2017.10.19 【R-たま10・微笑落語会@高津の富亭】

 【R-たま10・微笑落語会】

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たまさんの古典ネタおろしの会 「微笑落語会」、前回から R-たま10~たまさん主催の会に10回以上来ている方を対象に~となっている。こういう落語会も珍しいと思うけれども、たまさんなりの気遣いだろう。そして今回告知されたのが10日ほど前。たまさん主催の別の会で配布されたチラシの中にさりげなく入っていた。幸い今日の予定は特になかったので当然来ることになった。ネタおろし三席、どれも楽しみな噺で、急な告知にもかかわらず集まった40人弱のマニアな人達と一緒に開演を待った。

笑利 / 道具屋
たま / 掛け取り
華紋 / 粗忽長屋
たま / 黄金の大黒
仲入り
たま / 小言幸兵衛

笑利さんは二回目、鶴笑さんのお弟子さん。少しラフな口調は聴きやすくて師匠のしゃべりもチラホラ感じる。表情はきちんとした様子なのでしゃべりとのギャップがあるけれど、それがまた可笑しみにつながっている。

たまさん、記者発表のあったらしい天満宮噺家神社の件から文我さんの電話のことで爆笑。そこから一席目は 「掛け取り」、出るのが早いな。この噺を聴くと年末感がどっとあふれてくる。最初は狂歌好きの家主登場、「去年は死体がしゃべった」 と、おなじみの展開から、次の八百屋は選挙マニアで地口を連発して追い返す。このネタこんな風に時事ネタもりこまれるのが楽しい。そして最後は芝居好きの醤油屋でその流れで下げ。面白かったけれど、たまさんのような人には、この噺案外独自性を出しにくいのかもしれない。

続いて華紋さん、ノーベル文学賞カズオ・イシグロが5親等の親戚になるという話、とてもタイムリーだと思うのだけどそれほど驚かれず。この件は先日東京で初めてした時の事が結構SNSとかで流れていて、今日の客席の顔ぶれなら知ってる人かなりいたからだろう。でもまくらまとめてそこから流れつけて 「粗忽長屋」 につなげたのはうまかった。その 「粗忽長屋」、現実感とシュールな世界との境界線をうろうろしてる感じが華紋さんのはとてもいい。難しい噺だと思うけど聴いてるほうまで宙に漂ってるような気持になってきた。

そしてたまさん、仁鶴さんの出囃子で登場して 「黄金の大黒」 なんだけど、ネタの話になって 「不動坊」 と 「くっしゃみ講釈」 は以前はよく受けていたけど、ある時から受けないと感じ出したのでここしばらくはやらなくなった。そんな意味では前座噺は受けるための説明はいらなくなってる、よく出来た噺だ。それと、落語会はその準備段階である意味かなりの部分は終わっているのかもしれない、と。例えばプログラムの文章が面白いと、大概その落語会は面白い傾向にある、とたまさん。確かに今回のプログラムの 「クラウドファウンティング」 の件は最近のプログラムの中では秀逸だ。そして 「黄金の大黒」、たまさんのは羽織の臭さをやたら強調する。例によって相当しつこくする。こういう時もたまさんは受け方の変化とかみてるんだろうな。だから古典ネタおろしは小さい部屋にそれなりに落語分かる人集めてするのかな。他にも下寸前レベルの部分もありなかなか激しかった。

仲入りはさんで最後はたまさん、「小言幸兵衛」、冒頭の長屋の人達に小言いいまくるところ軽く済まして豆腐屋の件からつき米屋が登場、やはりこの噺ここがメインだと思うのだけど、たまさんはそれを更に強調する。前後と比べて家主のエキサイトぶりが半端ではない。たまさんの少し違うバランス感覚ゆえにか。聴いてる方もエキサイトしてくる。そして最後に仕立屋が登場。それぞれ不条理に怒りまくるのだけど、たまさんのは小言というよりももう 「激怒する幸兵衛」 だ。ちなみに最近由瓶さんがかけている 「搗屋幸兵衛」 は江戸でも同様だけど、この噺のつき米屋の部分を独立させたもの。たまさんと聴き比べると更に面白い。

微笑落語会はたまさんの会にしては珍しく時間的にコンパクトに終わることがよくある。今日も9時終演だから135分、それでも他の会同様のたっぷり感はある。特に今日はまくらがそれぞれとても面白かったのだけど、最近僕はたまさんの会は、まくらとネタと特に区別するのじゃなくてトータルでみればいいのではと思っている。これだけいろんな主旨の会を次々提供してくれる人は少なくとも上方には他にいないのだから。まくらでのいろんな分析話とかもたまさんの芸の内じゃないのかな。そんな意味では今月の 「月刊たま」 で久々に配布されるという 「たま通信」 がとても楽しみだ。