2017.7.22 【染雀晴舞台@繁昌亭】

【染雀晴舞台】

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染雀さんの二十五周年記念の 「芝居噺の世界」、今日はその二回目だ。今日はたっぷり三席、一段と気合の入ったプログラムで、見た瞬間から開演が一段と待ち遠しくなる。さらに共演が今回は文三さんと遊方さんと、また爆笑必至のお二人、更になんと、開口一番には先日初高座済ませたところの、あやめさんの新しいお弟子さんおとめさんの名前も。これはとても楽しい会になりそうだと、わくわくして開演を待った。

おとめ / 東の旅 発端
染雀 / 軽業
染雀 / 昆布巻芝居
仲入り
遊方 / 戦え!サンダーマン
染雀 / 中村仲蔵

まず上がったおとめさん、つい先日の初高座は行けなかったけれど、二席目にして早くも繁昌亭初高座だ。そして、「東の旅~発端」、最近超若手でも、米朝一門でも、以前ほどこの噺やらなくなっているように思うのだけど、おとめさん、リズムがいいし口もよくまわってる。この噺、僕は立て弁ぽくて好きなんだけど、十分じゃないかな。

そして染雀さんが発端を受けてのリレー落語で 「軽業」、明るく軽やかに、染雀晴舞台の始まり、始まり、という感じでスタート。この噺、旅で出会った見世物の、いかがわしさ満載だけどそれもまた楽しい、てのがいかにも染雀さんに合っていていい。綱渡り、アクロバットの奇声も楽しい。なかなかアバンギャルドな 「軽業」 だった。

続いて一人目のゲストは文三さん、染雀さんは何を聴いてもなかなか知らないと言わない、という噺から 「ちりとてちん」、これはもう爆走か暴走か分からないけどフルスロットルで文三さん突っ走る。聴いているとこれ以上面白い落語なんてあるのかという気にさせられる。一般的な 「ちりとてちん」 でも相当面白いのだけれど、文三さんのはリアクションの所作と表情としゃべりがひとつずつオーバー目になっていて、笑いが途切れることなく噺が続いていく。そして、竹が一段とえらそうに酒や誕生日をくさす。それが最後のちりとてちんの臭い袖ではたく様やちょっとずつしかたべられない様につながって、下げで聴き手は留飲を下げる、となる。本当に楽しい一席だった。

染雀さん再び登場して、文三さんは双子の兄と同級生で友達になると。ただ、二卵性で顔が同じでないので、その話を聴くまでお互い知らなかったそうだ。そんな話からネタは 「昆布巻芝居」、ちょっと変わった芝居噺だ。
何でも臭いをかぎ分けることのできる男がいて、長屋中で今日のご飯のおかずが分かるので、毎日貰いに行って暮していたが、そのうち煙たがられるようになって、みんながなかなか臭いが出ないようにし出した。そんなある日鍋の中に昆布巻があると分かった男は 「少し、おくれ」 と迫るけれども、鍋の中にそんなものはないと言い張られて開けることができない。それを宮本武蔵のなべぶた芝居に持ち込むことによって開けさせようとする。結果的に成功するのだけれど、なんとも発送の面白い噺だ。でも染雀さん、確かに芝居噺の所作や切れ味は素晴らしいのだけれど、やはり滑稽噺のすっとぼけた様もなかなかのもので、切れ味とぼけっぷりが相まってなんともいい味わいになってくる。そんな意味では染雀さんにピッタリの噺だ。

続いて二人目のゲストは遊方さん、染雀さんは後輩だけど一緒にバンドもやっているしいろいろと付き合いはある。でも今回の噺をもらった時に、自分とは落語の形がちょっと違っているのではと思っていたら、「どうしても兄さんやないとダメなんです」と。今回、メインの芝居噺二席の間でやることになって、色の違う噺のほうがいいのですと言われた。遊方さん 「俺は引き立て役か」、と言いながらも、ある意味現代の芝居噺 「戦え!サンダーマン」 を。ある遊園地のキャラクターショーに出ていたサンダーマン、子供たちに人気のステージがすすんでいたところに追い詰められたある事件の犯人が紛れ込み、子供と一緒にステージにあがってしまう。みんなはこれを演出だと思っているけどそうじゃなくて、警察を巻き込んだドタバタになり結果的にはサンダーマンが犯人に手錠をかけて逮捕するという下げだ。ドタバタの極みみたいな噺だけどよくできていて、人形はいないけど、何かパペット的な絵を想像した。確かに見事に色は変わって、トリの染雀さんにつながる。

最後二席目の芝居噺は染雀さん、「中村仲蔵」 だ。染雀さんでは初めて。晴れて名代に昇進した仲蔵、「仮名手本忠臣蔵」 で与えられた役は五段目の斧定九郎一役のみ、弁当幕といわれるところで山賊衣装の地味な役。でも妻からも 「役者の意地は舞台で通せ」 と諭されて、役作りを考えるけれど、どうにも下りてこない。そんな時、ある酒屋で見かけた浪人風の侍からのヒントで見事な定九郎を演じる。仲蔵が受けなかったと勘違いするほど息をのんで沈黙する客席、そんな様が聴いていても目に浮かぶ。こちらは華麗な染雀さんだ。そして成功おさめた後の最後の夫婦の場面がまたいい。この噺、芝居噺だけど、夫婦の人情噺でもある。

素晴らしいプログラムを堪能できた。染雀さんには、二十五周年とかだけじゃなくて、普段からもっと落語をしてもらいたいなといつも思っている。まあ、それはそれとして、今回のフィナーレは10/23の三回目、今日の二人に加えて、一回目のゲスト、あやめさん、生喬さんの二人も出演、ゲスト四人の豪華版になるとのことだ。