2017.5.30 【百年長屋落語会】

 【百年長屋落語会】

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さて今日も百年長屋へ。7時の予定が列が長くなったためか20分ほど早く開場した。客席は8割がた昨日と同じ顔触れだ。メールで開催通知が届いたのが1か月と少し前。落語とかいろいろ行ってる人たちは1か月後の予定が2日続けて空いていることはなかなかない。でもこの2日間は僕はポコッと空いていた。訊いてみると他にもそんな人たちが結構いて、南天さんなんて絶好のタイミングで予定を組んだのかと思っていた。
そんな客席も開演前、なんとなく昨日の余韻も残しながら今日の楽しみを待つ空気が高まってきた19時半、いよいよ南天さんが登場した。

南天 / 青菜
吉の丞 / 餅屋問答
南天、吉の丞 / トーク
仲入り
南天 / 算段の平兵衛

今日は 「青菜」 と 「算段の平兵衛」、二日続けて代表的な夏噺と貴重ネタの組み合わせ、今日もいい感じだ。

南天さん、同じネタが各地を回る話、大阪市内→大阪府下→関西→名古屋→東京、となっていくので、来られる方は同じのを何度も聴くことになる、と。高座数の多い人はやはりみなさんそうなんだろう。
そこから 「青菜」、今年は先週紅雀さんで聴いて以来二度目になる。もうすっかり 「青菜」 の季節だ。
南天さんの 「青菜」 は冒頭植木屋が剪定してる場面から始まる。無言で目を少し離したりしてバランスをみる。そして切る。また切る。「あっ」 という顔、失敗したようだ。そこで 「植木屋さん、植木屋さん」 の声、旦さんから今切ったところを身体で隠そうとする。ここが南天 「青菜」 の最初のお楽しみだ。
そして後半、竹が来る前にお咲さんと打ち合わせ、押し入れに無理やり突っ込む布団と布団の間に、そして竹が来ておから食べてる時、お咲さん登場、もう汗でボロボロだ。上方落語界のアイドルなのに。
ずっと爆笑が続いた。今年は南天さんの 「青菜」 また聴けるだろうか。少なくとも8月の高津では聴けるかな。

続いて吉の丞さん、まくらなしで 「餅屋問答」、この噺ブラブラしてる男に坊主になることすすめた親っさんが、実はなかなかやたけたなんだけど、これが吉の丞さんにピタッとあってる。大坂の町中でなくて郊外に住んでるちょっとややこし気な人たちの噺、という情景がとても分かりやすい。そして、問答に入って多少つまりかけたところもあったけど、リズムよくトントンと進んでいく。この辺りが聴いていて気持ちがいい。
これも立て弁だと思うけど、言葉のリズムに大きな所作も入って楽しい噺だった。

ここで二人でトーク南天さん吉の丞さんに 「今の餅屋問答は文之助さんから?」 と訊く。やっぱりそうだったのか。文之助さんと吉の丞さんとキャラは違うけど、確かに今のは文之助さんのリズムだった。こういうことが分かるのも面白い。二人で文之助さんの落語はテンポがよくて時間あたりの言葉の数が多いのですごくリズムもよくなる、と。僕が文之助さんの落語に感じていること、やはりプロの人が聴いても同じように感じるんだな。
それから、高座から客席よく見えるという話、南天さんがみなさんはクラスメイトみたいなものだと。いい例えだな。そうなると南天さんが先生だ。たまさんは自分の会のこと常連客の集まる喫茶店みたいなもの、て言ってるけど。似ているようで少しニュアンスが違うのが面白い。後、南天さんが 「開演前からみなさんなんやかんやとおしゃべりして楽しそうですけど、それだけ受けていてまだ落語で笑えるのかと心配になる」と言ってたのがまた受けていた。みなさん、いくらでも笑うでしょう。

仲入り後はいよいよ 「算段の平兵衛」、これも昨日の 「鬼あざみ」 と同じピカレスクな噺。だけど、とことん悪いと落語にならないし、本当はいい奴だったてのも少し違うと思う。その辺の微妙なところをどう感じさせるかが演者の腕なのだろう。南天さんの「算段の平兵衛」 は去年の6月にネタおろしで聴いて以来だ。平兵衛の算段たくらむ時の悪顔がいい。ちょっとだけいっちゃってるような顔、算段するのが楽しいんだろうなて思わせるような表情が怖い。そして按摩の徳の市登場、ここから噺の雰囲気が更に変わっていく。徳の市のしゃべりが怖い。喉から絞り出すような声、平兵衛がビビっているのが分かる。細心の注意を払っているのになぜ漏れたのか、どこまで知っているのかと疑心暗鬼になる。そして金を払わされる。平兵衛の困惑の表情もいい。
徳の市の事が役人の間で噂になり、そして下げ。この下げ僕はいいと思う。

てことで二日間の百年長屋が終わった。二日で四席、南天ファンにはとても素晴らしいプレゼントだったと思う。
「鬼あざみ」 と 「算段の平兵衛」、どちらも南天さんの微妙な表情が変化するのが怖かった。この二席を百年長屋のあの空気の中で聴けたのは本当に貴重だった。
そしてもう二席は 「遊山船」 と 「青菜」、もう鉄板の爆笑南天落語、見事に対照的で南天さんの古典の振幅の広さを改めて認識した。正月の百年長屋は定番化しているけれど、今回の初夏の開催も来年以降もまた考えてほしいなと思いながら帰路についた。