2017.2.21 【いきなり九雀の日@岡町・伝統芸能館】

 【いきなり九雀の日】

イメージ 1

イメージ 2

岡町の九雀さんの会、ほぼ出席だけど前回の 2/7 は都合で来れなかった。そしたら当日の twitter で九雀さんが 「今日からこの会は拍手は遠慮していただくことにします」 と。えっ、と思ったら、そもそも江戸時代には拍手するという習慣はなかったので、実験的にやってみる、とのこと。そして、当日のトリネタが「たちぎれ線香」だった。
「たちぎれ」 の下げの後拍手なしで演者が下りていく余韻を考えるとゾクゾクする。九雀さんやるなと思った。
それは今日も続くのか。そしてゲストは浪曲の太福さん、更に九ノ一さんが久々に前座で登場と、なかなか注目の日だった。やはり浪曲ファンも詰め掛けて盛況の中、7時前に開演した。

九雀 / あいさつ
九ノ一 / 東の旅・発端
九雀 / 天神山
仲入り
大福 / 天保水滸伝・鹿島の棒祭り  曲師:沢村さくら
九雀 / 寿限無

九雀さん、最初に登場して 「江戸時代に拍手という文化はなかったので、この会と東京の九雀亭は拍手なしの会という事にします。またこの岡町の会は以前から口演時は客席の照明落としてるので、これもより江戸時代の寄席小屋の雰囲気にに近づけるためです」 という事で、僕は今日初めて拍手なしの会を経験するんだけど、どんな感じになるのかとても楽しみだった。

九ノ一さん登場、去年の6月以来8カ月ぶりに聴く。相変わらず元気がよくて声が大きい。21才ならそれが一番大切だ。それにたたきのリズムがいい。初高座をたまたま聴いた者としては、またこの先が楽しみになってきた。
頑張ってほしい。

九雀さん、上がって九ノ一さんのこと、発端のこと。たたきはしゃべりの部分と交互にくるので間の練習になる、と。そして 「天神山」 、代表的な春噺で 「愛宕山」 とかと同様に春の到来感がとても強い。好きな噺だ。
狐とりと出会って、安兵衛がチャチャを入れまくる場面が面白い。怒られてもやめない。この辺で初対面の二人の関係が安兵衛ペースになってくる。で、高津の黒焼き屋が登場。高津は上方落語によく出てくる。船場、島之内以外では一番多いのでは。そして下げ前の急展開、いつもここが違和感ある。急に早送りしているようで。
下げは余韻の残る枝雀さんのん。九雀さん下りる時、遅れてきて冒頭の説明を聴いていない人が拍手。でもこの噺もシーンとしたまま九雀さんが下りていってたら、なんかすごい空気になってたような。拍手なしの試みはぜひ続けてほしい。

仲入り後は太福さん、「浪曲はどちらか言うと拍手を強要する芸です」 と言いながら、多分経験のない高座にわくわくしてる様子だ。外題は 「天保水滸伝・鹿島の棒祭り」 平手造酒だ。太福さん、ネタにはいると俄然美声になる。しかしいつ聴いても浪曲のグルーブ感はすごい。心身ともにこれほど揺さぶられる芸事は他にはない。そして三味線、さくらさんが、あおったり、寄り添ったり、抑えたり。個人的にはあおるところでゾクゾクする。
よく落語はジャズだっていうけど、僕は浪曲の方がよほどジャズだと思う。落語より浪曲がずっと音曲だもの。
文楽太夫~三味線でもそうだけど、語り芸と言いながらも音楽的な指向がすごく強くてそこが魅力になっていると僕は思っている。で、太福さん、自分の手で拍手を押える仕草で下りた。

最後は九雀さん、なんと 「寿限無」、時間の関係なのか。つばすけ、とか、こたつ、とか色々入っていて楽しい。
ひたすら明るい九雀さんの 「寿限無」、この噺はやはり繰り返しが飽きてくるので、名前一つの説明に時間をとっていたのがとてもよかった。リピートの印象はそれほど残らずに、九雀さんらしい 「寿限無」 だった。

拍手なしは予想通りなかなかいい。こういうところに目をつけて実行する九雀さんのセンスはさすがだと思う。この会場で定着すれば、もっとよくなる。他にも広がればいいのに。
落語だけでなくて、文楽や他の芸事、コンサートなんかも含めて拍手についてはいろいろ思うことがあるので、また何か書きたい。どちらか言うと過剰な拍手は好きはでない方だ。
それと九雀さんも少し触れてたけど、今年から岡町で九雀さんメインの落語会が新たに二つ始まっている。もちろんこの会も続くし、九雀さん以外の会もある。なにやら岡町が落語会の町みたいになってきて、地元みたいなものの僕としてはうれしい。いろんな会が岡町に定着していけばいいなと思う。