2017.8.7 【笑福亭たま企画・パワーアップ落語会@動楽亭】

【笑福亭たま企画・パワーアップ落語会】

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さて今日はパワーアップ落語会なのだが、前夜から台風5号がちょうど落語会の始まる頃に大阪直撃かもしれないという物騒な情報があった。しかし、たまさんは何があってもやるだろうという確信があって、それなら行くまでだと朝から思っていた。午前中大したことなかった風雨も午後から徐々に強まってきて、家を出た5時前にはかなりの激しさ。最寄駅までの7~8分、ビニール傘が飛ばされないよう結構必死で持っていた。でも駅に着いたらこっちのもの、雨風にはめっぽう強い阪急電車は定刻通り元気に走っていたし、大阪の地下鉄もよぼどのことがないと止まらない。てことで5時50分に動楽亭到着、開場時間の40分前だったけれど、早めに開場済みで、僕は5人目だった。その後結構増え続けて、最終的には35人ぐらいだろうか。みなさん好きというか、怖いもの知らずというか、台風をついてやってきた何やら奇妙な連帯感の中でようやく開演となった。

たま / あいさつ
慶治朗 / 子ほめ
治門 / 半分垢
トーク / (たま / 治門・慶治朗 ) (たま / 由瓶)
たま / ストーカー
仲入り
由瓶 / 搗屋幸兵衛 (つきやこうべい)
たま / 南京屋政談

まず上がったたまさん、台風の中来場について感謝。そして、チケットについて、昔の芸人は祝儀買いというのがあって一人の旦那が大量のチケットを買うけれど来るのはずっと少ないので、定員をはるかに超える枚数のチケットを売っていたケースもあったと。今もそういう空気を匂わす噺家さんいるけれど、僕はあまり好きじゃない。

そして慶治朗さん、今日はいつもの開口三番じゃなくて開口二番だ。ネタは 「子ほめ」、いつものようにきっちりした落語で聴きやすくて表情もいい。となるとご本人の会にも行きたくなるのだけれど、実際にはなかなかそこまで手が回らない。兄弟子の米輝さんとは全然タイプが違うけど、米團治一門いい感じだな。

続いて治門さん、打ち上げで呂鶴さんがざるどうふを頼んだ時出てきたものは、で爆笑。もう一度頼んて次に出てきたのは…。そこから 「半分垢」 。特定の人しかしない感じで聴く機会少ないけど、相撲噺というよりも壮大なホラ噺だ。だけど、この人の落語もきちんとしていてかつ楽し気なキャラも立ってる。こうしてみてると最近の上方若手はかなり充実しているのではと思えてくる。

次はトーク、まずたまさん・治門さん・慶治朗さん。今日はここで5秒根問、最初の質問 「自分がアホだと思うのはどういう時か」 に対してたまさん即答で 「ない!」。そこからアホをゴリラに例える最近よく登場する話になり、京大の後輩でもある福丸さんの分析で大いに受ける。今日は通行人は出てこなかったけど、この 「アホ=ゴリラ or 通行人」 理論はぜひ整理していただきたい。

そしてトーク二部は、たまさん・由瓶さんの対談。ほとんど二人会形式の会をやらないたまさんだけど、由瓶さんとのは何度か行ってるなと思って調べたら、何と僕が行ってるだけで4回もあった。お二人は相当相性がいいんだろうな。由瓶さん、まず後姿で九雀さんだと人違いして大声で何度も声をかけた話で爆笑。続いて落語会の予約の問題、最近の若手が落語がうますぎる件、三喬さんへのあこがれと、次々に話題が飛び出したまさんと楽し気なトーク。由瓶さんの話はどれもすごく本音に聴こえるのが楽しさの理由かも。

ここでたまさん、一席目は 「ストーカー」、かなり以前によく聴いていたように思うけれど、その頃とはかなり違ってきているのだろう。冒頭からぶっ飛んでる女が出てきて、自分がストーカーであることに気づかず盗聴器の応酬とか、男が刺されたり、実は嫁がいたり愛人が出てきたり、という怒涛の展開なんだけど、落語でこれほどのスピード感を感じることはまずほとんどない。ぐいぐい引っ張られて地口でスコンと下げられる。快感だ。また聴きたい。

仲入り後、ようやく由瓶さんの高座だ。由瓶さん、短い噺で笑いをとるのがベストだとは思う。ていうか同じ笑いの量なら、お客さんも短い方がいいだろう。だけど由瓶さんは、小さなことをしつこくひっぱるような噺を好きだ、と。
そこから 「搗屋幸兵衛」、どこかで聴いた噺だと思っていたら、「小言幸兵衛」 の搗米屋の部分を取り上げた噺だった。なので、しつこい小言はほとんど登場しないが、借家を貸してくれという 搗米屋に長々と自分の噺をする幸兵衛、搗米屋が何度もいい加減に家を借りる話をしようと言うのだが、さあそれだとか何とか言って嫁との身の上話、前の嫁との話と全然意に介さない。由瓶さん、幸兵衛の相手を圧するような噺のリズムがとても良かった。この噺それがないときっとだれてくると思う。

最後はたまさんで 「南京屋政談」、江戸の 「唐茄子屋政談」 の上方版だけど、僕はこれまで九雀さんでしか聴いたことがなかった。なかなかやり手も少ないのだろうか。例によって登場するのは道楽が過ぎて勘当された八百屋の若旦那、食うにも困って橋から身投げしようとするところをたまたま助けたのが、若旦那の叔父。死ぬくらいなら何でもできるだろうと、南京売りをやらせる。ところが人徳と言うか、俺が売ってやるという男が現れ、2個残して全部売ってしまう。そして、残った2個も長屋で親子にすぐに売れて、その長屋で弁当を遣わせてもらっている時、子供がご飯を欲しがり、貧乏な身の上に同情した若旦那は売上を母親に全部渡して帰ってくる。元々武家の出のこの女は施しは受けられないと若旦那を追いかけるが返せなかった。ところがそれを見たのがこの長屋の家主、たまっていたいた家賃にとその金取り上げて、女は悲観の余り首をくくる。これを聴いた若旦那、家主に乗り込み大立回り。これがお上の知れるところとなり、親子を助けたとの人情裁き。母親も元の身体になり、南京屋は大繁盛。そして勘当も許され家業の八百屋を継いでめでたしとなる。
と、筋を要約すればこうなるのだけど、あまり掛からない噺は知ってる前提で書けないのでどうしてもこうなってしまう。でもたまさん、こういうストーリーテラー的な噺の持っていきかたもなかなか上手い。皆さんにもっと掛けてほしい噺だと思う。
ただ、落語で政談、裁きと言えばお裁き物になるわけだけど、「南京屋政談」については、お裁きの部分が少なすぎるように思う。せめてもう少しストーリーに組み込まれていないと、政談という演題がピンとこなくなる。

今日も盛りだくさんで楽しかったけれど、終演時間は意外に早くて21時10分ぐらい。台風は通り過ぎたはずだけど、雨風は依然結構強かった。だけど、飲んでるうちにましになるやろと、打ち上げに繰り出したのでした。