2017.5.29 【百年長屋落語会】

 【百年長屋落語会】

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ここ3年ほど毎年正月にこの百年長屋で落語会を開いてる南天さん、今年正月に予告していた通り、今日明日の二日間急遽開催となった。いつものメールで通知して2~3日で予約完売という早さ。みなさんコアな南天ファンなのは間違いないけど、きっとこの百年長屋も好きなのだと思う。このようにとてもいい佇まいで、また照明が適度に暗いのもいい。そしてこの距離感、ほぼ理想的な環境で落語を聴ける小屋だ。そして、この二日間メインの演目は 「鬼あざみ」 と 「算段の平兵衛」どちらもちょっとピカレスクな噺、南天さんがどうつくり込むのかとても楽しみだった。

南天 / 遊山船
鯛蔵 / 打飼盗人
南天、鯛蔵 / トーク
仲入り
南天 / 鬼あざみ

19:30の開演と言えば 「べにてん」 を思い出す。で、今日は時間は分かっていたのだけれど、なぜか30分早く着いてしまい開演まで一時間以上待つことになった。明日はもう少しゆっくり行こう。

南天さんまず上がって 「この会は好きなようにさしてもらえる会だと思うので、みなさんも好きなように聴いてください」 と。そして小三治さんのまくらの話、着物の季節柄の話と続いて 「遊山船」 、これも僕の好きな夏噺、今年初めてだ。冒頭の難波橋の夕涼みの情景、ハメモノ入って賑やかに、ここがとてもいい。喜六清八と一緒にこちらもいきなりテンションが上がる。一気に客席乗せるのがこの噺のミソか。南天さんお見事!
それから、船の中を覗いていろいろ言う二人で爆笑をとり、仕込み→バラシで下げる。
「風が吹いても流れんよぉに」 → 「質に置いても流れんよぉに」、上方落語屈指の下げだと思っている。
本当に聴いてて気持ちのいい噺だ。

続いて鯛蔵さん、先週聴いた「鹿政談」が記憶に新しいけれど、今日のまくらは師匠の塩鯛さんの名代で協会の会議に出た時の話、面白かったけど書きにくい。鯛蔵さん先週といい今日といいまくらも飛ばしてる。
そこからネタは 「打飼盗人」、これも先週紅雀さんで聴いたところだ。目つきが印象的な鯛蔵さん、段々汗が大きくなってくる。マッチつけて消す仕草で泥棒少し困惑して、10円出すところまでさらっと男のペースになる。
「へてなー」 が耳に残って下げは通常。今日も楽しい高座だった。

ここで二人でトーク、特にテーマはないということで落語の話、師匠の話と一番一般的なことだけど面白かった。
南天さんが鯛蔵さんを誉めて始まった。「次は彼がきます」、と。そこから鯛蔵さんの内弟子時代の話、そしてまくら噺に。塩鯛さんのまくらは着地点がなかなか見えずにふわふわと漂っているようにみえるけれど、きっちり受けてネタにもすっと入っていく。こんなまくらが理想だと。確かに、まくらでもきっちり落としてもらえるのが楽しいし、繰り返しでも全然かまわないと思う。名作まくらって南天さんでもいくつかある。

仲入り後は 「鬼あざみ」、南天さんで一度聴いて、他ではかなり以前南光さんで聴いたきりだ。冒頭から続く場面父親を騙して継母を陥れる清吉、とてもいやなシーンだ。そして本当のことを安兵衛が知り、清吉を手にかけようとするができない。家主の助言もあり奉公にでる清吉、そして行方知れずになった10年後帰って来る。ここでまずおまさの清吉を見る目、ただ立派になったていうだけじゃない。一瞬邪悪なものを垣間見たような表情、安兵衛も少し微妙な表情みせる。清吉が風呂に行った後、おまさが年の割に着物が立派過ぎると、紙入れを見たら大金が。怒る安兵衛、今日は勘当してもらいに来たと清吉、そして出ていく。追いかけるおまさ、最後に言葉をかける清吉。最後は三十二歳で刑場の露と消えた。鬼あざみ清吉。
南天さん、清吉、安兵衛、おまさ、三人の表情が交叉する。切り替わる。何を思う。映画的にみえる。南天さん、ここはもう本当によかった。そして最後に清吉は本当はどこまで悪かったのかという余韻が残る。それが普通の人情噺とちょっと違うこの噺の魅力だと僕は思っている。

大きな拍手で南天さん下りた後も、誰も立ちあがらない。シーンとしてる。主催者の方が「今日はありがとうございました」 とあいさつされて、ようやく一人二人と立ちあがりだした。
こんな落語会はなかなかない。南天さんの 「鬼あざみ」 がすごいんだけど、それだけじゃなくてやはりこの百年長屋の空気が噺を取り込んでることにもよるのだと思う。ほんとうにいいものをみせてもらった。

てことで、明日は 「算段の平兵衛」だ。