2015.12.7 【喬太郎文三の落語会@繁昌亭】

喬太郎文三の落語会】

イメージ 1

大阪では喬太郎さんのレギュラー落語会が今年でいくつか終わることになって、僕らとしては寂しく思っていた中に飛び込んできたのがこの文三さんとの会。知ってる人は知ってるようにこの二人はウルトラマンつながりだ。もちろん発売日に即押さえて楽しみにしていた。しかも今日は昼席にも喬太郎さん出演でそれに刺激されたか好メンバーがいずれも爆笑の連続という高座で盛り上げりまくった後の夜席だった。昼夜居続けの人はみんな半端じゃなく期待感が高まっての開演だっただろう。

紋四郎 / 色事根問
喬太郎 / 寝床
中入り
喬太郎 / 午後の保健室
文三 / たちぎれ線香
(三味線) / 入谷和女

開口一番は紋四郎さん、最近時々遭遇するようになった。声がいいし押し出しもある。春蝶さんの弟子であることを言うのに先代春蝶を持ち出すのは正解だ。いずれにしても有望な若手だと思う。

文三さん、まくらで喬太郎さんとの縁を語り良縁が落語会に結実してうれしいと。そこから噺は「ちりとてちん」、文三さんの「ちりとてちん」てかなり長い間聴いてないんだけど、こんな演出じゃなかったように思う。一言で言えば文三さんの四人癖のような「ちりとてちん」だ。最初から飛ばす飛ばす。ひょっとして突然四人癖に変わるんじゃないかと思うほどだ。所作やセリフ一つ一つの終いをはねるというか、とにかく派手なちろとてちんだ。でも文三さんに似合ってて違和感は全くない。喬太郎さんへの対抗バージョンなのだろうか。

続いて上がった喬太郎さん、こちらも文三さんとの縁を語りウルトラマンの話へ。僕はウルトラマンには何の興味もないんだけど、喬太郎さんがあまり言うのでごく少しは分かるようになった。ガヴァドンてなんだとかね。そこから落研の話、習い事の話になって「寝床」。何度か聴いてるけどまた今日も爆発。不快感を覚える下手な浄瑠璃を落語の中で笑いをとるように語るのって、すごく難しいのではと思う。そしてもちろん、寝る、倒れる、悶えるのフルコース。続けて聴くと「ちりとてちん」を更にエスカレートさせたかのようだ。喬太郎さんの寝床は旦那が割とあっさりと意地をひっこめて「じゃあ、やろうか」となるところがかわいくていい。普通、ここで相当引っ張る。どうせするんやからもうえのんちゃうの。となってしまう。

中入り後は引き続き喬太郎さん、出囃子はウルトラQ。こういうのもやっていただけるのがこちらの三味線の方はいいですねと。でも事前に打ち合わせしてるんだろうと思っていたけど、楽屋にいた若手の噺家さんのTWEETで急に話が出て和女さんが対応したてことを知って大したものだなと。
そこから、東京の芸人仲間で九州各地に仕事でツアーした話が続く。与論島までいったらしい。需要はあるのだろうか。ていうか営業的に成り立つのだろうか。でも道中は楽しそうだ。
喬太郎さん二席の場合は、基本古典+新作なので何が掛かるかと思っていたら「午後の保健室」。これも何度も聴いてる。そして初めて聴いた時が一番面白くてどちらかというと飽きやすいネタだ。僕はトリの文三さんにきっちりプレッシャーをかけるように目いっぱいだろうと想像していたので、長いまくらに短いネタ、は少し予想外だった。

そしてトリの文三さん、お茶屋遊びとかの話になってなんだろうなと思っていたら、「当時は遊びの時間を線香が燃える本数で数えました」。えーっ、それなのか。喬太郎さんとの会でまさかの「たちぎれ線香」だ。
冒頭の若旦那と定吉のからみ、定吉が少し固いように感じた。ここは普通のこましゃくれた定吉のの方が噺にすっと入っていける。続いて番頭が若旦那を諫める場面、ここはよかった。番頭の表情、間、ためたセリフ。ここから「たちぎれ」は本題に入っていく。途中手紙の件とかいくつか短く端折ったところもあって、それほど長くならずに後半に。紀の庄の女将と若旦那の張りつめた会話の場面で、客席の緊張も高まってくる。そして三七日の法事のために朋輩衆が遅れてやってくる。僕は、この噺ここで笑いをとって客席の緊張をいったん緩めないと、と思う。そして、一度緩んだ緊張が三味線が鳴りだして、若旦那の独白になって、客席の緊張はピークになって、スコンと下げる。こんな流れの噺だろう。今日の文三さんは朋輩衆登場のところでほとんど笑いがとれずに、客席の緊張感はずっと続いていた。
「たちぎれ線香」演者にとって難しい噺だと思うけど、おそらく上方落語の中で客席にこれほど緊張感を与える噺はない。静まり返って物音一つしない客席にただただ語りと地唄「雪」が流れる。聴き手にとっても特別な噺なんだ。

喬太郎さんの二席目が正直少し不満だった。この人の魅力はふり幅の広さと思っているので、「寝床」と「午後の保健室」なら古典と新作には違いないけど、同じ無茶方向のネタに聴こえた。文三さんが、たちぎれ線香に入る前に喬太郎さんに言ったら、「えっ、それするの」て言われたと。喬太郎さん二席目控えめだったのは、ひょっとして「たちぎれ線香」に遠慮したのかなと思いながら帰路についた。