2015.12.3 【動楽亭昼席】

【動楽亭昼席】

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一昨日に続いてやってきた。雀五郎さん以外は別のメンバーで違う個性。大阪の落語の定席は繁昌亭とここだけだけど、繁昌亭と比べると動楽亭昼席はある程度落語を知ってる人しかこない。そんな客層がここの雰囲気をつくる。今日は特に客席が濃い。35人ぐらいで開演したけど結構重そうだった。

二乗 / 強情灸
雀五郎 / みかん屋
塩鯛 / 寄合酒
歌之助 / くっしゃみ講釈
中入り
文之助 / 尻餅
宗助 / 土橋万歳

二乗さん、先週も聴いたけどこの人の落語は言葉を積み上げて作っていくように感じられるのがいい。堅実なんだけどじわじわとおかしみが広がってくる。この噺の主人公もそうだし、得意ネタ「癪の合い薬」の侍も同じだな。とぼけた味もいいし、かつ端正さの片鱗も感じさせる。これから先が楽しみになってきた。

続いて雀五郎さん「みかん屋」、この噺以前は雀五郎さんでよく聴いていて当時正直飽きてたんだけど、数年ぶりに聴くと新鮮だった。よかったな。何が変わったのかよく分からないけど、最近ずっと充実してる雀五郎さんの落語そのものがかなり変わってる、てことなんだろう。

三つ目は塩鯛さん、一昨日この出番が南光さんだったように動楽亭昼席ではここに本来は中トリ、トリを務めるクラスの人がバンバン出てくる。こんな仕掛けも番組の充実につながっている。出番を割ってるのは席亭のざこばさんということだ。で、ざこばさんの筆頭弟子の塩鯛さん、あがって「今二人がした強情灸とみかん屋、よかったですね。どっちも僕が教えました」。やっぱりつけてもらった人と同じ出番の時にかけるのは自信があるから観てほしいてことだろう。
ネタは「寄合酒」、塩鯛さんでは初めてだ。元々この人の落語はいい意味で軽くて、さらっと楽しい。力みというのがほとんど感じられない。それはもちろん達者である上でのことだけど。この噺、上方ではよくかかる。若い人からベテランまでするし、基本はわちゃわちゃ賑やかに楽し気にだ。塩鯛さんのは肩の力が抜けてるというか、賑やかというよりトーンがフラットで楽し気なんだ。よかったな。散々聴いてる噺でもこういう全然印象の違う演者に出会えるのが落語の素晴らしいところだ。

中トリは歌之助さん、今日の6人の中では一番聴いてない人だ。悪くないんだけど、寄席で聴く時でも正直他の人の印象に埋もれることが多かった。だけど今日は違った。口跡が実にきれいでメリハリがあってストーリーのはっきりしたこの噺を劇的に語っていく。文字通り最後のくっしゃみの場面が見せ場になるんだけど、そこも過度にみせるんじゃなくてストーリーを踏まえた上でのくっしゃみに聴こえた。
てことで前半極めて順調に推移した。

中入り後は文之助さん、モタレにぴったりのネタいろいろある。ひょっとして久々に「片棒」聴けるかと思っていた。ら、「尻餅」。これがあった。年末ネタだ。文之助さんでは久しぶりだけど、他の人の尻餅を忘れてしまうぐらい見事な熱演。やっぱり文之助さんリズム落語だから、歌いだすと止まらないみたいな感じで、セリフと所作がシンクロしてるかのように楽しい展開になる。そういう意味ではいろんな特徴的な擬態の所作の多いこの噺は文之助さんにぴったりだ。襲名後勉強会の回数とかが減って聴くことも少なくなってるけど、来週の扇遊さんとの二人会楽しみだな。

トリは宗助さん、塩鯛、文之助という二人の先輩が持ち味十分のいい高座つとめたあとで何を掛けてくれるのか注目だった。ここでいきなり、「大阪では音曲漫才というのが随分流行ってた時期がありまして」、から「うちら陽気なかしまし娘~♪」、そして音曲漫才のテーマを次々披露。フラワーショウ、ジョウサンズ、宮川左近ショータイヘイトリオ、ワカサひろし。こんだけやったかな。まだあったかな。どういう前振りか分からなかったけど大サービスで音曲好きの僕としては早くも大満足。ずっとこれでもいいよ。て気持ちだった。でもネタに入る。
鼓をもってする万歳といえば三河が有名ですが、こちらでは大和の郡山が有名で。と入った。これは、そうだ「土橋万歳」。宗助さんで土橋を聴けるのか。この噺、やり手も少なくてなかなか聴く機会がないのだけど、「夏祭浪花鑑」を下敷きにしてるだけあってよくできた噺で初めて聴いた時はストーリー的にも相当面白かった。また、お茶屋の場面長いので下座的にも楽しめる。相当力量いると思うけど、今日宗助さんで聴けたのはとてもよかった。さげの後は音曲のテーマがずっと以前に聴いたと思えるほど噺に集中してた。宗助さん本当に見事だった。

動楽亭昼席、1日3日と素晴らしい内容が続いたけど、多分いつもこんなのではないし、客の入りももっと少ないこともあると思う。でもこれだけの寄席興行をうてる小屋なんだから、米朝門中心に21~末日の昼席も開催して名実ともに定席になってほしいと思う。