2017.7.23 【新世界南光亭@動楽亭】

【新世界南光亭】

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さて、今日は動楽亭で南光さん。考えれば100人ぐらいで南光さんを聴けるのだから贅沢な会だ。ただそれだけに予約スタートしてすぐに完売してしまうので、他の日程待ちとかで迷ってると来れなくなる。僕は最近は2回に一度ぐらいのペースだ。そして今日は更にメッセンジャーあいはらさんの初落語の日でもあって、開場1時間前に着くと既に20人ぐらいが並んでいた。しかしみなさん早すぎないか。ただこういう時は臨機応変に早めの開場になることが多くて、今日も13:15 ごろの開場となった。

南光 / 青菜
仲入り
南光 / 怪談市川堤 

南光さん、今日は初落語のあいはらさんに先に出てもらうわけにはいかないので自分が前座だ。そして、演目の 「青菜」 とは何のことかと。先日毎日新聞の連載で対談した時、料理人の上野さんが夏に青菜はない。あえて言うなら 「しろ菜」 になると。天満菜とも言うらしい。僕だけじゃなくてほとんどの落語ファンはほうれん草のイメージに近かったと思うけどね。しかし、当たり前だけど南光さんのまくらは面白い。これだけでもライブで聴く値打ちがある。しかし当然ここからネタに入る。南天さんの 「青菜」 よりはずっと本来の形に近いのだけど、わさび丸ごと食べたところや、「奥や」 ポンポンの表情がとてもチャーミングでいい。そしてお咲さんの暑っ苦しいしゃべりなんかにも、テレビで観てる南光さんがチラチラ顔をみせる。これが絶妙で、よくテレビで売れてる人は落語の中でその人が消えないて言うけど、南光さんは消えてるけどチラチラ出てきてもっと楽しくなる。

続いてあいはらさん南光さんの浴衣で登場、前から一度落語をやってみたくて、去年の11月南光さんにそんな話してたら今日の会ですることになった。それから基本的なことは南光さんに教わって自分で稽古。分からな部分は身近なところで八光さんに訊いた。これがよかったのかどうかと。そして 「代書屋」 へ。出だしの部分、少し間が悪く感じたけれど、すぐにこなれて聴きやすくなってきた。漫才のしゃべりとは全然違うと思うけど、上下もきちっと決まってるし、ギャグ的部分もきっちり受ける。客席にはもちろんあいはらさんのファンの人もたくさんいたと思うけれど、僕たちのような落語ファンも多かったわけでそんな中での反応としては上々じゃないかなと。
そして、あいはらさんほどの人がただ好きだから落語をやってそれで終わらせるとは思えないので、この新しい道具をこれからどう使っていくのか、考えたらまた楽しみになってくる。

続いて仲入り後は 「怪談市川堤」、米朝さんの音源で残っているけれど、僕は聴くのは初めて、ようやくだ。南光さん、本当はあまりやりたくなかった、とか言いながら噺に入る。京都西陣の織物屋の息子治郎吉は17歳で一通りの遊びを覚え、度が過ぎて勘当され、祇園の芸者小染のところに居つく。そして小染の親のテキ屋の親分に見込まれ小染と一緒に大阪へ。しかし、ここでも博打三昧に明け暮れて、ある侍を殺して50両せしめたのに始まって、身ごもっていた小染も含めて次々と人を殺めていく。
ここでひょんなことから知り合った元芸者のお紺といい仲になるのだけれど、お紺が病気にかかり顔の半分が腫れあがってしまう。医者にかからせてやりたいけれど金がない。治郎吉は10日待ってくれと言って金策に走る。しかし金の都合がついたのが13日目、急いで帰るもお紺の姿はなかった。見捨てられたと思ったお紺は家を出て消息不明に。悔やむ治郎吉。ここまで地語りの部分がとても多い噺なんだけど、段々と怖くなってくる。そして治郎吉が成功した数年後、ある川べりで乞食に身を落としたお紺と再会する。うちに来て医者に診てもらえ、薬ならいくらでも飲ませてやると説得する治郎吉、今のあんたの家族がいるところに入って行けないとお紺、でも説得する治郎吉、とうとうお紺はその気になるが、ここで治郎吉、確かに今の家に連れて帰るといろいろややこしいと思ってしまい、お紺を川に突き落とす。ここで治郎吉の気持ちが揺れる様がきっちり描かれている。これだけの人を殺しておいて根っからの悪人でもないとは思わないけど、一瞬みえたお紺への思いは嘘ばかりじゃないというところか。ここからすぐに幽霊が登場する場面で客席が暗転し、高座に更にスポットが。動楽亭へは随分通っているけどこんな演出初めてだ。いわゆる夏の落語での本寸法の怪談噺だった。南光さん堪能した。

あいはらさんの初高座に遭遇できてよかった。そして市川堤も。今月は 「摂州皿屋敷」 「猫とさいころ」 に続いて 「怪談市川堤」、と怪談噺の当たり月だ。既存の怪談噺の会もこういうネタを掛けてくれればもっと行きたくなるんだけどな。