2017.1.3-4 【初春文楽公演1部・2部@国立文楽劇場】

 【初春文楽公演1部・2部】

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今年も少し無理をして、3日の初日に「初春文楽公演・1部」に行ってきた。初日については会員発売日のチケット争奪が激しくてなかなか思うような席が確保しにくいのだけど、鏡開きや振舞い酒、そして多くの報道陣といった華やいだ雰囲気がとてもいいのでできるだけ来るようにしてる。
とはいっても開場の10時半にあわせたような時間にしか行かないので、これぐらいの写真が精一杯だ。
そして、劇場の1階2階、人があふれていて、補助席まで完売。なかなかテンションが上がって、いよいよ開演だ

〇第1部

「寿式三番叟」
緞帳が上がると、太夫・三味線が舞台後方にズラリと並んでいて壮観だ。文楽5年生でも三番叟は何度か観ているけれど、この形は初めてだ。歌舞伎みたいやな、と思っていたら、翁の呂勢さんの声が届きにくい。今日の席は上手10列目、そんなに遠くはない。床からなら二等席にいてもきっちり届くのにな。
これだけ届きにくいと、ビジュアルはよくても床に並んだ方がいいな。
玉佳さん、一輔さんの三番叟も、勘市さんの千歳も良かったけど、やっぱり和生さんの翁だな。ゆっくりした動きに釘付けになった。

「奥州安達原」 環の宮明御殿の段
正月になぜこんな暗い演目を持ってくるのかなと思っていたら、予想以上に陰湿でかなり疲れてきた。
そして、後半登場した英さんにとんでもなく掛け声がかかる。こんなのは初めてみた。襲名マニアみたいなものじゃないのか。しかし英さん前半の声が小さい。でも後半はよく出ていて気持ちよくなってきた。そして最後の文字久さんと團七さんで締めた。話も後半盛り上がって救われる。

「本朝二十四孝」 十種香の段・奥庭狐火の段
一方これはもう安心演目、十種香の段の津駒さんがいい。もう最近ずっとよくて、これほど感情移入してしまう太夫は他にはいない。で、寛治さんの代演の清志郎さん、特に気にならなかった。しかし、婚約者と恋人が勝頼を分からないて、そんなはずないやろ、と。でもそれが文楽やけどね。
そして狐火の段、八重垣姫の 「飛んで行きたい、知らせたい。逢いたい、見たい」、で泣かせる。
それにしても勘十郎さんの狐の動きはすごい。早変わりもあるし、とても速いし、かってに動き回ってるようにしかみえない。更に狐がとりついたかのような八重垣姫の動きも。こんなのを見せられるとやっぱり文楽いいなとなる。

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〇第2部

「染模様妹背門松」 油屋の段・生玉の段・質店の段・蔵前の段
通しはしんどいので、2部は翌日の4日に行った。「染模様妹背門松」 は初めてで、お染久松と言えば、野崎村の段で有名な「新版歌祭文」 なんだけど、染模様の改作のようなものらしい。で、これらをまとめて、お染久松ものという。この二人の心中は実話で、当時かなりセンセーショナルな反響があったらしい。そういうことから次々似たような話がつくられた。当時の文楽がいかに庶民の欲求に忠実だったかがここで分かる。
最初の油屋の段、もう番頭善六の勘十郎さんがとてもいい。楽しすぎる。心なしか善六の表情に勘十郎さんの表情も似かよってくる。とても昨日狐を八重垣姫をやっていた人と同じとは思えない。この辺がこの人のすごさだ。
そして、幸助さんの源右衛門がからんでくる。箒を三味線に見立てて浄瑠璃まで語る。どうしてもこういう場面に目が言って、正直お染久松の印象は弱かった。
次の生玉の段、「新版歌祭文」 という看板の出た小屋があって、何か話がややこしい。久松が善六を殺して井戸に身を投げ、お染もその後を追う、と。何だこれはと思っていると夢落ちだった。落語じゃないんだから、ただでさえ 「実は〇〇」 の多い文楽で夢まで持ち出すと、ストーリーがますます訳分からなくなる。
そして、質店の段で、千歳・富助登場だ。
やっぱりいい。千歳さん今日は抑え目だ。ここで久松の父親久作が登場、玉男さんだ。久松と激しくからむ。で、結局二人は別れて久作が久松を田舎に連れて帰ることになり、なぜか夜明けまで久松を蔵に閉じ込める。
そして、蔵前の段、蔵にまた、お染が一人でやってきて、久松への思いを募らせる。「ロミオとジュリエット」とか「ウエストサイド物語」とかよくある場面だけど、この場面のために蔵に閉じ込めるようにしたのだろうか。18世紀に発表された頃からこの場面はあったのか。そんなことを考えるのもまた楽しい。
そして、二人だけのいい場面に、またもや善六登場して空気が一変する。しかし勘十郎さんがとても楽しそうだ。
鍵を持ってる善六、なんやかんや言って鍵を開けさせるお染。そして入りかけた善六を久松が突き飛ばし、お染久松手に手を取って逃げて行く。ここまで。
すごい人はどんな役をしても目立ってしまう。

二日続けてみた。全体的には舞台と比べて床が弱かったように思うけれど、次の4月本公演は呂太夫襲名披露、さてどんな公演になるのか。そして今回は,狐火と油屋を幕見でもう一度みたいな。

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