2017.8.19 【島之内寄席8月席・六代目松鶴孫弟子の会@中央会館】

2017.8.19 【島之内寄席8月席・六代目松鶴孫弟子の会】

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今日大阪ではとんでもなくいい落語会がたくさんある。しかもそんな中東京からも何組も来阪。身体がいくつあっても足りないという実感の日だった。しかし、少し遅い目にこの 「島之内寄席・8月席」 の内容が発表されて、もう一も二もなく予約の連絡を入れた。僕はかなりの米朝一門びいきで、笑福亭は必ずしも誰もが好きではないのだけど、特定の何人かはとてもいいと思っている。それがこの5人。これに福笑さんが加われば僕の 「ベストオブ笑福亭」 になる。直弟子よりも孫弟子世代に好きな人が多かったんだということに改めて気がついてなるほどと思った。今年の落語会の中でも指折りに待ちどおしかった会がいよいよ開演だ。

オープニングトーク / 全員
たま / 青菜
生喬 / 鰻谷の由来 ~ (踊り) こうもり
三喬 / 親子酒
仲入り
銀瓶 / 天災
仁智 / 出前持ち

全員でのオープニングトークは、生喬さんが司会の形で、下手から、たま・銀瓶・三喬・仁智と年季順に並ぶ。この会の流れは十数年前、無学で銀瓶さんの仕切りによって、仁智さん以外の4人でした会とのことだ。その時孫弟子ということではこれに仁智さんが加われば完璧だと言っていたのが今回実現したと。そしていろいろ楽しい話が出ていたけど、六代目と福笑さんとの酒噺、〇〇話で大爆笑。この時、次に上がるたまさんは 「ちしゃ医者」 だと確信したんだけどね。でも、この中で入門時に六代目が健在だったのは仁智さんと三喬さんだけというのが時間の流れを感じさせる。

そして落語のトップはたまさん、考えれば開口一番がたまさんてのはとても贅沢なんだけど、繁昌亭の福笑さんの会がいつもそうなので慣れてしまっていることもある。たまさん、娘さんのことで6代目の意外な対応の話から、期待に反して 「青菜」、でも今年たまさんの 「青菜」 は聴いていなかったのでそれもよかった。 出入り先の奥さんが手をつく場面の指がすっと伸びてるのがいいな。で、そんな所作から一転、鍋の中でカエルが泳いでる。それを竹が蓋をとって驚く。ここが大爆笑。そしてお咲さんが二度押し入れに入ってボロボロになっていく。たまさんの古典は粋な表現もチラリとみせるのだけど、いつもの疾走感でそんなのを吹っ飛ばしていく。もちろん大爆笑でとても楽しいんだけど、たまにこの奥さんのすらりと伸びた指みたいなのをもっと見せてもいいのではと思ったりした。

続いて生喬さん、久しぶりに聴く 「鰻谷の由来」 だ。今、鰻谷と呼ばれている通りは、以前は長堀南通りと呼ばれていて、それがなぜ鰻谷に変わったのかという話なんだけど、これを聴くといつも思うのだけど、本当の話なのかと。いかにもありそうな話なんだけど、言っても落語だしなと。「大阪ことば辞典」 にもぬるまなんて言葉載ってないし。まあそう考えてる時点で術中にはまってるってことなんだろう。たまには聴きたくなる噺だ。
下げた後、生喬さん一瞬の間を置く。踊りだ。今日は 「こうもり」、生喬さんは高座でよく踊る方だけど、数分間だけど、色変わりになるので、他の踊れる方ももっと踊ってほしいなと思う。「寄席の踊りを」 と噺家さんが行った時明らかに客席の空気はいい感じになごむんだ。

中トリは三喬さん、今襲名の準備でいろいろと忙しいと。想像以上にいろんな人にあいさつに行くんだなと。そこから 「親子酒」 なんだけど、実は古い落語ファンから、本当はダメなんだけど、六代目の 「親子酒」 を録音したのがあって、これ三喬さんやってくれないかな、と言われてCD を受け取ったと。この噺、僕は3月の喬太郎さんとの二人会で初めて聴いた。三喬さんは六代目が20分ぐらいで思い切り手を抜いてやってると。ほぼ完コピかと思わせるほど、6代目の息と間が楽しめる噺で、なるほどこの会にはぴったりだし。ある意味5本の落語の中でも目玉だったかもしれない。ただ、正直ファンが録音してた音源てのはぼやかしてた方がいいのではと思う。僕自身は噺家さんとファンとのそういう繋がりは好きじゃないから。個人的な勝手な意見だけどね。

仲入り後は銀瓶さん、米朝一門の中にも笑福亭的な人はいると、ざこばさんの名前を上げる。寄席の出番で 「書割盗人」 した時、福車さんがらみで銀瓶さん上がったあと楽屋に来たざこばさんに、下りた後どっきり仕掛けられた話で爆笑。そこから、そのざこば師匠に習った噺をしますと 「天災」
これがまたざこばテイスト満載の 「天災」 で、最初ブイブイ言いまくってた男が段々おとなしくなっていく件になにか演者の人柄までみえてくるような落語だった。銀瓶さん、やっぱりこういうメリハリの大きな落語が楽しい。

最後は仁智さん、仁鶴さんの一番弟子なので、6代目の言わば筆頭孫弟子になる。現在笑福亭は78名で、米朝一門は76名になるそうだ。これはどちらの一門もよく言う話で、なんだかんだ言ってもお互い意識してるんだな。でもこれだけの人数なら、二派あわせて上方落語界の約60%を占めることになる。永遠のライバルだな。
そこから噺は 「出前持ち」 一度聴いてる。仁智さんはこれまで、僕が座敷の落語会が嫌いで「笑いのタニマチ」 に行けなかったことで、旬な部分を随分聴き逃していたのだけど、ビルの建て替えで繁昌亭に移ったので、これからは聴く機会がもっと増える。この噺も二転三転するドタバタ噺で、これはえらいことに、と思っていたらセーフでほっとていたら、やっぱりアウトだったと。仁智さんの新作はストーリーのつくり方が繊細で噺そのもので笑わせる感じのが多いと思う。

てことで超絶顔付けの島之内寄席は終わった。今日の入りは240人で、この会場に移って最多、というか島之内寄席史上最多なのではとの話だった。ぜひ再度この企画を期待したいところだけど、次は考えてないそうだ。残念だけど、今月に限らず最近島之内寄席の企画が良くなってきているし、こういう切り口ならまだまだいい企画がうてると思う。僕らが絶対行きたくなる内容をどんどん発表していってほしい。