2017.6.3 【吉朝学習塾・十三回忌やっちゅうねん・3日目@繁昌亭】

吉朝学習塾・十三回忌やっちゅうねん・3日目】

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さて3日連続の吉朝一門会も今日が楽日、落語はこの5人、そして地獄八景の一芸披露は今日もやるんだろう。なかなか展開が読めないけれど、何らかの大団円が待っているような気もする。どちらにしても今日もわくわくしながら開演を待った。

あさ吉 / おごろもち盗人
吉の丞 / 遊山船
吉坊 / 化物つかい
仲入り
しん吉 / 鯉盗人
よね吉 / 蛸芝居
吉朝一門 / リレー落語 「地獄八景亡者戯・下」

今日の開口一番は筆頭弟子のあさ吉さん、3日連続で補助席立見まで完売を感謝。そこから軽やかに 「おごろもち盗人」、泥棒噺の中でも気の毒ナンバーワンかもしれないけど、気弱な泥棒のい笑い方がおかしい。
「ヘヘヘヘヘ」。だけどこの2日間あさ吉さん料理の話まったくしなかったな。この人が筆頭弟子だからこそ、この一門の雰囲気が決まってくるのかもしれない。

続いて今日も二つ目は吉の丞さん、昨日は開口一番で時間オーバーのよね吉さんを怒ってたけど、今日はあさ吉さんに短かすぎると。舞台監督はいろいろ大変だ。そして何度も打ち合わせをしてパンフつくったのに兄弟子誰もほめてくれないと。いえいえ、とてもいいパンフだと思う。今年これまで見た落語会のチラシ、パンフの中ではベストなのでは。そこから 「遊山船」、代表的な夏噺で今年聴くの早くも二回目だ。この噺、僕は難波橋の夕涼みの情景が好きなんだけど、当時の風俗を、今もそのままある景色になぞらえてみるのもいいものだ。

中トリは吉坊、今回吉の丞には感謝している。そして今週は昼席も出番なので、楽屋でしゃべり続けでクタクタだと。で、吉坊の 「化物つかい」 は聴くのかなり久しぶりなんだけど、やはり口入屋の件から入った。最近そこはとばす人の方が多いと思うけれど、形をきっちり残していくのも大切なとこだろう。
それにしても吉坊の落語、最近は芝居噺の華麗さも、滑稽噺のとぼけっぷりも、どんな演目でもきっちり客席をつかむ。一席一席がすごく楽しみな人になってきた。

仲入り後はしん吉さん、先日車に太鼓積んでて駐車場で枠だけ盗まれた。その時の話で 「犯人は絶対噺家や」 で爆笑。そして、今日しようと思っていた噺があるんだけど、先に盗人噺をされてしまった、けど今日はやります、と言って 「鯉盗人」、この噺、実は知り合いの居酒屋の店主でアマチュア落語している人がある大会で掛けて優勝したのだけど、プロで聴くのは初めてだ。後で調べると吉朝さんがやっていたんだな。ある料理屋に押し入った盗人があっさり五両をせしめるが、金を払うから鯉を食わせてくれという話になって、食べた後、代金訊けば五両もらうと。落語らしい粋な話で、下げもいいな。もっと聴きたい。

落語の最後はよね吉さん、今日はトリなので思う存分やらせてもらいます。で、吉朝は何でもできた。特に歌舞伎の柱巻きの見得が好きだった、と何度も高座で見得をきる。この時点で 「蛸芝居」 の熱演は間違いなかったわけだけれど、所作の切れ味が抜群でむちゃくちゃ楽しそうだ。それにしてもこのハメモノ陣、音は大きいし、とても華麗だし、バシッと合ってるし、何やら普通でないチームだなと思っていたら吉弥さんが後でばらしたんだけど、づけが吉坊、笛がしん吉さん、太鼓が佐ん吉さんという豪華布陣で、よね吉さんここぞとばかりに使い倒して、とても満足気だった。よね吉さんは以前結構聴いていた時期もあったんだけど、そのしつこさに少し馴染めなくなって最近は聴く機会が減っていた。だけど昨日今日はそのしつこさが気持ちよくて、またこれから聴いてみようと思う。

そして、ここからいよいよ 「地獄八景」、今日は幕前に吉の丞さんと吉弥さんも登場した。だけどほとんど吉の丞さんが一人で説明してる。今日も芸廻しが出てくると。そして幕が空いて高座があるけれど、誰も出てこない。すると吉弥さんが上手から登場してそのまま下手に引っ込んだ。続いて吉の丞さんも、よね吉さんも、再び吉弥さん、ハメモノで忙しかった佐ん吉さんがまだ着替え中だったらしい。てことで佐ん吉さん登場、昨日同様ここからしばらくきっちりした落語を披露、亡者どもは煮え湯も針の山もなんなくクリアしたので、遂に人呑鬼が呑んでしまおうということになる。ここで佐ん吉さん下がって人呑鬼の吉の丞さん登場、今日の一芸披露となる。
最初はしん吉さん、急須と扇子持って出てきたので太神楽するのかと思ったら、急須笛、水を入れて注ぎ口から曲を吹く、見事だった。続いて吉坊、出囃子で踊ります、と、自分、米朝吉朝と三つ続ける。やはり踊りも華麗だった。次にあさ吉さん、吉弥さん、よね吉さんの三人登場し即興三題漫才をすると。客席からお題もらって、一旦下がる。すぐに出て来て見事に披露。スリーショット自体が楽し気だった。
さて吉の丞さんが高座に戻って、4人を食べてしまう、舞台は人呑鬼のお腹の中、幕が再び下りて暗転。
ここで、なんと吉朝さんの声が。客席もとっさのことに動揺してる。吉朝さんで下げの大黄までいって、明るくなる。そして幕が上がると直弟子七人が黒紋付で並んで、真ん中のあさ吉さんがお礼の口上。
これで大団円となった。鳴りやまぬ拍手。

初日来れなかったのが残念だったけど、2日間とにかく楽しかった。やっぱりこの一門はチームワークの良さを芸につなげるのがとても上手い。こんな一門は他にはちょっとないと思う。それにしても吉朝さんがなくなった12年前、筆頭二番のあさ吉さん、吉弥さんでも30代半ば、一番下の吉の丞さんは年季明け前で20才過ぎ。そんな状況からよく七人でここまで立派な一門にしたなと思う。もちろん当時は米朝さんが健在だったし、全員米朝宅で住込み修行をしていたということもあっただろう。それにしてもだ。
僕は吉朝さんライブで聴いた事なくて、映像と音源でしか知らないけれど、ずっと50才での早世が残念で仕方なかったけれど、もうそれは考えないようにする。彼らがいるから。
そして最後に、この2日間は裏方に徹していた、弥太郎さんと弥っこさんも含めてこれから先の吉朝一門がますます楽しみになってきた。