2016.11.2 【吉坊一之輔二人会@繁昌亭】

【吉坊一之輔二人会】

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連日の繁昌亭、今日は年に一度の吉坊と一之輔さんとの二人会だ。繁昌亭では今年で3回目かな。違う個性のぶつかり合いだけど、言えることはどちらも達者てことだ。吉坊・不動坊、一之輔さん・子はかすがいがネタ出し。それぞれあと一席は何を掛けるのかそれも気になる。1Fは完売か、2Fもかなり入っている様子。すごく気持ちのよい落語会になりそうな予感で開演を待った。

八斗 / 代書屋
吉坊 / 七段目
一之輔 / 子はかすがい
仲入り
一之輔 / 睨み返し
吉坊 / 不動坊

八斗さん 「代書屋」、最近いい感じの八斗さんだけど、今日の客席は手ごわかったか。きっちりはしているんだけど、やっぱり堅いのかほとんど受けなかった。春團治バージョンだなと思っていたら。後の吉坊の話で直伝であることが分かった。以前聴いたのは月亭ホームの八聖亭で、客席はそれなりに暖かい空気になっていたけど、吉坊ファンも一之輔ファンも、八斗さんをほぼ知らないということだろう。春團治バージョンのこの噺は受けどころも少ないし、春團治さんがやってこそなのか。でも八斗さん、せっかく三代目につけてもらったのだから、大事に育てていってほしい。

吉坊、八斗さんに開口一番を依頼した時のいきさつから、春團治さんの話に。吉坊も二つつけてもらってるらしい。でも、この噺春團治師匠につけてもらいました、て結構若手の人でも高座で言ってる。そこから歌舞伎座でサラリーマンの団体に客席で囲まれた話で爆笑。
芝居噺だな。吉坊たくさん持ってるもんな、と思っていたら 「七段目」、今さらだけど、芝居ぶりの所作や口跡がきれいで切れ味もある。見事だな。そのあと、踊りは 「ずぼら」 これもよかった。
ところで、今朝ネットでこの会のチラシ探していて、どこから探しても見つからなかったんだけど、創るの忘れてたらしい。そら見つからんわ。それでも完売。

次は一之輔さん、ハロウィンで子供の友達がお菓子もらいに来た話、ヨーロッパ公演に家族みんなで行った話、楽しそうでいいな。そこから 「子はかすがい」、これでネタ出ていたんだけど、江戸でも「子別れ」じゃなくてこっち使うケースもあるんだな。
これは妻子が家を出ていくバージョン、亀ちゃんが9才にしてはやたらしっかりしてる。やはり父親と3年離れていたからか。全編笑いと人情のバランスがとてもいいんだけど、うなぎ屋で二人が再会して、男がたばこ吸う場面がいい。会話にならないのがいい。そして最後にお互い改めて挨拶する場面、下げはもちろん 「子はかすがい、から玄能」。つくづくいい噺だな。それと八百屋のポジションがとてもいい。

中入り後一之輔さんもう一席、「掛け取り」かな。そいういえばもう掛かる時期だなと思っていたら、なんか違う。「睨み返し」か。こないだのモーレツ、紅雀さんで初めて聴いたんだ。
.でも導入部の設定が違うな。一之輔さんのは、薪屋に対して実に巧妙なロジカルで支払ったことにして領収書まで書かせて追い返してしまう。でこの後、通りかかった借金の言い訳屋なる男にやってもらう。その男、次々やって来る借金取りをただただ睨んで追い返す。究極の顔芸がとても楽しい。一之輔さんの落語こういう少し変わったネタでもとてもリズムがいい。

でもこの噺、元々は上方ネタてことだけど、だったら紅雀さんは誰から習ったんだろう。

最後は吉坊、全くまくらなしで噺に入る。「不動坊」だ。僕はこのいきなりネタに入るてのが結構好きで。前座以外でこれをされると意表をつかれて、噺についていこうとするので何て言うか、集中力が増すんだな。
で、「不動坊」は上方を代表する冬噺で、これも季節を感じる。一席目で華麗に舞った吉坊が、ここではクルクル変わるすっとぼけた表情で客席をつかむ。利吉の終始前かがりな表情がいい。そして、男が太鼓のカンを見つけた時の表情でなごませる。この噺、登場人物がとても多いのだけどすっきいりと演じ分けてる。
そして、幽霊の準備してる時の下座の音に、真冬の寒さを感じる。
こんな、いろんな要素があって楽しい噺、今まで聴いた中で吉坊が一番かもしれない。
だけど、肝心のお滝さんは利吉の妄想の中にしか登場しないのが少しもったいない気がする。できれば一目みたいところだ。

三年続けて来ているけれど、今年が一番楽しかった。二人とも特に気負いもなくいつも通りの高座を普通にして客席を十分満足させる。でもちろん二人の違う色が出る。こういうのを理想的な二人会というんだろうな。
二人会は一人の人いくら好きでも、相方がもう一つだと楽しさ半減以下になるし、当然動員にも影響する。
吉坊も言ってたけど、繁昌亭で一之輔さんのトリもみたいな。それまでずっと続けてほしい会だ。