2018.4.12 【出没!ラクゴリラ@太融寺本坊】

 【出没!ラクゴリラ】

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ラクゴリラはもちろんとてもいい会で、ずっと通ってるんだけど、いろんなことと重なって何度か欠席してたなと思っていて、帰ってから確認したらなんと去年の6月以来。4回も続けて来てなかったわけだ。なんともったいない。そんなわけで、今日もいいネタが並んでいる。というか、この4人がそれぞれネタを選べば、どんな並びになってもよくないわけがないのだけれど。そして今日のトリネタは花丸さんの 「立ち切れ線香」 楽しみで仕方がなかった。

棗 / 初天神
生喬 / 勘定板
文三 / 天神山
仲入り
南天 / 強情灸
花丸 / 立ち切れ線香

棗さん、去年初めて聴いて以来二度目だ。前回は 「時うどん」 だったけど、今日の 「初天神」 も同じように噺がきっちりしていて、気持ちよく聴くことができる。そしてなんともいえない棗さんのキャラが微笑ましくてふわふわしてくる。とてもいい開口一番だ。

そして生喬さん、プログラムでネタをみて 「勘定板」 ネタ出しだったのを思い出した。実はこの噺、僕は全落語ネタの中でも指折りに嫌いなんだ。落語が聴き手のイマジネーションを刺激する話芸ならば、なにもそんな汚いものを想像させなくてもいいじゃないと、これまで聴いていつも思ってしまっていた。だけど、開演前に生喬さんならまた違う 「勘定板」 を聴かせてくれるかなという気持ちにもなっていた。で、まくらで、今日南天さんが出演していたラジオのドキハキで出た 「勘定板」 についての話題に憤慨する生喬さんに爆笑。
結果的には、今まで聴いた 「勘定板」 とは少し違って、普通に笑える楽しい噺になっていた。僕がこの噺の一番おぞましいと思っているところが、少しマイルド仕様になっていたことと、生喬さんの爽快でパワーのある話術のなせる業だろう。

続いて文三さん、春になると変わった人が出てくるという話から 「天神山」。文三さんでは4回目だけど、細かいポイントに文三さんらしい楽しさが溢れていてとてもいい。墓見の時の楽し気な表情、拳をする時のトントンとしたいいリズムで直ぐに負け飲みになる件、狐捕りと交渉する会話、幽霊と話す時の顔、嫁にすると決断しての納得顔、いろんな文三さんの表情や所作が続々出てくる。名前の間違いはご愛敬だ、
そして、この噺で何度か書いた、下げ前に噺が急展開する件だけど、これはもうこういうものだと思うことにした。「芦屋堂満大内鑑」 、そのうち文楽で観る機会あるだろう。それも楽しみ。

仲入り後は南天さん、世の中にはライバルと言われる関係が随分あるという話から 「強情灸」。こごろう時代によく聴いていたイメージがある。強情な男二人が意地の張り合いで灸を据えまくる噺なんだけど、南天さんのはエスカレートする会話の、どこまでいくねん、感がとても気持ちがいい。あおって、怒って、灸を吹いて、また怒って…。とてもテンポがいい。そして生喬さんも言ってたけど、今日のネタの並びだと、南天さんと二人は持ち時間が短くなるけれど、その中できっちりと大いに受けて、文三さん、花丸さんにつなげるお二人がさすがだ。この四人ならそれぞれどんな役回りでも可能なんだろう。それがラクゴリラだ。

そして最後は花丸さん、季節ごとに着るべき着物の区別の話をして、こういうことは噺家にならなかったらまず知らなかったことで、同じように花柳界には花柳界のしきたりがあったという話から 「立ち切れ線香」。花丸さんでは初めてだ。僕はこの噺随分いいのを聴いてるつもりなんだけど、定吉の口調がちょっとクサイと言うか、ウエット目でスタートする。そして前半のヤマだと思っている、番頭が若旦那を諫める場面、「座んなはれ」 からの沈黙の迫力がすごかった。早くも客席は静まり返る。番頭の表情がどんどん厳しくなっていって、最後は思惑通りの蔵住まいに落とし込まれる。で、100日経過して、若旦那の心の変化を見せ、でも小糸に会いたい。
紀ノ庄の女将の独白、小糸は亡くなっていた。噺が緊張ゾーンに、聴き入る客席。ここで朋輩衆が突然ドヤドヤと入ってくる。難しいと思うけれど僕はここで笑いをとって一旦緊張を緩めてほしい。花丸さんは提灯で泣く場面の笑いで緩んだ。そして最後の若旦那の独白、再び客席を静寂がつつむ。緊張の中スコンと下げ。やはり名作だ。大きな拍手に包まれて花丸さんがおりる。そこで袖から再び地唄が流れて、誰も席を立たない。柝が入って再び拍手が起きる。で、客席がようやく噺から解放された。見事な 「立ち切れ線香」 だった。

次回は6月10日、なんと日曜の昼開催だ。平日夜とでは客層も雰囲気も変わるだろうし、どうなるのかまた楽しみだ。極力来るようにしたい。それにしてもこの会、まだ木戸は2000円だ。最近値上げする落語会が増えてる中ではとても安く感じる。この 「ラクゴリラ」 こそ、初心者から好事家まで網羅できる一番の落語会ではと思う。