2017.1.10 【たまのパワーアップ落語会@動楽亭】

 【たまのパワーアップ落語会】

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今年の初動楽亭

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さて、今年から始まったたまさんの新企画 「パワーアップ落語会」、実は12月まで毎月開催で日程は発表済みだ。来年の事は分からないけど、この企画なら一年限定と思って僕は聴くことにしている。
画期的なのは、毎回若手を3名×各10分の時間で一席やってもらって、その直後たまさん+ゲストの5人でトークをすると。しかも登場する若手の中には、たまさんも落語を聴いた事ない人がたくさんいるらしい。トークというかゲストと二人でダメ出しするのか。そこまでいかなくても今日のネタの話になるのか。
その辺の流れが今一つ分からないけど、普通の落語会にならないのは確実なので、楽しみで仕方なかった。
客席は最終的にはほぼたまさんの思惑通りの70人ぐらいまでいった。

たま / あいさつ
りょうば / つる
寅之輔 / 大安売り
和歌ぽん / 十徳
トーク / たま・花丸・りょうば・和歌ぽん・寅之輔
たま / 豪華客船殺人事件
花丸 / 蔵丁稚
仲入り
たま / 一分芝居

最初にたまさんあがって今日の主旨説明、なかなか過激だったプログラムに沿ってまずは三人の登場だ。

りょうばさん、勢いよく飛び込んできて第一声がでかい。選挙演説か。
しばらくそのテンションで、飛ばす、飛ばす。客席もきっちりつかんだ。年季明けてますますいい感じだ。でも考えればこの人、プロの噺家のキャリアは2年目でも、プロミュージシャンとしては随分長いキャリアがあるのだからこれぐらい当たり前なのか。「つる」、とても楽しかった。11月ここでの「年季明けの会」 は正直消化不良な感じだったけど、今日聴けばもう大丈夫だ。これから先のりょうばさんがますます楽しみになってきた。

続いて寅之輔さん、一度だけ聴いているのだけどほとんど記憶がない。8年目と聞いてそんなにキャリアがあるんだと正直思った。で、繁昌亭の昼席に出れないと。今日はたま兄さんから初めて仕事もらって緊張してる、そうだ。
そこからネタは 「大安売り、この噺はどちらか言うとネガティブなネタで負け続けることがポイントみたいなところがある。そんな噺をまたあまり前に出る印象のない寅之輔さんが演じると更にネガティブに見える。ひょっとしてそれが狙いなのか。そうだとしたらうまくいってるとは言えない。りょうばさんの後だから余計そうみえたのか。他のネタならまた印象が変わったのかもしれないけど。

そして三人目は和歌ぽんさん、文福さんの五番弟子で寅之輔さんとは同期だと。なんとかポンポンと何度も客席にアクションを要求する。そして拍手せざるを得ないことをまた何度も言う。客いじりだ。同じようなことしつこくするマジシャンもいる。そして申し訳ないけど僕は客いじりをする人は自分の芸の拙さをそれでカバーしているのだと思っている。まして今日のように70~80人ぐらいのスペースでこれをやられると、好きでない人は間違いなく不快になる。一定人数の客を確実に不快にすることはやはりするべきじゃないと思う。
後のトークの中で、たまさんが和歌ぽんさんにうまく振って、相撲甚句を披露させた。上手い。なぜこれを出番でやらないのか、なんとかぽんぽんよりよほどよかったのに。

次は花丸さんも入って5人でトーク、楽しかったけれど、花丸さんにも若手三人にもっと踏み込んでほしかったな。たまさん以外の4人がどういう顔ぶれかで今後もトークの方向は変わってくるのだろう。僕はできれば今日のネタについてもっと突っ込んだ話が聴きたいけどね。

そして、たまさん一席目 「豪華客船殺人事件」、今まではただの「豪華客船」だったよな。福笑たまの師弟はネタによく「殺人事件」をつける。分かりやすくて僕はこっちの方が好きだ。
これも何度も聴いてるけど、冒頭の夫婦のバカバカしくもかみ合わない会話が最高だ。そこから大喜利になる。この辺りは古典からの流れか。で、おなじみ酔っ払いが登場し話をひっかきまわす。最後はなぞかけに掛けたさげでサラッと下げる。どこでも使いやすいネタに仕上がっている。

ここでようやく花丸さんの出番、昨日の苦楽園口の落語会でまくらの有名な酔っ払いの小噺が演者片方不在のためかぶってしまったと。こんな時客席は確かにどう反応していいのか分からなくなる。
そして、今日はたまさんの最後のネタの仕込みとして同じ系統の噺をします、ということで 「蔵丁稚」、
人情噺も芝居噺もいつもながら見事なのが花丸さんだけど、今日は所所作よりも特に表情が芝居がかっていた。宝塚やってるせいかも、て言ってる人いたけど。確かにそうかもしれない。でもこれぐらいクサいのは、僕は好きだな。客席が花丸さんの噺にどんどん引き込まれていくのがわかる。舞台とが一体化して、シンクロニシティだ。
この頂点から一気に素の定吉に戻す。「お腹が空いた~」、定吉暴れて、御~膳から下げ。
とても楽しかった。定吉への切り替えが見事だ。

遅めの休憩の後、最後はたまさん、「一分芝居」、江戸ネタでもっと一般的には「権助芝居」だ。
田舎の素人芝居で突然配役が足りなくなって、ここでかつて経験があるとかないとかで起用された権助、これがとんでもなくて起きる大騒動を軽やかな田舎言葉にのせて届ける。
落語の田舎言葉てのは、江戸でも上方でもどこの言葉かよくわからないのが使われている。これは江戸時代から落語が発生した、江戸・京・大坂とそれ以外の地域の対比上のことなんだろう。でもたまさんの田舎言葉は 「ちしゃ医者」 とかでよく聴いてるけど、すごく自然になじんで耳に入ってくる。
で、「一分芝居」 は、たまさん勢いがあって面白い。所作も派手で大きく立って回ったりとか。
たまさんの古典ネタおろしはいつもかなりレベルが高い。今年は月に一本ならますます完璧になりそうだ。

都合、長いプログラムが終わった。最初なので期待しすぎた部分もあったかもしれないけど、全般的にはとても盛りだくさんで楽しい会だった。
だけど、繁昌亭昼席について僕は入門3年間は出れないてことは知っていたけど、それ以上経過しても出れない人がかなりいるというのは言われてみれば、だな。上手い上手くないて誰が判断するのか知れないけれど、そんなこと言うんだったら出てる人でも上手くない人いると思う。
まあ、そういうことも含めて 「パワーアップ落語会」 が これからどう変化していくのか、またゲストや若手出番の人によっても変わるだろうし、楽しみにして2月を待つ。