2017.9.30 【裏甲子園寄席@ギャラリーアライ】

 【裏甲子園寄席】

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阪神甲子園駅の球場とは反対側の駅前でやるので 「裏甲子園寄席」、5月以来の2回目になる。今回も紅雀さんと佐ん吉さんの二人会で二席ずつ。前回約50人完売でお二人ともはじけまくって大好評だっただけに、今回も期待は大きかった。開場の20分ぐらい前に駅に着くと、島之内寄席から回ってきた佐ん吉さんと遭遇、かなり急いで向かっていった。そして会場前に並んでいると続々と列は伸びて20人以上に。それにしても女性が多いと思っていたら、最終的に50人強のうち男性は6~7人。最近女性が7割ぐらい占める会も珍しくはないけれども、ここまで女性比率の高い会は僕のこれまでの落語会経験の中でも多分初めてだろう。そんな華やいだ雰囲気の中でお二人のトークから開演した。

紅雀・佐ん吉 / 幕開けトーク
紅雀 / さかさま盗人
佐ん吉 / くっしゃみ講釈
仲入り
佐ん吉 / 肝つぶし
紅雀 / かぜうどん

最初のトークは、佐ん吉さんが話題を振った、最近の男女の出会いの場について。僕らはもうそういうのはよく分からないんだけど 「釣り堀」 てのは意外だったな。そして、主催者の方企画の 「二人は何を話しているのでしょうか」 のはがきについて、「最優秀賞」 「紅雀賞」 「佐ん吉賞」 が発表された。僕も送ったけれど、やっぱりこういう才能は難しいなと思った。ちなみに 「佐ん吉賞」 は明日のスプリンターズステークス、メガグラーナの単勝馬券だった。

紅雀さん、長めのまくらから一席目は鉄板の 「さかさま盗人」、演者も聴き手もまくらからかなり上がったテンションを下げることなく突っ走った感じだった。「殺せ、殺せ」 とか言ってたのが、同じ女に騙されたと分かって近しくなる。そして次々と泥棒の要求に応える長屋の男、普通ならどこまで人がいいと思われるところだけど、何というか、紅雀さんのエスカレートする大熱演で聴けば聴くほど楽しくなる。そんな 「さかさま盗人」 だった。

続いて佐ん吉さんの一席目は 「くっしゃみ講釈」、佐ん吉さんでは僕は初めてだ。佐ん吉さんの落語で一番合ってると思うのは 「稽古屋」 とかの端正な噺で、「転失気」 とかのすっとぼけたネタも思い切り笑える。だけど、「くっしゃみ講釈」 のようにハイテンションが続くネタはちょっとイメージが違うなと最初は思った。でも、お七の唄の件で脳天気さで爆笑し、最近僕がこのネタではまってる、呼び込みのおっさんの声も面白くて、とんがらし入れるの忘れてた喜六の表情でも受ける。そして下げ前のくしゃみの爆発。紅雀さんがつくったハイテンションな空気をそのまま落とさずに休憩に入った。

そして中入り後は佐ん吉さんもう一席、ほうらい寄席にNHKの取材入ったけれど、落語会の後に同じ銭湯での婚活イベントの方がオンエアーされてしまった話で受ける。そこから 「肝つぶし」。この噺、恋煩いネタの中でもかなり異色だ。さんざんな恋煩いの原因になった女が夢の中にしか存在しなくて、気病いを治しようがない。そこで 「年月揃った女の生き胆」を煎じて飲ませたら治るなどという物騒なことになる。これ似たような話が文楽にも出てくるから当時流行っていたのだろう。そして妹のお花が年月揃ってるからと世話になった男の息子のために妹を殺そうとする。で、妹が目覚めて下げに。なにかストーリーだけ追ってたら本当に文楽に出てくるような噺だけど、そんな噺を佐ん吉さん、サラッと演じて笑わせ、下げでスコンとひっくり返す。好きな噺で満足だ。

最後は紅雀さん、佐ん吉さんの 「くっしゃみ講釈」 を聴いていてすごく燃えたそうだ。何か気合が違う感じだ。で、そこから 「かぜうどん」、この噺は真冬の寒い夜に屋台のうどん屋と客との会話の呼吸を楽しむ噺だと思っているのだけれど、今日の紅雀さんのは秋口に聞いても全く違和感がなかった。よく季節はずれな噺が登場した時に、それを聴いてはまることも、何かのれないこともある。この噺、小声がポイントになってることもあって、静かにすすめる人が多い中で、紅雀さんだと味わいが少し違う。やっぱりこの人特有のザワザワ感が個性を感じさせ楽しさが増幅する。そして表情の変化もいい。それで 「おひや」 の件が僕は一番好きだな。

以上で4席、すべて楽しかった。まだ2回目の開催だけど、この二人会はぐつぐつと化学反応が起きてとても面白くなってる。僕は二人会という形式が好きで、それこそやって欲しい二人会はいくらでもある。だけど演者の方としてはなかなか難しい面もあるのだろうけど、もっといろいろやってほしいな。最近の二人会では、千朝・九雀の 「千夜九夜」 とこの裏甲子園が双璧の好企画だと思う。次回は1月開催とのこと。また楽しみだ。