2017.6.17 【千朝落語を聴く会@太融寺本坊】

【千朝落語を聴く会】

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この会は基本2か月に一度なのかなと思うけれど、結構イレギュラーなこともあって、前回の3月来れなかったので今回が1月以来ということになった。ずっとほぼ来てるんだけど、千朝さん二席に開口一番とゲスト枠の四席仲入りなしという、一番落語会らしい構成になっている。そして、ここでは米朝一門のいろんな落語会が開催されているんだけど、フルスペース使っているのは多分この会だけだと思う。今日は最初少し出足が遅かったけれど最終的にはいつもと同じくらいの入りで開演となった。

染吉 / 商売根問
千朝 / 七度狐
紅雀 / 花色木綿
千朝 / どうらんの幸助

染吉さんは 「商売根問」、さすがにこの辺の人が開口一番だと、すっと落語に入れる。雀~鶯~がたろ。この噺は代表的な根問もので前座噺という扱いになっているけど、場面転換が多くてきっちりやればとても楽しい噺だ。僕は開口一番で 「商売根問」 が出れば少し得した気になる。

千朝さん、昔は海外旅行なんてそう簡単に行けなかった、と。そして当時ハワイで米朝一門会やった時の話で受ける。そこから 「七度狐」、煮売屋に入ってから逃げるところまできっちり、そして狐登場しておなじみの展開に。でも正直この噺僕はかなり飽きている。やはりたくさん落語を聴いていると、何度聴いても面白い噺もあるけど、飽きてしまった噺、飽きやすい噺も結構ある。「七度狐」 のようにストーリーがきちっとしてる噺のほうが飽きやすいと思う。ならどんどん飽きる噺が増えていくのかというとそうでもない。達者な人で聴くと復活するんだ。今日も千朝さんが見事に復活させてくれた。千朝さんで聴くのは初めてだけど、とても楽しかった。もちろんそれはギャグの楽しさもあるのだけど、聴き古したような噺にすごくメリハリが感じられた。いろいろ考えながら聴いていたのだけど、千朝さんの噺は間が独特だ。ていうかとても間が短くて会話に会話をかぶせるようなしゃべりも多い。でもそれが聴いていて疲れるどころか心地よくなってきて、登場人物も生き生きと動き回りだす。やっぱり技術なんだろうな。そして噛むとかがもうほとんどなくて、言葉がどんどんリズムよく流れる。その中に必殺のギャグ、所作、表情がからむのだから、もう爆笑しかないのは当然だ。

続いて紅雀さん、僕がこの会で聴くの初めてかなと思っていたら、7年前に一度聴いていた。でも初めてみたいなものだ。上がっていきなり、米朝一門の中ではこの千朝さんの会に呼んでもらえるのはステイタスだ。と、上げながら、入門当時、自分が師匠の枝雀さんについて地方公演に行っていたころ、出番があって枝雀さんとよく一緒に回っていたのが千朝さんと今の文之助さんだと。で、打ち上げ終わったあと、枝雀さん抜きでホテルの部屋飲みが延々と続く話で爆笑。野球選手のモノマネする千朝さんが目に浮かぶ。そして最近よく聴く四国のお遍路の大阪のおばちゃんの話。しかし紅雀さんのまくらは面白いな。完全にまくらも商品化されてる。
そしてそこから 「花色木綿」、これも聴くの久しぶりだ。鉄板ネタのひとつだろうし、以前は相当よく聴いたんだけど。冒頭の泥棒が家々を尋ねる場面から爆笑で、紅雀さんのこの噺の流れを、先に先にとどんどん思い出して、そして聴いて、笑いがまた増幅される。着物をたたむ場面で、内弟子やったから……、てのもお約束だった。そして隠れてた泥棒が怒りのあまり飛び出す場面で最高潮になって下げに。好きな下げだ。

最後は千朝さん、古のCMソングをいろいろ歌う。そして一番好きなのはオリエンタルカレーの歌だと。これは懐かしい。僕も好きだったな。フルコーラス歌ってた。千朝さんのこの手の話は同年代なのでたいがいダイレクトに入ってくる。そして 「歌と言えば、昔は浄瑠璃がとても流行っていた」 、ちょっと強引ですね、と言いながら、そこからしばらく浄瑠璃を語ってから 「どうらんの幸助」 に入る。こういうのをサラッと出来るのもなかなかすごいと思う。
前半の喧嘩仲裁の場面、三人のからみを自在にみせるところがとても面白いんだけど、やはり幸助の世間知らずの仰々しさがいい。だけど冷静に考えると、田舎から出て来て大坂で商売に成功した人がこんな世間知らずな訳ないと思うけど、それを言えば落語にならない。
そして、稽古屋に行く。この噺、前半と後半の展開にどうも無理があって、違う噺をつなげた感が強いのだけど、この稽古屋の件がいわば繋ぎになる。稽古屋の男の 「もう京都に行ってもらいましょ」 でいよいよ舞台は京都に。そして幸助は、たまたまそこにあった帯屋に乗り込んで 「みっともないとは思わないのか」 ここ最高だな。こんな怒涛の展開で、また千朝さんの所作芸、顔芸が炸裂する。そしてスコンとひっくり返すこれもいい下げだ。
なんだかんだと書いたけど、この噺も大好きなんだ。

ということで、四席たっぷり堪能した。そして千朝さんと紅雀さんの意外な高座相性の良さも伝わってきた。一見全然違う落語に見えるけど、実は近い部分も結構あるのかもしれない。「千朝落語を聴く会」、今日も大満足だった。ただ残念だったのは、千朝さんと紅雀さんの三席すべてで、上手後方から最初と最後に訳の分からない掛け声が入ったこと。そして更に千朝さんのオリエンタルカレーの歌の途中にも掛け声と手が入った。周りの迷惑が分からない人なんだろうけど、こうも度々繰り返されると何らかの対応が必要だなと思う。客だからって何してもいいわけじゃない。