2016.4.8 【文之助市馬二人会@繁昌亭】

【文之助市馬二人会】

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この二人会、実は7年前に僕が相当久しぶりに落語ライブに戻ってくるきっかけになった会だ。その時の演目が、大工調べ・長屋の花見 / i市馬、愛宕山・般若寺の陰謀 / 雀松、だった。
今見ても素晴らしくいい演目だ。今年で7回目ということだから、あの時が実は1回目だったことになる。
もちろんそれから欠かさず通っている。こんな縁のある落語会がいろいろとできてくるのも落語ファンの楽しみの一つだ。そして、今年のネタ出しは、猫の忠信 / 文之助、と、花見の仇討 / 市馬ということで、どんな会になるか。今年もわくわくして開演だ。

市童 / 堀之内
市馬 / のめる
文之助 / 替り目
市馬 / 花見の仇討
仲入り
文之助 / 猫の忠信

市童さんは、市馬さんの4番弟子で去年二つ目に昇進してる。「僕みたいな東京の若手が、繁昌亭に出さしていただけるというのは本当にありがたいことです」と、大阪の客をくすぐりながら「堀之内」。上方の「いらちの愛宕詣り」だ。市童さん、師匠譲りかな、江戸の風をさらっと自然に吹かせてくれる。こんな開口一番は大阪では貴重だな。ネタは「いらちの愛宕詣り」とほとんど運びは同じだけど、こっちほどわちゃわちゃしていない。これは演者と言うより東西の違いだろうな。

市馬さん、「僕が入門した頃はまだ明治生まれの名人が楽屋にいらした」と、先代正蔵師の話をまくらに「のめる」。上方の二人癖だ。こういうまくらは楽しいけど、特にネタとのつながりはないみたいだな。
これも内容は東西ほとんど同じ。同じ噺を東西で演題変えるのは、ややこしいと思うこともあるけれど、それも落語の文化の一部かなという気持ちの方が強い。しかし「のめる」とはえらくまたストレートな演題だなと聴くたびに思う。市馬さん、いつも通りとてもあっさりと演じる。でもそのあっさりがいいんだな。

続いて文之助さん登場。市馬さんとこの会続けてる話から、例の謝罪会見ネタに。でも今はみなさんこれに触れる。受けるもんな。
そこから「替り目」。これはもう鉄板。この人の話は女性より男性の方が可愛いことが多い。特によっぱらってダダをこねるところ。奥さんも本気で怒らない。半ばの「お前まだおったんか」までだけど、だれもやらないこの時の奥さんの表情をぜひ文之助さん井やっていただきたい。でも本当に落語的な楽しい噺だ。

市馬さん、二席目は期待通りちょっと歌う。しかしいい声だ。プロ歌手だもんな。一度雀三郎さんと二人会して思う存分歌いまくればいいのに。
ネタは「花見の仇討」。上方では「桜の宮」、そう一昨日南天さんで聴いた。
これも東西噺の筋はほとんど変わらないけど印象は相当違う。上方ではほぼ屋外で展開されるこの噺をもう群像劇というかとてもわちゃわちゃで躍動感あふれる演じ方する人が多い。それが春の花見の気分の高揚に相まって加速していく様が楽しいんだけど、今日はそれと比べるととても静かに感じる。
桜の宮というロケーションがはっきりしているのもプラスに作用するんだろう。
もちろん、江戸版は江戸版で楽しさあるんだけどね。

中入りはさんで最後は文之助さん、浄瑠璃が江戸時代から明治・大正期まで特に大阪ではとても流行ってたて話から、自分も義太夫の稽古してるのでと一節うなる。結構上手。以前から市馬さんに対抗心があるようだ。
落語には歌舞伎や浄瑠璃をおちょくった噺が多くあるけど、特に浄瑠璃の言われようはとんでもない。「寝床」なんか浄瑠璃聴いたことない人が聴けば、一体どんな芸事かと思う。
「猫の忠信」も義経千本桜のパロディで稽古屋が舞台だ。登場人物の場面転換も多くて、最後は狐狸妖怪まで出てくる。文之助さんでは久しぶりだけど、複雑な噺をあまりそうは感じさせずに進めてゆく。登場人物のキャラでこちらは常吉とか少しやたけた系もいいな。で、この噺の下げ、あまりにもバカバカしいけど僕は好きだな。落語の下げでつまらないのはバカバカしいのでなくて、考えすぎて外してるようなのだな。

毎年聴いてる会だけど今年も楽しかった。これからも是非続けてほしい。特に市馬さんは、喬太郎さんとの二人会がなくなったから、今はこの会が頼りだ。
そして文之助さん、前も言った明らかに襲名後高座数減ってるように思う。もっと6月の勉強会からまたもっと落語やってほしいな。