2018.3.22 【太融寺南天の会@太融寺本坊】

太融寺南天の会】 

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さて今日は 「太融寺南天の会」、そして今日の注目はネタおろしの 「いたりきたり」。そう枝雀さん自作のなんとも表現しにくい演目だ。そしてこの会、前回から予約→整理番号発行の流れになって、僕は前回行けなかったので70番台。かなり遅いなと思っていたら、なんと150番台まで発行されていて、その後数十人当日入場の人が列をつくっていた。180人ぐらい入ったのか。ここでは米朝一門関連のいろんな落語会が開かれているけれど、千朝さんの会以外は全部後ろ1/3 をパーテーションで殺して使っていた。今日はそれ以外で僕が初めてみたフルスペース。南天さんの動員力が明らかに上がっていることを実感してのスタートとなった。

南天 / いたりきたり
米二 / 持参金

小留さんから、約1年ぶりだけど、印象が変わっていた。所作が面白い明るい高座で、思ったほどクサくなかった。ちりとてちん食べた時ふるえる竹やんがいい。

南天さん、注目の 「いたりきたり」。元々長くない噺なので、かなりまくらを引っ張ると思っていたのだけど、 冒頭からこの噺の特殊性について説明。落語は単に笑うだけの噺ではないし、不思議なネタもあると。でもそこまで言わなくても南天さんのお客ならこの噺に十分ついていけるのではと思っていたら、枝雀さんのSRが始まった。それも10いくつも。これはうれしかった。「流れ星」 「定期券」 「犬の言葉」とかがとても好きだ。中でも 「流れ星」 は名作で、喬太郎さんの 「孫、帰る」 とか、かい枝さんの 「丑三つタクシー」 とかはここからきてるのではと僕は思っている。で、本編。南天さんこの噺の空気をきっちりつかんでいたと思うし、客席もついていこうとしていたと思うのだけど、どうしても枝雀さんと比べてしまうし、お客も受けながらも、もうひとつ南天さんとの一体感が出ていなかったように感じた。南天さん、ネタおろしから二度目、三度目とどんどんよくなること結構あるし、できるだけ早くまた聴きたい。そして、下げ前のきかされる男のぼけっぷりがよかった。

続いてゲストの米二さん、今日昼間のツイートで、米二さん始め5人の上方噺家チームの相撲観戦風景があがっていてとても楽しそうだった。米二さんは相撲終わってから駆け付けるんだなと思っていたら、やはりその話で、夜に仕事が入っているの自分だけで、一人飲めなかったと悔しそうだった。ここから普通なら相撲ネタなんだろうけど、ネタ出しの 「持参金」 へ。これも好きな噺だ。20円がぐるぐる回りそうで、回らなそうで、やっぱり回るのかと思ったら回らない。何か仮想通貨みたいで、逆に今時なネタにも思えてくる。それに三人がそれぞれの思惑持ってるのを、上から俯瞰しているような落語であり、哲学的でもある。米二さんのボヤキ口調がこの噺によく合っていて楽しませてもらえた。覗き見の気分になる。

最後南天さん、先日テレビの正蔵さんとの対談での小三治さんのことに触れ、プログラムにもあった、芸人としての覚悟について。でもそういう事も時代とともに変わってくるのかなと思う。
そして、ネタ出していなかったもう一席は 「はてなの茶碗」。去年の秋、高津絵馬堂の 「らくご祭り」 で南天さんが15分バージョンを掛けた。それはそれで面白かったのだけど、正規バージョンを南天さんで聴くのはかなり久しぶりだ。油屋と茶店店主のやりとり、茶金の貫録など、見せ場はいろいろあるのだけれど、今日はやはり油屋の表情の変化が秀逸だ。特に3両貰う時と500両貰う時との、遠慮の仕方と喜ぶタイミングの違いは見事としか言いようがない。しびれまくった。とてもいい 「はて茶」 を聴かせてもらった。

今日も内容充実の4席で落語を堪能した。実は僕は落語会のプログラムでは、4席中入りなしというこのパターンが一番好きだ。コンパクトに2時間弱で終演する形だ。そして今日は南天さんのこの会のおそらく動員記録。南天さん自身のポジションがいろんな意味で変わってきてるってことなんだろう。50才を迎えてこれからの南天さんが益々楽しみになってきた。