2017.1.15 【笑福亭たまABC独演会@ABCホール】

【笑福亭たまABC独演会】

イメージ 1

3日前の夜から風邪気味で今にも熱が出そうな感じだったので、翌日の落語会キャンセルして、二日間おとなしくしていた。そしたら何とか今日来れるような状態にまで戻ってきたのだけれど、ちょうどとんでもない寒波がやってきて、阪急沿線からは来にくいこのホール、今日は紀伊国屋の前からタクシーに乗った。すると案外近くて920円しかかからなかった。
で、ホールに着いて、やっぱりここはいいなと思っていた。堂島川の水辺の風景がこんな寒風の中でも引きしまって見える。そして中之島について、御堂筋以東の方が著名な建物や江戸時代からの有名な橋がいくつもあって、普通はこのエリアを代表してる。一方このホールのある西側の地区は高層ビル群はあるもののビジネス以外の臭いがあまりしないクールなエリアなんだけど、ABCがここに移転してホールも移したことによって少し状況が変わったのかな。「ほたるまち」っていいネーミングだと思う。
とかこんなこと書くなら、ちゃんと写真とってこいよ、だな。

そんな僕も大好きな中之島隣接エリアで行われるたまさんの独演会。今のところ大阪での会の中では、季節ごとの阿倍野独演会のスペシャル版という位置づけ、つまりたまさんの会の中で一番特別な会ということになる。
そして、今日は330人のキャパがほとんど満員だったと思う。たまさん以外も注目の顔ぶれで華やかに開演した。

二葉 / 3年2組の高田君
ひろば / 狸の化寺
たま / 胎児
たま / 饅頭怖い
仲入り
小ゑん / 長い夜・改Ⅱ
たま / ショート落語~鼓ケ滝

二葉さん、東大阪の出身高校の噺で爆笑、そこから 「学校の噺をします」、何だろうと思っていたら、これあやめさんの噺じゃないか。てことで 「3年2組の高田君」。ある女の子が高田君が好きで、先輩のアドバイスでいろいろ猛烈なアタックするんだけど、ことごとく失敗して爆笑になる。しかし二葉さん、この噺にはまってるな。もちろん年齢的なこともあるのだけど、彼女のためにつくられた噺みたいだった。

続いてひろばさん、たまさんの書いたプログラムのあいさつ文を一通りいらう。しかし今日もたまさんのあいさつは過激だな。そこから地方で泊まった変なビジネスホテルの話で爆笑。
ネタは 「狸の化寺」、この噺ほとんどざこばさんとひろばさんでしか聴いた記憶がないんだけれど、くろくわ、という聴きなれない言葉~土木作業員のここtらいい~が何やら冒頭から怪しげな空気を醸し出す。そして、そんな男たち三十人を束ねる頭の貫録、もうすっかりひろばさんの身体に入ったかのような印象で、ひろばさん以外でこのネタ聴くのは想像しにくい。下げ前からの展開も楽しくていい。

そしてたまさん、恒例一席目の長いまくら。寄席の経営について書いたプログラムのあいさつ文について、この会は落語リテラシーの高い人しかいないからこういう内容にした、と。でもたまさん、将来事務所の社長も兼務したらどうかなと思う。そんな構想はないのかな。寄席構想の先にあったりして。そして、去年の繁昌亭大賞奨励賞の件、二人受賞をまたチクリとやり、四代目春団治の件に。一周忌が過ぎて動きがあるのか。
まあ、いろいろと話を振って、ネタは 「胎児」、これは好きな噺で過去に三回聴いてる。母親のお腹の中にいる子どもがいろいろと面白いことをして外部とコミュニケーションをとっていく。でも帯を途中までほどいてへその緒に見立てたりとが、逆立ちして逆子を直すとか最高だ。でも、今日はABCラジオ収録だけど、分かるのかなと、たまさんふと気づいたようだ。

一旦下がって、着替えて再登場。噺は 「饅頭怖い」、冒頭から 「僕、いつもこの噺、饅頭怖いの件が不要ではと思ってるんです」、だいたいこういう発想する人はいない。普通はあそこがあるからこそ 「饅頭怖い」 なわけで、でも、だからこそ、たまさんの古典ばっさりが活きてくるんだろうな。まあ、きょうはばっさりとはされなかったけれど。
喬太郎さんが東西ネタの違いを説明する時に、よくこのネタを持ち出してる。で、落語にはストーリーものといっても映画や小説とは違うので、 筋を追うだけなら不要だったり、邪魔にしかならない部分がよく登場する。そしてたいがいそこが笑わせる部分になってる。だけどこの噺は僕は例の怪談めいた部分が必要なのかな、と。饅頭怖い、としては江戸の方がよほどスッキリしてていいのではと思う。たまさん言うのもそういうことなのか。饅頭怖い、を外して別の噺にしてしまうてことなのかな。

仲入り後は東京から小ゑんさん、西日本悪天候の中大阪に到着。でも雪の事やたまさんの事に特に大きく触れずに噺にはいる。たまさんもしてる、おでん鍋のネタ擬人化 「ぐつぐつ」 は小ゑんさんの作品だ。それとこの人のCDのジャケットはジャズファンなら誰でも知ってる名盤のパロディがたくさんあって、すぐに名前を覚えた。今日で4度目だけど、うち3回は大阪でのたまさんの会で、後一度は東京の寄席だった。さて今日は何を聴かせてくれるのか。
ネタは、後の張り出しで演題知ったけど 「長い夜・改Ⅱ」、「私は空」 「私は大地」、と二人の神様が上空から人間たちを見下ろしている。そこで地上で起きるバカバカしい騒動を描いていく。北千住のデニーズが面白かった。レスカ、て聴いたの何年振りかな。小ゑんさんの落語にはいつも意表をつかれる。いい意味ですかされる、とでも言うか、展開が予測しにくくて、ずれたタイミングで笑ってしまう。大阪ではあまり聴けないタイプの新作だ。東京でも大阪でもぜひまた聴きたい。

たまさん最後、ショート落語は、電車、オスプレイ春団治など。四代目は誰になるかを長めのショート落語でまとめていた。これは面白い。そこから 「鼓ヶ滝」、最近たまさん、よくかけている。西行法師の歌をモチーフにした噺で、なかなか楽しいいい噺だ。今も川西にその地名は残っているらしい。たまさん、こういうなんてことのない古典を取り入れて結構な頻度で掛けることあるけれど、どこかに感じるところがあるんだろうな。

てことで今年もABC独演会は盛りだくさんで楽しかった。3時間近かったと思うけれど、いつも通りそれほど長さを感じない。演者も聴き手もたっぷり面白くが好きなんだろう。今日のプログラムでも感じたけれど、今年はたまさんにとってまた大きな転換のある年じゃないかなという気がしてる。この先ずっと聴いていきたいなと思える噺家になってきた。