2016.6.15 【笑福亭たまの実験落語会 ・ナイトヘッド<結>@動楽亭】

【笑福亭たまの実験落語会 ・ナイトヘッド<結>】

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たまには高座アップ

結果的に4回で終わることになったこの会、たまさんがプログラムで 「実験落語会といいながらあまり実験にならなかった」。みたいなこと書いてたけど、実験かどうかは別にして、この会はすごく楽しかったし、たまさんの他の会ともまた違っていたし、できるならこのまま続けてほしいな、というのが今日のお客のほぼ総意だと思う。
最近いろんな会の動員数をかなりの確率で的中させるというたまさん、今日も80人と呼んで設営したのがほぼ的中する大入り。しかも約60%が女性という椅子席一番前で観ていても華やかな光景で始まった。

遊真 / 子褒め
米紫・たま / (トーク
たま / ひとり大喜利ガマの油
米紫 / 宗論
たま / お玉牛
仲入り
たま / 崇徳院

遊真さん、遊方さんのお弟子さんで 「ゆうま」 と読む。入門2年目で僕は聴くの初めて。でも落ち着いてるし口跡もしっかりしてる。最近の上方の若手はこういう感じの人多い。年季明けまではこれで十分だと思う。
また、先の楽しみな人が一人。

続いてここでトーク。この会はトークが早い。で、冒頭からたまさんが2号店の話を振る。たまさんなりの分析、なかなか興味深かった。客席からも「ほーおっ」と声が。そこから今の前座の話になって、あいさつとかの話題に。ここでもまた、笑福亭と米朝一門の違いが結構はっきりする。まして当時は繁昌亭がなかったからなかなか別の一門と会う機会も少なかったのだろう。お二人は上方では中堅というポジションになるのだろうけど、江戸なら若手真打。どっちのシステムがいいのかなと、いつも思う。
でも楽しいトークだった。この二人のように少しだけ年季が違う対談が一番リラックスしてること多い気がする。

たまさん、一人大喜利はなぞかけ。お題は「東京都庁」「笑点」「新作落語
目の前で考える。その間は師匠連の出囃子が弾かれる。今日はざこばさん、塩鯛さんともう一人誰やったかな。
一人で考えてるたまさんみるのも面白い

続いて一席目はネタおろしの 「ガマの油」 。僕はこのネタ基本あまり好きじゃない。それは、やっぱり型にはまった部分が多くて演者によって変わる部分が少ないから。でも、今日のたまさんはそういうイメージを完全に壊してくれた。大爆笑で見事なネタおろし。今まで聴いた 「ガマの油」 でベストだと思う。
何が違うかっていうと、たまさんのはそのへんの酔っ払いが、なぜかガマの油を売ってる感じ。他の人のはガマの油売りが酔っぱらった感じなんだ。そんなに酔ってない、仕事だから少しブレーキかけてる。たまさんのはそういうの関係なくベロンベロンで仕事を忘れてる。そんな壊れっぷりがすごかった。すぐにでもまた聴きたい。

次は米紫さん、いつも思うけどお辞儀のきれいな人だ。で、前でたまさんがこれだけ受けたからあのネタかなと思っていたら、福岡の米朝一門会帰りの新幹線の中でのざこばさんの話。いや車内販売のお姉さんのざこばさんへの対応は見事というしかない。
そして、あのネタじゃないのかと思っていたら、宗教とは…。この一言で客席どよめく。米紫さんの会でもないのに。てことで 「宗論」。これで聴くのが7回目だ。いつも言ってるけどもう爆笑、今日も受けまくる。
たまさんが自分の会であれだけ受けた後にこれだけ空気を変えれるのはさすがと言うしかない。
噺家対抗鉄板ネタ選手権みたいなのがあったら、僕の中では今は米紫さんの「宗論」がグランプリだ。

たまさん二席目は「お玉牛」。野崎で登場、聴いた気になっていたけど実は初めてだった。何度か聴いたのは「親子茶屋」の方。で、たまさん今日は春団治さんのモノマネはなし。やっぱりないとさびしい。
でもこれだけネタおろしじゃないのでなんか最初から余裕だった。わちゃわちゃ噺を終始楽し気に。
手でみせた牛のサイズが意外にもかなりでかかった。

ここでようやく仲入り

最後は崇徳院、「師匠とよく話すんですが、崇徳院とか花筏とか餅屋問答とかは誰がしても面白い。だからその面白いポイント抜くわけにいかない」と。やっぱりたまさん得意のばっさりが難しいのか。
確かに誰がしても面白い噺てのがあって、例えば「秘伝書」とか、噺にパワーがあるんだけど手を入れにくい。
「秘伝書」は最近南天さんが手掛けていて、徐々に南天さんの形が出来上がりつつある。
崇徳院」は好きな噺だけど、古典の王道的な噺であって、しかもかなりドタバタの場面もある。言ってみれば理想的な形に出来上がった落語だと思う。それにたまさんが手を入れる。
熊はんと相手の番頭みたいな人が同じこと言われる件とか血飛沫の膝掛とか、たまさんが入れ込んだところ全部面白かったけど、僕は昨日に限っては「崇徳院」の様式美が少し崩れているように感じた。僕は「崇徳院」にはそういうことを意識する。やっぱ古典は面白ければなんでもいいというわけでもないと思うし、これからのたまさんの「崇徳院」をもっと聴いていきたい。

てことで今日もいつも通り、たっぷりだけど、もたれないたまさんの会だった。ところで、今日なにも言わなかったけど来月からネタおろしはどうするのかな。8月は高津や大須や怪談噺で忙しそうだし、ちょっと休むのかな。
まあ、落語についてはあまり休めない人だと思うけどね。