2017.1.18 【桂あさ吉の会@繁昌亭】

 【桂あさ吉の会】

イメージ 1

さて昨日は紅雀さんの 「たちぎれ線香」 目当てで箕面まで行ったけれども、今日はあさ吉さんの 「弱法師」聴くために今年初めての繁昌亭だ。事前のネタ出しだったけれど、よね吉さん佐ん吉さんと出番を一門で固めていた。何か趣向があるのかと思っていたけど、実は今日のネタの並びは師匠の吉朝さん最後の高座となった平成5年「米朝吉朝の会@文楽劇場」の本来の並びと同じらしい。それで一門で固めた。なるほどそういうことか。やはり今年は師匠の十三回忌ということで、これも特別な会なんだ。

佐ん吉 / 道具屋
よね吉 / たぬさい
あさ吉 / ふぐ鍋
仲入り
あさ吉 / 弱法師 

開口一番は佐ん吉さん、僕は知らなかったのだけど、この平成5年の会で開口一番を務めたのは、当時入門5年目だった当の佐ん吉さんで「道具屋」を掛けた。ということで今日も当然「道具屋」
で、あさ吉兄さんには入門当時とても世話になった。当時,宇多田ヒカルのような落語家なりたいと言ってたのをよく覚えているけど、いまだに意味が分からない、と。「道具屋」は首がまわるおひなさんに落語をさせるのが爆笑。
特に気合入れるでもなく、サラッといつも通り面白かった。

次が三番弟子のよね吉さん、この人聴くのはかなり久しぶりだ。あさ吉さんの結婚式の段取りをすべてやったのが大変だった。開場は中之島の中央公会堂の地下食堂で、披露宴用の備品がなにもないとか、とんでもなかった、らしい。今日のネタは 「たぬさい」の決め打ち、一体何年、何十年ぶりだろうか、と。普通に楽しくて可愛いたぬきだった。このネタ平成5年の会では米朝さんが掛けている。

続いて、あさ吉さん、一席目は 「ふぐ鍋」、これはもうみなさんするし、吉朝一門の定番だ。そして、その会では吉朝さんが 「弱法師」 とこれの二席かける予定が、体力的に難しいということで「弱法師」 一席になり掛けられなかったネタだ。かわりにたまたま近くを通りかかった雀松さん(現文之助)が代演で「替り目」を掛けたとのことだ。
吉朝さんのこの噺のまくら、新世界のふぐ屋のこととか、このわたが好きだったとか。
内容はもうはずれなし。きっちり笑わせる。

そして中入り後、いよいよ 「弱法師」 だ。僕はこのブログでは、他の人の同じネタと比べてどうこうは言わないことにしている。やはり落語は一期一会だと思っているので。でも今日は1か月前に聴いた吉坊の 「弱法師」 のことにも触れる。片方だけでは語れない感が強いので。
今日の客席は女性ファンの多い演者三人てこともあって、すごく女性比率が高かった。だけど、そんな中にも普通ならあさ吉さんの会には来ないようなマニアなおっちゃんたちの顔も結構みえた。(自分もその一人か)
それはやはり「弱法師」 を聴きに来たから。あさ吉さんの「弱法師」、一体どんな落語になるのか。
この噺が特別視されるのは、一つには摂州合邦辻の俊徳丸伝説につながるという点だけど、そういう大阪の古い民話みたいなものに題材をとっている噺は他にもあり、また出来上がった落語の上では基本別の噺だ。だからこの噺は笑っていけない噺じゃないし、本来普通の人情噺として語られるべきものだったのかもしれない。
それがどうしてここまで特別視されるようになったのかは、やはり吉朝さんの最期の高座として悲劇性をまとってしまったから。そして、今日のあさ吉さんの「弱法師」には、その悲劇性から解放しようという意図が感じられた。
小ギャグも盛り込むと、客席全員がこの噺の来し方を知っているわけではないので、当然笑いも起きる。
今日は意図した笑いなのであまり場違いな感じがしない。逆に物売りの声については淡々と時間を流す。
噺の筋はほとんど同じだけれど、最後に父が母を説得する場面がよかった。で、俊造に父親が施しを持って行かせる場面、団子とかが超大量だ。ここでも自然な笑いが起きる。そして、最後に父親が熊はんに、倅から目を離さんように、と伝える。この場面は普通はないと思うのだけど。そんな意味であさ吉さんが意図した路線としては良かったと思う。ただもちろん吉坊の「弱法師」は吉朝さんの流れをきっちり汲んだものであり、どちらがどうとかは言えない。他の、吉朝一門の人はやらないのかな。ぜひ聴いてみたい。そして、一門外でこの噺を取り上げているのは吉朝さんの盟友の千朝さんと、文我さん、文我さんのは聴いたことないけど、千朝さんでは三回聴いている。演題は「ながたん息子」だけどね。で、千朝さんのはやはりこの人の年齢やキャリアもあって、すごく落ち着いたいい噺に仕上がっている。僕が聴いた三人は三者三様、それでいいじゃないかと今は思っている。

これからも吉朝一門に注目していきたい。