2017.7.12 【続続続・松之丞見参!!@道頓堀・ZAZA POCKET'S】

【続続続・松之丞見参!!】

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松之丞さんを初めて聴いたのはDVDだった。落語ファンの友人が 「この人いいから」 と貸してくれた。それで頭をなぐられたような衝撃を受けた。なんという力のある語りなんだと。そこから初めてのライブになったのが去年2月、今の旅成金の原型になった大阪公演と、繁昌亭での出番、そして去年の夏、規模が大きくなった旅成金と同じZAZAでの独演会。それ以降は、松之丞さんが大阪に来た時でも都合が合わなくて今日が一年ぶりとなった。独演会は4回目でようやく2回目の参加、すごいとか言ってる割に参加率が低いのだけど、まあとにかくとても楽しみだった。

松之丞 / 狼退治
松之丞 / 扇の的
松之丞 / 違袖の音吉
仲入り
松之丞 / 慶安太平記・鉄誠道人

「狼退治」 は宮本武蔵伝の一節で楽しい噺だけど、講談はやはり長い物語の中の一篇だけでも面白く聴くことができるてのがいい。落語とくらべて提供する噺の構成がとても豊富になる。

そして二席目はあの有名な 「扇の的」、こういう誰でも知ってる噺がで出てるのも講談の魅力。那須与一のかっこよさが一段と伝わった。

三席目は 「違袖の音吉」、大坂の侠客・音吉の出世物語。ここでは若くて勢いのある悪が炸裂する。ここまで三席主人公がとても魅力的に描かれていて、かなりテンションがあがる。

そして仲入り後、最初から松之丞さんが予告していた、とても後味の悪い噺が照明をほとんど落として始まった。慶安太平記は将軍家光から家綱の治世に幕府転覆を謀った由井正雪の物語。どうでもいい事だけど、由井正雪というと横山光輝の 「伊賀の影丸」 を思い出すな。これも長い長い続き読みから、今日は鉄誠道人の段。
すさまじい噺だった。野望のため着々と準備を進めていた正雪に最後足らないのは金、膨大な軍資金が必要だった。そんな思案にくれる正雪の目に、路上で物乞いをする全身真っ白の奇形の坊主・鉄誠道人が目にとまる。そこで正雪が考えた悪だくみ、鉄誠をだまし、民衆をだまし、十何万両の大金を手に入れる。クライマックスの場面の何万の民衆の欲が鉄誠に怒涛のように流れていく様を、松之丞さん漏れることなく語り上げる。闇の中に浮かび上がった松之丞さんの身体から汗が飛ぶ。そして正雪に騙され何万人の前で焼き殺される鉄誠。それをあがめながらも本音はまた別の民衆。人のパワーが噺の中で一点に収束し物語は終わる。そして、高座と客席の非日常も終了する。
もう見事としか言いようのない高座で改めて松之丞さんのパワーに驚いたけれど、今関東関西すべての語り芸の中でここまで聴き手の身体を揺さぶることのできる人果たして他にいるのだろうか。
それと、異論はあると思うけれど、僕は松之丞さんはもう成金を離れた方がいいと思う。