2017.6.14 【動楽亭昼席】

【動楽亭昼席】

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動楽亭昼席、何か久しぶりだと思ったら3月以来だった。番組がよくないとかじゃなくて、今年は基本落語会に行くのを減らそうと思っているので、どうしても動楽亭のように当日のみの寄席は機会が限られてくる。だからと言って正直落語会の回数はほとんど前年と変わらないんだけどね。そんな中、今日は6月の日程を見た時から来ようと思っていた。地味にいいと言うと失礼だけど、福笑さんが地味なわけないけど、なんとなく玄人受けする顔ぶれだ。開場待っている時、列が案外伸びなかったのだけど、最終的には50人ぐらいか。最近大阪の落語会の傾向として平日昼間でも入る会は入るので少し物足りないかな。そんな感じで開演した。

弥っこ / つる
三語 / 長短
ひろば / 肝つぶし
文華 / 幸助餅
仲入り
生喬 / 虱茶屋
福笑 / ちしゃ医者

弥っこさん、先月 「時うどん」 聴いた時も感じたことだけど、随分落語がきっちりしてきた。テンポがいいし間もいい。そしてかなり言葉の数の多い落語に聴こえる。こういう落語がスムースに耳に入ってくる時は聴いていて気持ちが良くなる。先が楽しみだ。

続いて三語さん、新大阪で師匠を車で待っていた時に警官にいろいろ訊かれた話で受ける。
そこから 「長短」、この噺やはり難しいのかな。三語さんのは二人のキャラのつくり方は面白いと思うのだけど、それぞれの間が時々一定でなくて、少しぶれるところが感じられた。そうなるとこの噺はあまり楽しくなくなってくる。やはり間が命みたいな噺だから。

そしてひろばさん、ざこばさんの見舞いに行ってとても元気だったという話、そして喫茶店で別れ話をしてる男女に遭遇、女性の論理が訳が分からなかった、と。そこからネタは 「肝つぶし」、これも訳の分からないネタで、冒頭から患ってる男のもとに友人が訪ねきて、恋わずらいということなんだけど、この時点で 「崇徳院」 を始めこの手の噺とは違う不気味さのようなものが流れてる。とにかく噺の展開が急で、その流れを全部夢で一旦オールクリアして、さらにその上で恋わずらいを直すには 「年月揃った女の生き肝」 が必要と。この年月揃ったてのは他の噺にも出てくる。 文楽かな。どちらにしても不気味さがエスカレートする。だけど、噺として聴き手を引き付けるパワーはあるし、ひろばさんはそんな独特な空気を作るのが上手い。訳の分からん噺やな、と思わせたらこの話は勝ちなんだ。そしてさげは普通に落語的なんだけど、それまでがそれまでだけに、そんでどないやねん、と思ってしまう。

次は文華さん、先日東西噺家二人ずつで鳥取に仕事に行った時の話から鳥取出身の元横綱琴桜の話、そして相撲の噺をします、と。流れが少し強引な気もするけれど、「幸助餅」 僕はいいのを随分聴いているぞと思っていた。そして文華さんのは雷がとてもいい。他のいい 「幸助餅」 はあくまで幸助が主役で、もちろん文華さんのも同じなんだけど、前半の雷の声が大きくて憎らし気で聴き手の心をざわつかせる。そしてセリフがまたいい。
雷の名前に傷がつくと幸助を突き飛ばし、尻餅ついたのを大笑いする。なんて奴だと思わせる。
で、3年後立派になった大黒屋の店先に雷現れて、餅を買い代金としてあの時の30両を払う。そして 「ようしんぼうしはりましたな」 と雷の独白。あの時の真相が語られる。とても骨太な雷だ。客席には結構ハンカチ使う女性も。そう言えば今日は雷の弟子二人が登場しなかったな。雷をより強調するためだろうかな。

「幸助餅」 の感動、そして仲入りの後は生喬さん、上がっていきなり 「ここからは笑福亭が二人続きます」
そして、最近役者としてミュージカルに出た。はなしか宝塚じゃなくて普通のに。で、そのミュージカルの学校公演に出ることになった、と。そこからネタは 「虱茶屋」、いたずら好きの旦さんが芸妓やたいこ持ちや座敷にいるみんなに骨相を見てやるといって襟あしから虱を入れていく噺。そしてみんなかゆくなって座敷は大騒ぎになるんだけど、 たいこ持ちには特に虱をたくさん入れてやる。そしてじっとしていられなくなって、立ちあがって夜桜を踊りだすけれどまともに踊れない。生喬さんは結構高座で踊る人だけど、このかゆいのを我慢して踊る様は爆笑だった。生喬さん 「幸助餅」 の空気を一変させて福笑さんにつないだ。

そして最後は福笑さん、上がって医者の話を始めた。そしてステレオタイプという言葉の意味を取り違えてたと。
この言葉は、「型にはまった物事の見方」のような意味で、落語の中では下ネタの扱い方が難しい部分もあるけれど、今日はステレオタイプをあざ笑うような落語をする。「幸助餅」 で帰ってたらよかった、てことになるかもしれない、と。そこからネタは 「ちしゃ医者」、この噺はここ数年たまさんがかなりの頻度で掛けているのだけれど、師匠の福笑さんのは去年繁昌亭の 「たった二人の一門会」 で聴いただけで、内容も細かく覚えていないけど、とにかく強烈な印象は残っている。たまさんの 「ちしゃ医者」 は前半は普通の可笑しい噺で、それが後半の下ネタ展開と対照的になる。しかし、福笑さんのはもう冒頭から後半のとんでもない展開を想像するような空気で噺が進んでいき、ちょうずやが登場してからはもうどこでも下ネタだ。福笑さん、「ここまで徹底すれば下ネタもいっそ清々しい。〇〇こは平等、下ネタ上等」 と。たまさんのが確かに福笑さんからきてるのはよく分かったけれど、福笑さんのとんでもないパワーに改めて気づくことになった。いやとにかく突き抜けてた。

中トリとトリであまりに違う寄席の世界、でもこんな落語をみせてもらった今日の演者の方にはただただ感謝だ。そして福笑さんの 「ちしゃ医者」 も繁昌亭で聴くのと、この動楽亭の二列目で聴くのとは臨場感が迫力が全く違う。これがやはり繁昌亭亭昼席より面白いと言われる動楽亭昼席の魅力なんだろう。今月来月は動楽亭昼席かなり来たい番組の日がある。