけど twitter で早い人は11時前から並んでいたようで、上には上がいるなと。
その後列はどんどん長くなり、早めに開場した1時10分ごろには札止めになり、その時点で20人ぐらいの人が入れなかったらしい。
そんなこんなで開演前から盛り上がりまくっていたら。1時30分ぐらいに、たまさんと優々さんが私服で登場した。この写真前説にしか見えないと思うけど、実は行列整理や開場時間が早くなったことで遅れていたチラシ挟み込みができたので、皆さん学校みたいに後ろにまわしてください、というお願いだった。
そして定刻2時になりようやく寄席は開演した。

優々 / 平林
ちょうば / おごろもち盗人
たま / 鼓ヶ滝
三喬 / 抜け雀
仲入り
わかば / 片棒
文珍 / 眠れない夜~鹿政談

写真を見ればわかるように、今日僕は座椅子二列目の真ん中という普段ならまず座らないポジションにいたのでかなり印象が違った。

優々さんから、学校寄席の話で落語会の客席に受けるのは、落語を知らない先生のボケっぷりだ。これがまた面白い。そこからネタは 「平林」、優々さん最近聴く機会少ないけど、しゃべりのリズムがいいな。この人も独特の間がある。うまく言えないけど、少しPOPで弾むような間、分かりにくいか。ともかく最初からすっかり熱い客席をうまく取り込んでつなげた。

次はちょうばさん、左手小指の骨折について、「とりあえず、まず説明しないと落語聴きにくいでしょう」 と。小拍子は右手で使っていた。で、噺は 「おごろもち盗人」、いろいろと政治家の名前出して風刺、こういうのが寄席のいいところだ。そして、ちょうばさんもすごく気持ちのいい高座でよく受ける。きれいな高座だ。こうして寄席はいい感じで次の演者につながっていく。

三つ目はたまさん、またまた四代目春團治の話、明日、明後日は同じ昼席出番でご本人と一緒だから存分に語ってほしい。僕は行かないけどね。そして、ネタを迷ってて拍手で決めたい。「近日息子」 か 「鼓ヶ滝」、両方知らないて人には 「寿限無」を、と。この時点で今日の客席のマニア度をきっちり読んでる。
結果は 「鼓ヶ滝」 になる。 最近たまさんでよく聴いているんだけど、たまさんのしゃべりに短歌のリズムがすごく合ってるように聴こえる。しかし、気持ちよいまま終わらせてくれないのがたまさんで、後半は西行法師が俄然口汚くなる。そして、それは古い台本にそう書いてあると。またこういう時のたまさんの声がよく通る。いつものように一席の高座の中でいろんな色を見せて、たまさんが下りた。

中トリは三喬さん、まくらなしで入る。今日はちょうばさんが 「おごろもち」 を掛けたので、盗人噺はできない。ネタ何だろうかと思っていたら、小田原の宿で……。「抜け雀」 だ。喬太郎さんではないから 「抜けガヴァドン」 になる心配はない、て、なっても面白いけど、そういえば来月二人会だな。
もう三喬さんの落語については、面白いし、声はいいし、ボケる味があるし、ひたすら達者だし、何も言うことはないと前から思っていたら、この距離で聴くと息遣いが抜群に安定してることに気付いた。これって多分語り芸の一番基本だな。
そして、上方では今、春團治襲名の件でいろいろあるけれども、三喬さんはそれより先、今年の秋に師匠の名前松喬を襲名する。こちらは誰もが祝福する襲名、これから先の三喬さん、とても楽しみだ。
でもまくらも聴きたかったな。時間の関係だろうけど。

ここまで4人、本当にみなさんよかった。でも、これだけ近い距離で聴くと、ライブ感が余りにも強すぎて、逆に伝わり方に似通った印象の部分も出てきた。すくなくとも5~6mでも離れていたらそんなことないんだけど、いつもこの距離で聴いてるとそんなこと感じなくなるのかな。動楽亭昼席はしばらく近くで聴いてみることにしよう。

そして仲入り後はわかばさん、いつもの色が黒いまくら、でも冬場だからそれほど黒くは感じない。夏ならとても噺家さんとは思えないほどの色になる。ネタはこれもいつもの 「片棒」、少し滑舌がよくない気がした。

最後はいよいよ文珍さん、もう高座に上がるだけでとんでもない存在感がある。4年ほど前になるのか、文珍さんが動楽亭昼席初出演の時、平日だったので午後会社休んできて、「けんげしゃ茶屋」聴いて、いやすごいなと感じたんだけど、その時は真ん中より後ろの方だったので今日はまた全然違う。
文珍さん、今日は三喬くんやたまくんが前を固めてくれて、とか言いながら、いろいろと演者をいらってる。そして春團治襲名もまたいじって、とりとめのない話が続くけれども、何をしようか考えてるんだと。
そして、噺に入った。新作だな。親父が息子になって悩んでるという噺、これ面白い。文珍さん、こういう少しシュールで、少しわけのわからない噺をふわふわ浮かして客席に広げていってつかんでしまう。動楽亭のように広くないスペースだとそれがよくわかる。「眠れない夜」という噺らしい。
そして話が変わって、「鹿政談」 をすると。結果的には 「眠れない夜」 をまくらにした感じですぐに 「鹿政談」 が始まった。この噺、結構かける人多いのだけど、江戸・京・大坂、三都の名物は、という立て弁ぽいのから奈良の名物になって、町の早起きというのがあって、そこからネタに入るという、定番のまくらがある。まずほとんどの人はこのまくらをふるので、本編よりもこのまくらに飽きてしまって、ああまた鹿政談だ、となることが多い。今日の文珍さんはこの名物まくらを全く言わないで噺に入ったのでとても新鮮に聴くことができた。ゆっくりとリズムを維持しながら時々ずらしたりとかで客席をつかんでしまう独特の語りが気持ちがいい。そして、下げ前の鹿奉行・塚原出雲がとても上手い。強気に出て、カンと言わされて、困惑して素直になる。短い時間に変わっていく様が分かり易くて下げで落ち着く。こんな 「鹿政談」 ならまた聴きたい。

今日はとにかく早くから並んだ甲斐があった。そして、文珍さんの二席はどちらもネタおろしだったと後で聞いて驚いた。他の噺をするつもりだったのかもしれないけれど、客席みてこうなったのだとしたら、そこにいた一人としてとてもうれしい。文珍さん、ざこばさんに出てくれと言われたそうだけど、年に一度でいいからこれからも動楽亭昼席に出てほしいなと思う。そして今日は改めて、上方落語界の中での動楽亭という小屋の大切さを合わせて思った。