2017.10.23 【神戸らくごビレッジ・その93@神戸アートビレッジセンター】

【神戸らくごビレッジ・その93】

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2年前に平日昼間の自由がきくようになってから通いだしたこの会。ここ何度かいろいろあって行けなかったので久しぶりだ。まあ、文之助さん、九雀さん、吉弥さんがレギュラーという、米朝一門ファンにすれば最近はあまりない贅沢な会で、ごく数人の大阪でもよく会う落語ファンを除いては地元の人ばかり。理想的な地域寄席だ。だけどこの会、長い地域寄席特有のおしつけがましさが全く感じられない。これはスタッフの方にもよるのだろうけど、大阪から行かせてもらってるにもかかわらずアウェー感が全くないいい会だ。そしてネタを出さないので今日は何を聴けるのかと楽しみに思いながら開演を待った。

秀都 / 鉄砲勇助
弥太郎 / 短命
文之助 / 天狗裁き
仲入り
九雀 / 長短
吉弥 / 不動坊

秀都さん、「鉄砲勇助」 は何度か聴いてるけど今日が一番だったように思う。聴きやすいしゃべりだ。それと、まくらのギャグでなぜかやたら客席から拍手が起きたけど、間を置かずに続けたのがよかった。

続いて弥太郎さん、「短命」 は初めて。この人の落語は穏やかに感じることが多くて気持ちよく聴けるし、どんなネタでもあまり違和感がない。だけど今日はかなり言葉の数の多い人なんだと思った。あまり間のない間というか、それがぴたっとはまっていた。

ここからレギュラー三人になる。中トリは文之助さん、最寄駅が台風の影響で電車止まっていたため仕方なく車で来たと。あまり運転は好きでない様子。そこからいろんな夢の話、師匠の夢がよかったな。僕はやっぱり今でもお弟子さんたちがする枝雀さんの話を聴くとぐっとくる。そこから 「天狗裁き」、これはリピートネタで散々聴いているので正直飽き気味なんだけど、今日はとても楽しかった。文之助さんでは初めてなんだけど、やはりこの人独特のリズムに乗ってトントンと運ぶのがこの噺に対して新鮮だったんだろう。特にそれぞれが 「それで、どんな夢だ?」 と聞き返す時にためるところがとても楽しい。襲名前と比べると高座数が減っているように思うのだけど、もっともっと聴きたい人だ。

仲入り後は九雀さん、文之助さんが三番弟子で、九雀さんが五番弟子。最近では少ない枝雀さん直弟子の方がレギュラーで共演しているのも僕がこの会に大阪から通ってる理由なんだ。九雀さん、新開地ということで、来年オープン予定の新しい定席 「喜楽館」 の工事の状況を見てきたと。そして新開地の飲み屋の話から 「長短」、この噺聴く度に難しいんだろうなと思うんだけど、九雀さんのは饅頭の食べ方、たばこの吸い方が長と短でくっきり対照的で引き込まれた。「いつまで吸うてるねん!」 でバシッと場面転換。僕は長の人をやたらと間延びさせるのは余り好きじゃない。九雀さんぐらいがいい。そして下げが少し違ってたけど、二段落ちというかこちらの方がいいと思った。  

最後は吉弥さん、台風の話、明日文楽劇場吉朝十三回忌公演の話、今日は皆さん亡き師匠の話をされる。そこからネタは 「不動坊」、上方の代表的な冬噺だけど、今シーズン早くも聴くことができた。数日前に 「掛け取り」 も聴いたけど、僕は季節先取りの噺は嫌いじゃない。吉弥さんの冬噺といえば、 「かぜうどん」 がとても好きなんだけど、どちらも寒さが身体にしみとおるのがいい。そしてこの噺、主演女優級のお滝さんが実は利吉の風呂屋での妄想場面だけで本人がしゃべるセリフは全くない。これ案外落語にはありがちかもしれない。実際複雑な噺なら登場人物少ない方が噺の筋は分かりやすいし。吉弥さんは、何て言うか、フラットに噺を進める中で、人の感情や噺の情景をじわじわと浮かび上がらせるのがとても上手いと思う。この冬も 「不動坊」 何度も聴きたい。

という事で、九雀さんが言ってた事もあり終演後喜楽館の工事現場を見に行った。まだ建物は基礎の段階だけど、商店街には 「喜楽館建設中」 という大きな下げ幕がかかっていて商店街としても相当気合が入っていると感じた。そして、夜の九雀さんの tweet で 「らくごビレッジ」 は喜楽館完成後はそちらに移ることを知る。それはそれでいいことだと思うけれど、現在昼夜公演で、喜楽館に移れば昼は定席だと思うので、昼公演はなくなるのだろうか。なんとか昼の部も残してほしいんだけどな。