2017.6.20 【2017若手噺家グランプリ・決勝戦@繁昌亭】

【2017若手噺家グランプリ・決勝戦

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開場前からファンの熱気でざわつく繁昌亭前

今年で3回目の 「若手噺家グランプリ」 去年は絶対優勝すると宣言して予選にエントリー、そして1位通過したたまさんが決勝では絶対的な本命で、結果もその通りになった。しかし、今年はほぼ順当に予選を通過してきた9名がみるからに接戦で、なかなか結果の予測がつきにくい状態だった。そんなこともあって、ファンの皆さんも相当気合が入っていて開場前の繁昌亭も普段の落語会とは全く違う雰囲気になっていた。そんな中で果たしてどんな結果になるのか。満員の客席を前に開演した。

米二・団四郎 / あいさつ

雀太 / くやみ
華紋 / 阿弥陀池
米輝 / イルカ売り
三四郎 / オーケストラの隅っこで
染吉 / 蔵丁稚
仲入り
喬介 / 牛ほめ
二乗 / 癪の会い薬
小鯛 / やかん
雀五郎 / 初天神

審査員紹介 / 在阪テレビ・ラジオ局の7名

表彰式 / 寺田千代乃氏 (アートコーポレーション(株))
      文枝・米二・団四郎

最初に若手育成委員会の米二さん、団四郎さんからこの会の経緯とシステム、注意事項の説明があり、抽選で決められた出番順で、いよいよ決勝戦がスタートした。

最初は雀太さん、去年のNHKの優勝者であり、混戦の中でも下馬評では本命に推す人が多かった。ネタは 「くやみ」 僕は雀太さんで聴くのは初めてだ。でも何か普段よりも少し派手目になっている。そして雀太さん特有のあのちょっとズラす間があまり感じられない。これは意外だった。

次は華紋さん、「阿弥陀池」 も華紋さんでは初めてだ。これは良かった。普段通り落ち着いた淀みのない高座で、いくつか入れたギャグも効果的だった。声、表情、口跡、抜群の安定感でかつ勢いも感じられる。

続いて米輝さん、ご存知 「イルカ売り」 だ。どんな噺か説明しだすと長くなるので、一言で言えば 「イルカ売り」 という噺はないんだ。それはともかく、僕はこの噺とても好きなんだけど、おそらく皆さん古典を相当きっちりと仕上げてくる中で、この新作が審査員からどのように評価されるかに興味があった。

四人目は三四郎さん、このグランプリファイナルの常連だ。「オーケストラの隅っこで」 は、楽団の中では目立たないシンバル奏者の噺、まあシンバルの出番は確かに少ないんだけど、クラシックファンとしてはシンバルのこういう位置づけは少し違うんだけどなと思ってしまった。そして「イルカ売り」 の後もやはり不利だったか。

休憩前の中トリの扱いは染吉さんで 「蔵丁稚」、これも染吉さんで聴くのは初めてだったけど、かなり良かった。でも今日の審査員には芝居噺がストレートに伝わるのだろうか、不利にならないかなという気はした。だけど終盤の切腹の場、そしてそこから素にかえる定吉、ここは相当よかった。ぜひフルバージョンで聴きたい。

仲入り後は喬介さん、去年の準優勝者でネタは 「牛ほめ」、安定した抜群の面白さだ。自分のスタイル崩すことなく普段通りの落語、それに自身のオリジナリティーがある。下げは娘と牛を間違えるところを具体的に描いて、これは新鮮だった。

次は二乗さん、髪型変わってるな。「癪の合い薬」 はとても鉄板で多分10回以上聴いてる。それだけ聴けばいくらかは飽きてくるのだけれど、今日はやはり気合が違うし、みなさんその気合が空回りとかしない。これもよかった。

8番目は小鯛さん、ネタはこれも鉄板の 「やかん」、偶然にもやかんネタが続く順番になったのは少し不利だったか。予選もこのネタでかなり圧倒してたと僕は思っている。元々上方ではなじみの薄い噺に手を入れて仕上げている。後半の合戦の描写で講談的な語りの勢いがとてもよくて、そのまま下げになる。いい出来だった。

最後抽選でトリになったのは9人の中で一番年季が上の雀五郎さん、「初天神」 もまた鉄板ネタで、最初少し早く感じたけれど、すぐに落ち着いてきっちり笑いをとっていった。僕が前半のクライマックスだと思っている、向いのおっさんの 「ちょっと待って!」 も大爆笑で、みたらしからいかのぼしまで。とても良かった。

ここまで9人、本当に大接戦だったのだろうけど、僕がいいと思ったのは、出番順に華紋さん、喬介さん、雀五郎さんだった。

そして結果発表

優勝・桂 米輝
準優勝・笑福亭喬介

ということになった。それにしても今日は本当にいい会だった。コンテスト云々は別にして、これだけ演者の思いが入った落語を9席続けて聴ける機会なんて普通はまずない。みなさん明日からも各方面で活躍されるだろうし、優勝してもう出れないのが残念な米輝さん以外は、来年ぜひこの場に戻ってきてほしい。