2015.7.26 【市馬喬太郎二人会・夜の部@トリイホール】

【市馬喬太郎二人会・夜の部】

10年20回続いたこの会も今日でいよいよ最終回。僕は10回目ぐらいから皆勤だけど、江戸落語の楽しさを教えてもらった会だった。ていうか、最近は喬太郎さんが好き放題してる感が強くて、それはとても面白いんだけど、正直市馬さんが軽く処理してるように見えなくもなかった。最終回、お二人がどんな高座をみせてくれるのか。さあ開演だ。

瑞 / 道具屋
喬太郎 / 首ったけ
市馬 / 二十四孝
中入
喬太郎 / カマ手本忠臣蔵
市馬 / 三十石

瑞さん、やっぱりいいな。今日も軽快にトントンと。危なっかしさが全く感じられないのも立派なものだ。少しシモっぽいところも照れを見せずにすっと通す。
喬太郎さん、例によって10年前は大阪の高座が怖かったという話から「首ったけ」。かっつぁんがいろんな人に文句言って、愚痴言って、聞いてもらってるようで最後すかされるシーンの両者の表情がいい。廓噺といっても長くないし、大ネタぽくもないけど、当時の吉原の風習がきっちりとコンパクトにおさまっていて、落語らしいいいネタだ。
市馬さん、今日昼は松喬十六夜にも出番があった関係で、出番ぎりぎりに楽屋に入り、昼の部瑞さんを聴かずにあがって道具屋と同じような噺をしてしまった。ということで昼とネタを変えて「二十四孝」。かなり以前に何度か聴いたことあるんだけど、どうも話が入ってきにくくて僕は苦手なネタだ。酒とか筍とか蚊にかまれるとか、断片的な話の印象が残る。

中入り後も今日は喬太郎さんから。昼の部聴いた人が 「喬太郎さん、一番聴きたかった噺を最後にしてくれた」 とツイートしてたので「なんだろう」と楽しみだった。髪の毛染めたことから映画撮ってた話になった。公開楽しみにしてたんだけど、まだまだ分からないらしい。まくらはそっから忠臣蔵の話になって、江戸噺家でキャスティングしたらどうなるか。それをいろいろ物真似でする。これも達者だな。この流れならもう 「カマ手本忠臣蔵」 しかない.。僕もこの噺はすごく聴きたかった。
いきなり何か悶えてるような仕草。これが浅野内匠頭吉良上野介に求愛している。なんという出だしだ。その後トラブルになり愛ゆえに刃傷沙汰になったのが松の廊下の真相であると。それから大石以下47士は討ち入りで本懐を遂げたのでなく、吉良の家臣に全員切られたのだけど、浅野へのラブで全員喜んで死んでいったのがこれまた真相だと。で、武士がラブで死ぬとは何事と怒った吉良の家臣が吉良の首をとり浅野の墓前に供え仇討にしたのだと。これが最終的な真相。そして、墓の中から浅野が吉良の首に向かって「ようやく二人きりになれたね」だって。よくこんな噺を創ったなと。発想力、構成力、演技力、新作創作の3つの要素がすべて高いレベルで結合している。聴くことができてよかったとホントに思う。大爆笑だった。
そしてこの会の最後は市馬さん、何をかけてくれるのか。始まった。旅の噺だ。江戸の二人組が京を後にして大坂へ遊びに行く。えっ、まさか、それしかない。「三十石」だ。東京でどの程度されてるのか知らないけど、これはびっくりした。江戸の二人と船頭以外の登場人物はみんな上方ことばだけど、ほとんど気にならずに聴くことができた。そして何といっても舟唄。この会は基本最前列で聴くことにしてるので、たった2mぐらいでこれを聴いた。市馬さんむちゃくちゃ上手だ。大阪の噺家さんでもここまでの人は聴いたことない。最後によくぞという高座だった。

その後、喬太郎さんも再び登場して並んであいさつ。三本締めで締めくくった。

面白くて、楽しくて、気持ちよくて、ほろっとして、素晴らしい落語会だった。今年のNO.1もう決定かもしれない。それと長い間こんな素敵な会を提供していただいた主催者の方、本当にありがとうございました。ただただ感謝です。