2016.11.23 【いきなり九雀の日@岡町・伝統芸能館】

 【いきなり九雀の日】

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さて、いきなり九雀の日、祝日の今日は東京の浪曲師・玉川奈々福さんがゲストだ。それもあってか、とても出足がいい。いつものように開演15分前ぐらいの開場となった時には、すでに40-50人が列をつくっていた。
入場すると定式幕が閉められていて、その向こう浪曲の演台はどんな設定になっているのかなと思う。開場後も続々と人が詰めかけ最終的には60~70人ぐらいになったのだろうか。

九雀 / ウェーブソング
小留 / 軽業講釈
奈々福 / 陸奥間違い  曲師:沢村さくら
仲入り
九雀 / 質屋芝居
 
三味線 / 岡野 鏡

九雀さんの 「ウェーブソング」 は、去年9月に八聖亭で 「九雀奈々福二人会」 があった時、九雀さんが小佐田さんに発注したという浪曲根問のような噺だ。 大阪で観光していたジャックが友人のツトムにもっと日本らしいところに連れて行ってほしいと言って、結局銭湯に行くことになる。で、そこで出会ったのが浪曲おやじ。
九雀さん浪曲の代表的な演目をうなる、うなる。そしてなんでも浪曲にしていしまう。フォーチュンクッキーとか。
浪曲の歴史とかもさらって、これを聴けはそのまま浪曲入門になっているような噺だ。よく出来ている。

続いて、本来前座の小留さん。「軽業講釈」はハメモノ入りまくる噺で今日の趣向か。まず大きな声が必要な噺だと思うけど、よく出ていた。ただ、何度も繰り返していると少し飽きてくる。ずっと楽しく聴ける人と比べるとちょっと粗いのかな。まあ、若い人だしこれからもっとよくなるだろう。

そして、いよいよ奈々福さん。もちろん 「待ってました!」 と声が掛かる。最近段々分かってきたのだけれど、浪曲ファンというか、浪曲そのものが落語に比べるとフリーだな。掛け声、拍手、諸々。客席と演者が自由にコミュニケーションをとっている。一番盛り上がる場面で 「日本一!」 と。そこで、誰にでも言ってるんやろ、と突っ込みたくなるのが落語ファンだ。まあ、僕はどっちも好きだけどね。
今日の演目は 「陸奥間違い」、噺の内容は年末の金策にこまった下級武士が田舎から出てきたばかりの奉公人に借金申し入れの手紙を届けるよう命じたが、陸奥守違いでそれが伊達家に届き大騒動が持ち上がるというもの。なにやら落語的なストーリで楽しく聴いていたけれど、後で調べてみたら、江戸落語の演目にもあるらしい。ぜひ一度聴いてみたいな。
しかし、奈々福さんいい声してる。さくらさんの撥も気持ちがいいリズムだ。浪曲の人はどんな小屋で聴いても声がストレートにスパッと届く。これを受け止める快感が浪曲を聴く醍醐味だと思う。そしてお二人とも、ここのきれいな舞台にとても映えていた。

仲入り後は九雀さん 「質屋芝居」、忠臣蔵三段目刃傷の場がモチーフになっている。九雀さんで 「質屋芝居」 は初めてだけど、質屋蔵とか他の芝居噺では振りの大きさと所作の切れ味が印象的で、とても聴いていて気持ちが良かった。今日も同じで質屋芝居は上方の芝居噺の中でも芝居部分がかなり多い方で、達者な人でないと聴くのがしんどくなることもある。今日はもちろんすごくのせられた。九雀さんも持ちネタの多い人だからなかなか芝居噺に当たらないこともあるけれど、もっと聴きたいな。

そして今日改めて感じたのは三味線の岡野鏡さんがとてもいい音出してた事だ。いつもいいんだけど、今日は特にそれを感じた。軽業講釈、そして質屋芝居では唄もいろいろ入るけどこちらもいい声だ。浪曲とのコラボの会だったけれど、先がとても楽しみな人だと思う。

ということで、今日もとてもいい会だった。二時間弱だったけれど十分堪能した。最後に九雀さんから話があって、設備修繕のため12~1月にここが使えなくなると。それでここでやってる他の会もスケジュールがイレギュラーになってきてるんだな。地元でもあるし、いいホールだしこれからもずっと落語会を続けていってほしい会場だ。