2016.11.18 【たまの微笑落語会@高津の富亭】

【たまの微笑落語会】

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たまさんが古典ネタおろしをする 「微笑落語会」、爆笑がないから微笑らしい。で、たまさんはこのチラシには初心者向きではないと明記している。そんなマニアの集いに今日も50人弱ぐらいがつめかけた。
でも本当はいつも爆笑だし、初心者でも楽しめると思うけどね。
そして、今日の注目は 「鰍沢」、ご存知笑いどころのほとんどない、サスペンス落語ともいう噺だ。この江戸落語をたまさん、バカバカしい噺に仕上げた言っていて、どうすればそんな仕上がりになるのか、「鰍沢」を聴いたことある人ほどみなさん気になっていたようだ。

遊真 / 時うどん
たま / 浮世床
生寿 / 七段目
たま / 鰍沢
仲入り
たま / 抜け雀

遊真さん、今年の6月にたまさんの会で聴いて以来二度目、だけど入門一年半のキャリアにしてはきっちりした 「時うどん」、声もいいし、イケメンかもしれないし、遊方さんのお弟子さんだけど楽しみな若手がまた一人。上方若手もかなり層が厚くなってきているのでは。

たまさん、一席目は東京のまくらは嘘が多いという話、確かに本当の話をしている最中にシラっと嘘を混ぜてる気がする。大阪の場合はもっと盛大に嘘をついて、「本気にしたらあきませんよ」 と落とすのが定番だけど。
そこからネタは 「浮世床」、抜いたひげで富士山描いたり、王手がかけれない将棋とか、講釈本のひらがな読みとか、人寄り場所でのたわいのない会話がテンポよく繰り出されて爆笑。相当楽しい「浮世床」 だった。

続いてゲスト枠で生寿さん、今年で入門10年目ということで、たまさんには入門当初からお世話になってると。で、たまさんの悪意のないデリカシーのなさについて話す。繁昌亭近くのうどん屋の一件、小浜の塩さば定食の一件、そして楽屋での今日掛けるネタについての会話。どれもいかにもたまさんがやらかしそうなことで、客席爆笑。そこに楽屋口にいたたまさんから生寿さんに「お詫びの一声」 これで、一層大受け状態になる。
そこから 「七段目」、生寿さんの芝居ぶりが素晴らしくて、それまで笑い倒してた客席が一気に高座に集中しだす。所作、声、切れ味、押し出しすべて良くてのめり込んだ。若手で芝居噺ここまでできる人はちょっといないと思う。ホントにいい「七段目」 だった。

たまさん、二席目は注目の 「鰍沢」だ。ほとんど笑いどころのないこの噺をたまさんどう料理したのか。
この噺は当然江戸落語なわけだけれども、身延山に参ったおり、雪が深くて道に迷った旅人がようやく明かりのついた人家を見つけて助けを乞う。そしてそこに住むわけあって江戸から逃げてきていた男女二人のうち女のお熊が悪人で、大騒動が持ち上がるというもの。
身延山久遠寺日蓮宗の総本山で、「南無妙法蓮華経」 のことをお題目という。ここまでが「鰍沢」の基礎知識だ。
たまさんこれを、上方から総本山にお参りに行って道に迷ってたどり着いた人家には、上方からわけあって逃げてきた男女が住んでいたという設定に直した。そこからのストーリーはほとんど同じなんだけど、元々のサスペンス巨編でこの後どうなるのかという雰囲気は影を潜め、すっかり爆笑噺に変貌していた。たまさん、どうしたかというと金のやりとりとか、毒薬がらみのところとかに小ギャグをポンポン入れていった。「毒きいてくるんとちがうのか。いつまでベラベラしゃべってるねん」 とか、毒消し蹴とばしてどうこうとか、その都度笑いがおきると、実はこの噺はもともとバカバカしいのではと思えてくる。そして最後に鉄砲持って追いかけるお熊の絵を想像すると全編ギャグみたいになってくる。下げは通常のお題目とお材木。
たまさんの着眼点の見事さだな。噺の筋は変えずに見事に爆笑噺に変えてしまった。ぜひこれを東京でやってほしい。

仲入り入って最後はたまさん、珍しく 「鰍沢」 を少し自我自尊。快心の出来だったんだろう。吹き替え版だと。
そこから 「抜け雀」、いきなり二階の客から酒代だけもらってこいという夫婦の会話から入る。たまさん得意の冒頭ばっさりだ。 これも嫁が主人をあおるところが楽しくていい落語になっていると思うのだけれど、冒頭以外にもカットされた部分があって、「抜け雀」 を聴いたという満足感があまり伝わってこなかった。普通に面白い噺ではあるんだけど、「抜け雀」というと、何て言うかブランド的な部分もある噺なのでね。でもそれがたまさんの古典ということでもあるんだけど。

今日はとにかく「鰍沢」だ。いい会だった。たまさん、来年はこの微笑落語会に変わるパワーアップ落語会てのを一年間の日程含めて発表済みで、微笑は次の12月で一旦最終回になる。その日程が少し前に出たけど、先約があって行けない。それがただただ残念だ。