2017.7.5 【梅田にぎわい亭・昼席@大阪市立総合学習センター】

【梅田にぎわい亭・昼席】

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さて今回のにぎわい亭は 「短編落語・シャレてるなぁの巻」 と題して、短くてシャレてる話の特集ということだ。前回配布されたチラシでこの企画は既に告知されていたのだけれど、正直今ひとつピンとこなかった。
いつもは、4人で4席だけど、今回は前座に一門外の慶治朗さんが入り、雀三郎さんが二席の都合六席。一体どういう会になるのかと思って。整理券配布時間の10分前に到着すればもうとんでもない行列で、整理券は42番だった。後で聞けばこの企画が毎日新聞で直前に記事になったことが大きかったのではという話だった。ともあれ、この会も最近増えている平日昼間の会、いつも以上の熱気で開演を待った。

慶治朗 / 動物園
雀三郎 / 井戸側権助
雀五郎 / 看板の一
雀喜 / 四丁目の交差点
雀太 / 千両みかん(短縮編)
雀三郎 / 天狗裁き

慶治朗さん、この人も最近前座でよく遭遇する。名ビラが 「にぎわい亭」 のままめくられてないことを説明する前に客席から数人がすかさずそれを突っ込む。こいうのもこの会の客層を表してる。事情で慶治朗さんの名ビラはなかったのだ。そして落語は相変わらず聴きやすい。若手にとって、この聴きやすさはとても大事だと思う。開口一番ですっと落語の空気を作れる。いい会になる第一条件だ。

次に雀三郎さん、この会の主旨とかの話、若い頃米朝さんの噺とか聴いていた時を思い出してネタを選んだと。で、この 「井戸側権助」という噺、一応古典らしいのだけど、演題も聴いたことなかった。井戸側というのは井戸の囲いのことで、使わなくなった井戸のを焚付けにしようと両手で抱えて運ぶ途中、権助が用足しにそれを置いたまま離れた時、いたずらと思った子供が元に戻して、帰ってきた権助がそこに飛び込んで穴に転落して、下げになる。たわいもない噺だけど、雀三郎さんが選んだだけあってなんともいい雰囲気になるネタだ。自分の知らない噺でこんなのがあるという落語の奥深さを改めて感じさせられた。

続いて雀五郎さん、ギャンブルから競馬の話、このまくら聴くの久しぶりだけど相当面白い。みなさん出てきた馬は本当に実在するのですよ。中でも 「モチ」 という馬が正月競馬で直線追い込んできて、実況アが 「モチが伸びてきた、モチが伸びてきた」 と絶叫したのも実話です。そこから 「看板の一」 .。これも雀五郎さんの定番で、何と言っても親っさんがいい。雀五郎さんクールさの表現がとてもいいなと思った。

雀喜さんは新作の 「四丁目の交差点」、夜中のコンビニ・イレブンセブンに近くの交差点で亡くなった三歳の子の幽霊が出るという噺、子供の 「きのこの山こおてえなあ」 というセリフが泣かせる。だけど、雀喜さんなので怖さよりも情が勝ってる。この人の新作かなり好きなんだけど、パワー系じゃなくて人情系、そして笑いの部分も爆発的じゃなくてほろりとしたくすぐり、癒される噺だな。米朝一門の中では新作手掛ける人そんなにいないので、貴重な存在だ。噺に人柄が出てる感じがまたいい。

ここまで4席で1時間弱、さすがにかなり早いペースできている。どうやらいつも通り仲入りなしでこのままいくみたいだ。

そして次は雀太さん、演題には「千両みかん・短縮編」 とあったけれど、かっちりしたストーリーものだしどう短縮するのかなと思っていたけど、ストーリーが壊れないように細かい部分を省いてとてもうまく短縮されていたと思う。特にコンテストの時間制限がある時なんかに感じるけれど、やっぱりみなさん噺の再構成もお上手だ。時間は16~17分、十分の千両みかんだった。これならどこでも使えそうで、ネタの幅がまた広がるのでは。

最後は雀三郎さん、「天狗裁き」、正直このネタ結構飽きている。やはりリピートものは飽きやすい。たくさん落語聴いてるとどうしてもこの弊害が出てきて悩ましいところなんだけど、そういうのは達者な人のを聴いてクリアされることが多い。今日も正にそれだった。「天狗裁き」 でこれだけ笑ったこと果たしてあるかなと思えるほど。雀三郎さんのは何が違うのかと考えながら聴いていたのだけれど、女房~隣家の男~家主~奉行~天狗、と 「で、どんな夢をみた?」 と尋ねるところがポイントだろうけど、この時の表情がそれぞれ違っていて、だけど本当に聴きたそうでことごとく爆笑につながる。欲望の表現がサラッとしてないところが独特なのかもしれない。とにかくいい 「天狗裁き」 だった。

トータルで1時間半強、6席だけどいつもよりも短いくらいだ。でもとても楽しかった。やはり短くて楽しい噺が次々続くという発想は大成功だったのでは。ネタも新作あり、古典珍品あり、長講の短縮編ありとバラエティに富んでいて、雀三郎一門の力をまた見せつけられた。きっと再度この企画はあると思うし、他の噺家の人達にも注目していただきたい企画だと思う。