2016.11.10 【錦秋文楽公演・第2部@国立文楽劇場】

【錦秋文楽公演・第2部】

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一昨日の1部に続いて今日は2部だ。もちろん勧進帳が楽しみなんだけど、あと二つの演目も評判がなかなかいい。毎年11月は通し狂言の月だったので発表された時は少し不満だったけれど、いざ観ると昼夜三つずつていうのも悪くない。まあ、まだまだ文楽5年目の初心者だからそう思うのかもしれないけどね。
そんなことで、16時からという、いつもながらなんとも中途半端な時間から開演だ。

〇増補忠臣蔵  「本蔵下屋敷の段」
加古川本蔵を主人公にした、忠臣蔵のサイドストーリーというか、スピンオフというか、浄瑠璃でこんな作品があるの知らなかった。増補物、て言われるらしい。
睦さん、派手な場面じゃないけどすごく安定して声が出てる。とっかかりの口演はこういうの大事だと思う。
で、何といってもちょちょかる伴左衛門、三千歳姫にちょっかい出したり好き放題の振る舞い。決してそんなことないと思うけれど、玉佳さんの表情が伴左衛門とリンクしてるように思えてきた。
切場は咲太夫さん、そして燕三さん。咲さん一言一言がくっきりと伝わる。そしていつもながら燕三さんの合いの手すごくいい。一声出して撥を入れるのが、ジャズっぽいリズムに聴こえて仕方がない。

〇艶容女舞衣  「酒屋の段」
最初は希さんと清𠀋さん。とてもいい声、いい音だ。しっとりとして艶がある。
小さな子供を抱いた女が酒を買いにきて、丁稚と一緒に出掛けることに、で、丁稚に子供を預けたまま行方知れずになる。床は文字久さんと宗助さん、静かに進行する。特に宗助さん、小さくて少ない音でつないでいくんだけどそれがまた効果的だ。そして人の出入りがあった後に、お園とその父宗岸登場。お園はもちろん勘十郎さん。酒屋の息子半七がお園亭主なんだけど、女作って入り浸りで怒った宗岸がお園を連れ帰るも、萎れるお園を見かねて詫びを入れに来た。ところが半七は勘当中でもう関係ないと、父親半兵衛は取り合わない。で三人で奥で話し合うと、お園一人が取り残される。ここで嘆き悲しむお園、床は津駒さんと寛治さんになっていて、勘十郎さんが舞う、お園が舞う。後姿でそるところ、悲しみがピークに。ここが最初の見せ場だ。
津駒さん、いつもよりは抑え目だけどそれがまたお園の悲しみを増幅させる。
そして子供の着物の中に手紙発見。この子は半七とその女三勝の子で、人を殺した半七は三勝と一緒に死ぬ気になってる。手紙を廻し読みしてまた悲しむお園、「未来で夫婦に」と半七の言葉。また切ないお園。
ところがその時 (これは文楽の必須フレーズ) 店の外には半七と三勝が様子をうかがっている。
お乳も出ないと半兵衛の妻、「乳はここにある。飲ましてやりたい」 と三勝。入りそうになるのを止める半七。
もみあうも半七、三勝を連れて立ち去る。ここもいい場面だ。お園と三勝、半兵衛女房、女三人の感情が入り混じる。でもここではお園は少し冷静に見えた。三勝が不憫だから。三勝は簑助さん、こちらもとてもいい。
初めてだったけど、心揺さぶられた。

そしていよいよ勧進帳、いきなり太夫と三味線が七人ずつ並んで壮観だ。最初からテンションが上がりまくる。
直ぐに富樫登場、和生さん、そして咲甫さんだ。どちらもいいな。
続いて弁慶とそのご一行、弁慶は三人出遣いだ。玉男さん、玉佳さん、足は…なかなか顔が見えない。太夫は千歳さん、義経は芳穂さんと清十郎さんだ。
富樫と弁慶の初対面の場面、緊張感が走る。勧進帳読み終わり、弁慶が巻物を元に戻す場面、一瞬緊張が緩みかけるも、富樫がたたみかける。弁慶即座に答える。富樫尋ねる。弁慶答える。咲甫さんと千歳さん息詰まるやり取り。舞台も床もどんどんテンションが上がる。何度も繰り返される問答。むちゃくちゃいい場面。富助さんもいいリズムで撥を入れる。役者が揃うとは正にこのことだ。
でも、気持ちが高揚しながらも、「なんか、餅屋問答みたいやな」と思ってしまう落語ファンの性。それは仕方がない。もひとついらんこと言うと、咲甫vs千歳の顔芸対決もとても楽しかった。
そして一旦通行を許可する富樫、立ち去ろうとする一行、強力姿の義経を見て止める富樫、義経に似ていると。
ここで弁慶、弁明のため主君の義経を打つ、木刀のようなもので何度も打つ。この場面見ていてつらい。
分かったと富樫、去ってゆく一同。場面変わって背景が海に。目的のためとはいえ、主君を打ち続けた弁慶のやりきれない気持ちが描かれる。そこへ追いかけてきた富樫が無礼の詫びに酒を献上すると。
「ほんまか富樫、まだ疑ってるん違うの?」とか、 「壺算の店主みたいなもんで」とか、また落語ファンがいらんことを言う。
盃を受けた弁慶が舞う、これが見ていてなかなか気持ちがいい。そんななかでも義経たちを先に行かせる弁慶。ここで一同花道から先に行く。残った弁慶が最後に飛六方で去ってゆく。
ああ、もう全部持っていかれた。だけど、最後の弁慶は僕は上手の方に向かってまた後ろを向いて六方で去っていくと思い込んでたのだけど、今回は前を向いて去っていった。てことはこの場面に限っては、下手幕見席や二等の花道まわりが特等席になる。覚えておかなくては。

大満足の2部だった。そしてこれからは文楽観た時もブログ書くようにするつもりだけれど、こんな感じになる。難しいことや専門的なことは書かない。また書けないけれど、自分の気持ちに正直に書くとこうなるんだ。
文楽は本当に楽しい。