2017.2.10 【笑福亭福笑一門会@繁昌亭】

 【笑福亭福笑一門会】 

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毎年この時期に行われる 「福笑一門会」、一門と言っても弟子はたまさんだけなので、「たった二人の一門会」 となる。今年で11回目ということだけど、僕はこれで七年連続で来ている。たった二人というだけあって、この会はいつも前座も出ない。いきなりたまさん、そして福笑さん、仲入り後も同じ順番でもう一席ずつ。
たまさんはどんな高座でも手を抜かない。その時の状況でベストパフォーマンスを見せてくれる。もちろん相手が師匠でも同じだ。一方福笑さんもたまさんを認めた上で、弟子に負けるか、と大人げない。で、爆笑になる。
とにかく、二人の師弟の真っ向からのぶつかり合い、今年もわくわくしながらやって来た。さあ開演だ。

たま / 秘密警察
福笑 / 手切金
仲入り
たま / 猫の忠信
福笑 / 貧乏花見

たまさん、久々に例の派手な着物 (CDジャケットのん) で登場、で、四代目春団治の話。これは数日前に聴いたばかりだ。今日も最初物騒がせだったけれど丸く収めた。それからおなじみ春団治一門のショート落語、で、更に福笑さんが一番好きな小噺の話、アフリカでライオンに襲われそうになる噺だ。これは初めて聴いた。爆笑だったけど、何か哲学的でもある。「低く飛ぶ練習」うーん。ここでようやくネタにはいる。「秘密警察」 短いらしい。
とあるスーパーで、首なし連続殺人事件が発生しておとり捜査をすることになった。その中でなぜか九官鳥が登場しいろいろとばらしてしまう。「アドリブです」 で爆笑。いっこも秘密になってない秘密警察、むちゃくちゃ受けて一席目スタートした。

続いて福笑さん、ガス漏れ警報器の感度が高すぎて直ぐにメッセージが出る。そして近所がびびる、てな話で爆笑。春の風物詩らしい。そこから噺は 「手切金」 12月の 「できちゃったらくご」 に福笑さんが特別参加してネタおろしした噺だ。その時からよく受けてたけど、今日は更に構成が練られてた。社員数8500人の会社の御曹司との結婚が決まった娘の父親が嫁にやるのがいやでいろいろと画策する。で、相談した知り合いの息子と偽装結婚を考えたら、その二人は実はつきあってて、という、得意のややこしい人間関係の噺になっていく。その息子が先方からせしめた手切金1000万持ってフィリピンに高跳び、そして娘に結婚申し入れ、御曹司も再び登場して話はますます複雑に。福笑さんこういうややこしい噺を受けながらストーリ展開していく。福笑さんの落語は実はとても人間的なんだと改めて思った。ここでもオサム君登場、オサムて本当は誰の事なんだろう。

仲入り後は一転古典の応酬、たまさん今日はまくらたっぷり、二席目は染雀さんが歌丸さんにあいさつし損ねている話、これも何度か聴いたけど爆笑だ。で、そこから 「猫の忠信」
全体的に割とくどい噺で、一つのストーリーが本当かどうかを何度も検証していく流れだ。
だけど、そんな印象が強く出るとだれてくる。難しいんだろうな。たまさんでは5回目、パワーで押していってだれるすきは全くない。今日は 「温いつくり」 を本来の場所以外でも小道具的に使っていてそれが効いてたと思うけど、これ前からやってたかちょっと覚えてない。たまさんの猫忠では、真田の抜け穴の場面がバカバカしくて好きだな。猫の告白の場面も上手かった。でもこのいつもの下げはいいと思わなかったけど、何度も聴いてるうちに慣れてきた。そんなのもある。

最後は福笑さん、トランプの話、小池さんの話、豊洲の件、こういうのはいくらでもネタができるのでありがたいと。そんでよく受けてたけど、どう料理するかは噺家の腕次第だからね。拍手したおばちゃんに「やつさなあかんで」、お水取り、センバツ、彼岸がくれば関西は春、いろんなまくら総動員で爆笑続く。さらにたまさんが言ってたライオンの小噺はアガサ・クリスティーの小説にでてくるらしい。この会四席なので、二人ともまくら長めなのもいい。
そして噺は 「貧乏花見」、福笑さんで聴くのはなんと6年ぶりで2回目だけど、以前のはもう忘れた。それにこのネタ有名な割に春になっても案外掛ける人少ない。福笑さん、長屋の連中の酔態がとてもいい。大家の商売がなんぼのもんじゃ、と。庶民の生活の描き方も含めて、こんな長屋の人達がいい。江戸へ行って 「長屋の花見」 噺の筋は同じでも家主が登場したりとかいろいろ変わってる。僕は「貧乏花見」 の方が好きだな。

四席たっぷり堪能した。例年の一門会より今年は特によかったと思う。ちょっとな、てのがなくて四席全部よかった。二人の落語は師弟だからよく似た方向向いてる部分もあるけど、もう全然別の個性もいろいろ感じられる。
福笑さんとたまさん、やっぱり上方最強の師弟だな。