2017.1.2 【お正月百年長屋の会】

 【お正月百年長屋の会】

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八聖亭の落語会が終わって、それほど時間も置かず森ノ宮に走った。本当に築100年経っている 「百年長屋」での南天さんの会だ。「気分はご参詣 」同様に、こちらも始まって三年目。それまで繁昌亭やブリーゼに行くか行かないかという話だったのが、すっかりこの二つの会が恒例になってしまった。どちらもそれほど魅力的な会なんだけど、こちらは特にこの小屋の雰囲気もまた素晴らしくて、今日も35人ぐらいだと思うけど、ぎゅっと客席が凝縮した感じで、また照明とストーブから出る色がなんともいい感じで暖かくなる。過去2年とも大爆笑だったけど、さて今年はそれを超えられるのか。

挨拶 / 南天
智丸 / 千早振る
紅雀 / かぜうどん
南天 / 質屋蔵
仲入り
南天紅雀 / アンケートトーク 「今年何としても達成したいこと」

南天さん新年の挨拶、今年も楽しい落語をたくさん聴けそうだ。

そして開口一番は智丸さん、過去二年は二人だけだったので驚いた。で、少し前にも書いたけど、この人の口跡というか纏ってる雰囲気が古の大阪ぽくて若さがないのが逆にいいと思える。浄瑠璃なんか聴いてみたい。
「千早振る」 は智丸さんで二回目。説明する甚兵衛はんの独特の間がいい。千早のすっとんきょうな声や百人一首のおかしな解釈。このキャリアでオリジナリティあふれる 「千早振る」 だ。

続いて紅雀さん、年末から奥さんの帰省で一人なので好き放題いろんな物を食べてると。なんだか楽しそうだな。そこから 「かぜうどん」、冒頭の寒さの表現がもうしつこくてくどくて楽しくて、とてもいい。そして、酔っぱらいの態がたまらなくおかしい。当然のように訳のわからない歌が登場。落語がどんどん崩れていって、冷静なうどんやのセリフで元に戻る。また崩れる。この繰り返しでどこまで行くねんと思ってると、酔っぱらいのセリフが長くなってきて噺を支配しだす。こういう流れが紅雀さんのは直感的に行われている感が強い。そして、下げ前もしつこく会話がまわる。紅雀さんは、もう弟子をとらないと言っていた枝雀さんが10年ぶりにとった最後のお弟子さんなんだけど、他の枝雀一門の方と比べるとやっぱり一番枝雀テイストのある人で、それはとてもいいことだと思っている。
直弟子の方がそれぞれ全然違うタイプの噺家さんになっていて、みなさん楽しくて、それが枝雀さんのまたすごいところでもあるのだけど。
そして、こういうフレーズを頻繁に使わない方がいいんだろうけど、やっぱり天才紅雀だと思う。

そして南天さん、世間の景気と噺家の仕事の内容は非常につながりがあって、景気が悪くなると学校寄席が増えてくる。いい時は企業関係の余興的な仕事が多くて、そちらの方が当然実入りはいい。最近はまくらで学校寄席のこと話す人多いでしょ、と。だから景気はよくない。そんな中で質屋の使われ方も昔とは変わってきてる。
そして、そこから 「質屋蔵」、てったいの熊はんは上方落語名脇役とも言うべき人物で、「崇徳院」 とかの活躍が頼もしい。しかしこの 「質屋蔵」 では実は……、という情けない部分が顔を出して、それがまた味がある。
南天さん、情けない顔がとても上手い。番頭と二人で情けない顔合戦だな。
そういえばいまふと思ったけど、丁稚なら定吉とか、若旦那なら作次郎とか、長屋の女房ならお咲さんとか、キャラを代表する名前が上方落語にはあるけど、番頭の名前てのがあまり出てこないな。多分役職名が名前の替りになってるからだろう。
そして、蔵の中での相撲のシーンが本当はシュールな場面だけど、南天さんは爆笑に持っていく。ここもいい。
下げは通常のパターンだけど、こういう考え落ちも好きだな。とてもいい 「質屋蔵」 だった。

仲入り後は南天さん紅雀さんの二人でアンケートトーク、僕は雀のおやどに変わってから一度も行かなかった 「べにてん」 を思い出した。
最初に、夢を口にしていれば実現するという話から、南天さんのブリーゼ独演会の話に。南天さん、これは夢というほど大層な話とは思っていなかったみたいだ。
アンケートのテーマは 「今年何としても達成したいこと」 僕はこういうので面白いこと書くの苦手なんだけど、やっぱり爆笑するような答えも随分あって、そら大阪の落語ファンが書くことやから当然かな。中でも多かったのが家の横に寄席を作りたいとかの寄席関係。みなさん気持ちはとてもわかるだろう。やっぱりこのコーナーは一枚の回答からお二人がどんな方向に話を展開させるのかがとても面白い。

ということで、とんでもなく楽しかった百年長屋の会・初日だった。そして明日はこの会に初めて花丸さんが登場。またどんな雰囲気になるのか楽しみだけど、浪曲の会に来た時も思ったけど、この会場独特の空気に支配される部分もかなりあるのだと思う。