2017.5.25 【第30回・紅雀の@中央区・ステージ空】

.【第30回・紅雀の】

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さて今日は、紅雀さんの会 「紅雀の」 へ。30回目ということだけど、始まった当初は今は亡きワッハ上方の上方亭で行われていた。思い起こせばあそこはいい小屋だった。そして一年ぐらいだろうか、ワッハの大幅縮小で上方亭がなくなり、雀のおやどに移ってしまった。だけど僕は座敷の小屋が嫌いなので、その時点で行かなくなった。で、今回ここに移ってきて、この会に来るのは4年ぶりぐいらいだ。もちろん紅雀さんはかなり好きな噺家さんの一人で、独演会とかは必ず行ってるけれども、本人の定期的な会に行ってなかったので、南天さんやたまさんと比べると、実際聴いた数が聴きたい気持ちにかなり遅れをとっていた。でもこれでこの会も毎回来れるようになる。何と言っても贔屓の人を二席聴ける機会はとても貴重だ。

開演予定時間の約40分前に着いて並んでいたらかなり列が伸びてきた。堺筋本町長堀橋のちょうど真ん中ぐらい。近くでやってる落語会といえば 「島之内寄席」 か。かなり都心のロケーション、最終的には用意された席がほぼ埋まる40~50人ぐらいで開演となった。

弥太郎 / 転失気
紅雀 / 千両みかん
鯛蔵 / 鹿政談
紅雀 / さかさま盗人

弥太郎さん、「転失気」 は初めて。今日は高座からの距離が近いこともあるけど、表情がとても豊か。そしてとぼけた顔もいい。口跡も聴きやすい。この会場は基本フリースペースなんだけど、落語の声の伝わり方がかなりいいように思える。で、和尚のキャラが少しおかしい。下げも通常のとは違う。あの下げあまり好きじゃないので、こちらの方がいいのでは。

続いて紅雀さん、開演前から新しい会場なのにトイレが壊れてることを謝ってた紅雀さん、でも開演直前にそれは直ってた。その訳をばらす。なんと電源が入ってなかっただけだった、と。これだけのことなのに紅雀さんが言うと大爆笑になる。そしてこの会場のオーナーのこととかいろいろ膨らましてから、季節の食べ物、旬の食べ物という話になって、ネタおろしのとても正統な 「千両みかん」、
冒頭からよく受けていて、みかん問屋の主人が最後千両と言うまでの経緯が少し違うのだけど、千両!と言われた時の番頭の表情が何とも言えずいい。戸惑いの中に怒りが入っているようなとても印象的な表情だった。そしてそれを整然とはねつけるみかん問屋、この場面見ごたえがあった。
更に言えば、最後にみかん食べるところの若旦那と下げ前の番頭の表情も気持ちがすごく伝わってきた。
とにかく紅雀さんの熱演が光った「千両みかん」だった。あっ、もちろん笑いのボリュームもたっぷりと。

次は鯛蔵さん、上がっていきなり高座が揺れて驚く。で、東京と大阪の落語会の違いを。東京の会は前座、二つ目なんかだとロビーにいてホールに入ってこない人もいる。大阪だとそんな人はいなくて、若手に対しても「笑わしてみろ」という圧を感じると。鯛蔵さん確か東京の大学出身で、その頃寄席によく通ってたんだよな。だけど、東京でもそんな客層は一部の会だけじゃないのかな。言い方が楽しいから大受けだったけど。
そこから何がかかるのかと思っていると、江戸名物はときた。えっ、「鹿政談」、かなり飽きてるんだけど。
でも、次の大坂名物と奈良名物でいろいろと入れ込んで細かく笑いを取っていく。しゃべりに切れ味がある。
そして六兵衛のお白洲でもセリフが泣ける。ここで、今日の主役、鹿の守役の塚原出雲登場、悪役なんだけど憎たらしくて爆笑する。最近この噺で面白かった人は、ことごとくこの出雲で大受けする。何かこの人がポイントのように思えてきた。鯛蔵さん、とても楽しい「鹿政談」だった。

最後は再び紅雀さん、鯛蔵さんと刑務所に慰問に行った時の話、泥棒の噺、女性の噺やできない噺が多くて両手両足もがれたような状況だった、と。そういう場所でも笑わせるのはさすがだと思う。
そこから 「今日はその時できなかった泥棒の噺をします」、で 「さかさま盗人」、何度も聴いてるけれど案外演者が少ないのかな特定の人何人かで度々聴いている印象だ。好きな噺だけどね。「2尺8寸伊達には挿さん」を「ええせりふだんな」 と一度受けてから 「一尺ちょっとしかない」 と返す。このあたり、意気込む泥棒をどうせ取られるものないとかわしていく男の飄々とした様が紅雀さんとても似合ってる。そしてだまされた女の件で二人に意外な事実が分かる。すっかり男にいいくるめられた泥棒、これもちょっとピカレスク、悪い男なんだけど憎めないというキャラもいい。紅雀さん、とても気持ちのいい泥棒噺だった。

4年以上離れていた会に再び来ることてのは普通はない。今回は会場がダメだったという事情なので仕方なかったんだけど、やはりこういう密な空間で聴く紅雀さんは独演会のホールとかとは全然違って、直感的で爆発的、やはり落語の天才なんだろうと思う。予定調和でないスリルがある。僕は上方だけでも好きな噺家さんは30人ぐらいいるのだけど、その中でも紅雀さんのような人はほとんどいない。
次は7/15に同じ場所で開催、二回に分けて新作二本をかける予定だとか。とても楽しみだ。必ずまた来る。
本当にいい会だった。