2016.11.14 【桂りょうば年季明けの会@動楽亭】

【桂りょうば年季明けの会】

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さて今日二つ目の落語会は、動楽亭のりょうばさん年季明けの会。数か月前に1年での独り立ちが発表されて、今日晴れてこの日を迎えた。梅田の雀三郎一門会が終わったのが16時45分ごろ。そこから急いで着いたのが17時10分ごろ、すでに階段には十数人が並んでいた。
そして、チラシにはざこば一門プロデュースとしかなくて、りょうばさん以外の名前は誰もない。内容もよく分からないまま開場したら、高座の名ビラにはざこばさんの名前が。一体どんな趣向の会になるのか期待しながら開演を待った。

ざこば / ごあいさつ
りょうば / 子ほめ
わかば / 看板の一
塩鯛 / 上燗屋
大喜利 / (司会) あおば   りょうば、小鯛、そうば、鯛蔵、ひろば
      なぞかけ 数え唄 
仲入り
出丸 / 寄合酒
りょうば / 貧乏神

ざこばさん、スーツ姿で登場してりょうばさんの話をいろいろ。もちろんりょうばさんが子供の頃から知ってるわけだけど、特に東京中心にアマチュアとして落語始めてからは何度かもうプロになれと言った。それで、ようやく踏ん切りついたと弟子入りの申し出あったのが去年の夏、その時彼は43才でもう遅いと。でも熱意と覚悟を感じたので入門を許可した。1年での年季明けは前例がないけれども、これまでのキャリアや年齢を考慮して決めたと。
ざこばさんのりょうばさんへの、そして亡き兄弟子枝雀さんへの愛が感じられる語りで、いい雰囲気を醸し出して高座を降りた。

そして上がったりょうばさん、名前を頂くにあたっていろんな声があったけれども、一目でざこばの弟子だとわかる名前をつけてくださいと師匠にお願いした。本当に師匠に弟子入りして、ざこば一門に入ってよかったと。
すごく素直にしゃべってる感じで客席も暖かい空気につつまれて、そこから 「子ほめ」
リズム、テンポ、口跡、表情、明るいし楽しい。かつきっちりしてる。言わば理想的な前座噺で後につないだ。

続いてわかばさん、一門のおめでたい会なので、気を上げる様子が感じられるまくらで客席もそこそこ受けていたけど、正直僕はこの人のエクスキューズの多い高座があまり好きではない。

次は塩鯛さん、もちろん一門の惣領弟子として、修業時代のことやかつて枝雀さんんとラジオで共演してたころのりょうばさんとの思い出なんかを楽しく聴かせて 「上燗屋」へ。
塩鯛さんのいつも余裕をかましたような高座が好きなんだけど、今日は店主の出した燗酒を 「あついっ」 て顔しながら、大分飲んでから埋めてくれと差し出すところが細かくてよかった。

仲入り前に大喜利、司会があおばさん、で、左から年季順に、りょうば、小鯛、そうば、鯛蔵、ひろば、と並ぶ。
りょうばさんは出る予定はなかったけれど、師匠命令で急遽並んだらしい。
ガヤガヤと賑やかしい中、なぞかけから。客席からとったお題は、トランプ・雨・アベノミクス
ひろばさんから速攻で手があがり、見事に解く。さすがは高津メンバー、この中ではレベルが違うか。
そしてもう一つの遊びはおなじみ数え唄で、りょうばさんが人間国宝になるまで。
その後も楽しく続く。司会のあおばさんのボケっぷり可笑しいし、真ん中の三人が中心になって盛り上げる。役割がほぼ決まってるような予定調和が面白かった。でも今日の大喜利狂言回しは鯛蔵さんやな。

中入り後は出丸さん、また修業時代の話を。米朝全集のCDで覚えて失敗したこととかで爆笑。まくらは以前から面白いと思ってたけど、今日の 「寄合酒」 はなかなかだった。犬に鯛食らわす場面での早口がいい。

最後は再びりょうばさん、突然出ることになった大喜利のなぞかけで答えを出せなかって、それを今言えればよかったんですけど、出なかったと。大喜利は当面仕方がないか。
そこから、最初にざこばさんが言ってた入門の覚悟、踏ん切りについて語る。とにかくこの一門に入れてよかった。今日は何度もこの話が出てきたけれど、 本音なんだと思う。これからはさすがはざこば一門と言われるような噺家になりたいと。そこからネタは 「貧乏神」、
この噺はもちろん枝雀さん、そして最近では南天さんが印象的だけど、りょうばさんのは、きっちりしているのかまだまだ育っていく貧乏神だった。
僕はりょうばさんアマチュア時代には三度ほど聴いただけで、プロになってからも今日で聴くのは三回目、随分前から注目はしていたのだけど、聴く機会は非常に少なかった。アマチュア時代に聴いた時はうまいなと思った。
プロになってからの二席は開口一番てこともあり十分じゃないかと思った。だけど今日は一人前の噺家としてみた場合、不満も感じた。押し出しが弱いというか、線が細いというか、落語にしても大喜利にしても先輩とのキャリアの差が結構みえていたと思う。
だけどそれは仕方のないことで、時間が解決すると信じている。とにかく自分の落語を構築していってほしい。

今日の会はいい会でいい一門てことにつきるのだけど、りょうばさんにはもう一つ、枝雀一門との付き合い方てのもあると思う。自分が小さいころ一緒に過ごしてた人達だから、本籍と現住所というか、そんな機会もこれからあってほしいし、その時にお互いどんな反応になるのか。枝雀一門の人達がりょうばさんを通じて師匠をまたどう語るのか、とか、興味はつきない。

とにかく上方落語にとって、桂りょうばという、この先とても楽しみな噺家がひとり誕生したということだ。