2017.1.24 【千夜九夜物語・第5夜@繁昌亭】

 【千夜九夜物語・第5夜】

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米朝さんが40代後半に収録した「上方落語大全集」 LPで全23巻、これを1巻から順に基本はレコード収録通りに掛けていくという企画、毎回LPレコードを模した上記のようなプログラムが配られる。これを全巻揃えたくて、この会コンプリートを目指すことにした。今のことろ年3回ぐらいのペースなので、この先まだ6年ぐらいかかるのか。先の長い話で、僕自身がきちんと来れるように主に体の管理をしないといけないんだけど、演者のお二人についても、千朝さんは同年代で、九雀さんは僕より少し下の世代になるので、是非とも元気で完走していただきたい。そして、二人の落語がまたいい。毎回いいネタがずらりと並び、始まる前のわくわく感はかなりのものだ。今日もきっと楽しませてくれるだろう。

小留 / 普請ほめ
千朝 / しまつの極意
九雀 / つぼ算
千朝 / 猫の忠信
仲入り
九雀 / 崇徳院

開口一番は小留さん、小枝さんのお弟子さんだ。きっちりした落語だけど、かなりクサい。客席を取り込もうとするような落語だ。この会の開口一番はもっとサラッとした人の方が向いているのでは。

続いて、少しネタの順番が変わって千朝さん 「しまつの極意」 から。けちの落語の集大成です、と。
千朝さん、この会ではまくら短めだけど、今日もほとんど振らずにネタに入る。あまり劇的な展開もなくフラットに流れるこの噺、淡々と進める千朝さん、この人のこういう噺もなかなかいい。だけど下げは好きじゃない。でも下げを変えるとこの噺成立しそうにない。

そして九雀さん、一応LPは23巻までだけど、中には5席入っているのもあるので23回で終わらないかもしれない。こういう会を始めると 「長生きも芸のうち」 という言葉を実感する、と。本当にその通りだと思う。
一席目は 「つぼ算」、この噺かなり名作だと思っているのだけど、冒頭の水壺が割れるまでの件、猫がどうしてこうしてとか、ぼーとした男が説明することろが好きだ。ここ省く人もいるけど、こののんびりした間が壷を買いに行ってからの忙しい展開に活きてくるのだと思っている。そして、番頭を激しく攻め込む徳さん、九雀さんの緩急がとても良かった。そして、聴き手も段々訳が分からなくなってきて、もう考えるのやめようとなればしめたものだ。
そんな 「つぼ算」に今日も翻弄されて、楽しかった。

千朝さん、紅白歌合戦はもうみない、知らない歌ばかりだと。ここで少しだけ遊ぶ。郷ひろみ、とかなら許容範囲らしい。反復横跳びは得意だと。で、昔大阪では、浄瑠璃とかを教える稽古屋が各町内にあって、お師匠はんがいろいろと無理矢理生徒をほめていた。そこから 「猫の忠信」、常吉の嫁で悋気しーのおとわの気持ちの揺れや、実際に稽古屋まで出かける場面がこの噺を膨らませていく。千朝さん、何気に糸仕事の所作がさらっと上手い。そして長い噺なんだけど、あまり長さを感じさせないテンポがいい。畳みかけて行って、下げ前の独白、正体は猫だった。三味線と鳴り物がドロドロと盛り上げる。これが本当の上方のハメモノだと思う。最後にこの盛り上がった状態をひっくり返すアホみたいな下げ、これも含めて上方らしい楽しい噺だ。

ここで休憩入れて、最後は九雀さん、この会やって一番感じることは、米朝落語の幅の広さだと。
で、「恋」 の話、国語辞典で引いたとかそんな話。こんな少し変わったまくらから 「崇徳院」、本家から帰ってきた熊はんと女房の会話から始まる。正直僕はここは 「熊五郎でおます」 から入る方が好きだな。
もちろん何十回も聴いてる噺で、ストーリーも完全に分かっていて、何を聴くのかというとどうやって結論に導くのかという事かなと思う。今日印象に残ったのは、熊はんが旦那にしつこくブツブツ言う場面、何言ってるか分からないぐらいひそひそと。そこから裏長屋もやるという事なって、女房にぼろくそに怒られて、で、最後の床屋の場面になる。やっぱり予定調和の時代劇みたいなもので、もう一人の男との出会いがクライマックスなわけで、きっちり盛り上がっていい締めだった。でも「崇徳院」の通常の下げはもひとつつまらない。

これは今日に限った事じゃないけれど、第5夜もまさにたっぷり感のある落語会だった。そしてこの会、いつも聴いたネタを米朝さんで聴きたくなる。するとこの収録された頃の米朝さんは声にとても勢いがあって、上手くて華麗で、九雀さん言ってたようにすごく幅が広くて、大変な噺家だったんだなと改めて思う。こんな会をまだ多分20回近く聴けるなんて素晴らしいことだ。次はいつになるのか今から待ち遠しい。
それと今日九雀さんが言ってたもう一つのこの会の目的、ぜひ実現するように祈っています。