2016.6.12 【笑福亭三喬独演会@西宮芸文中ホール】

笑福亭三喬独演会】

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数年前からこの時期に地元の西宮で開かれるようになった三喬さんの独演会。今日も800キャパが完売でやっぱり力のある人は違うなと。そして今日の東からのゲストは鯉昇さん、こちらも楽しみだ。今日はあちこちで色んな落語会が開かれているけれども、ここを選んでよかった、という結果になるよう期待した。
ていうか、ここのチケット販売5~6カ月前からスタートするので、おさえた後に色んな会やイベントが登場して心がザワザワすることが多い。せめて3カ月前ぐらいにできないのかな。

喬若 / いらち俥
三喬 / ぜんざい公社
鯉昇 / 千早
仲入り
銀瓶 / 天災
三喬 / 質屋蔵

喬若さん、いらち俥は何度か聴いてるけど、この噺はやっぱり二人の車夫の対照的なメリハリの面白さだろう。そういう意味では少し物足りなかった。というか体力的にキツいネタになってきているのか。

三喬さん、おなじみ婚約証明書を松喬さんに書いてもらった話で爆笑させてから 「ぜんざい公社」
最近聴く機会が減っているように思うのだけど、こういう新作でも三喬さんは抜群の安定感で受け続ける。
役所の職員の杓子定規な対応がいちいちおかしい。

中トリは東京から鯉昇さん。この人、6年前に繁昌亭で福笑さんとの二人会があって、正直その時まで名前も知らなかったんだけど、二席聴いてすごいと思った。それからも何度か聴いてるけど関西では聴く機会が多くない。今回のもう一つの目的はこの鯉昇さんだった。
上がって、しばらく無言の間、5~6秒ぐらいだろうか。そして 「舛添要一です」。
今は、最強のつかみだ。おそらく大半の人が鯉昇さんの事知らない中で、一言で客席をつかんでしまう。これもすごい技だな。そこから南千住の話とかしてるんだけど、なんかずっとふわふわしててやっぱり独特の空気のある人だ。で、ネタは「千早ふる」。張り出しには「千早」となっていたけど、モンゴルが登場したり自在の改作で大爆笑。でも口跡がすごくきれいなことに気付いた。
そして、なかなか個性的なお弟子さんが育ってるようだし、一度上方で一門会してくれないかなと。

仲入り後は銀瓶さん、鶴瓶さんと中居くんと岡村さんと熊本に行った話。鉄瓶さんも一緒だった。そして売れてる人の力をまざまざとみせつけられた。最後は二人が素人と間違われたと。やっぱり売れなあかん、と力説。
売れる売れないてのは落語ファンにとっては難しい問題だな。基本僕らはまず落語をライブで聴きたいわけで、それ以外は二の次だから。
ネタは「天災」。すごく勢いがあって楽しい。ざこばさんテイストが強かった。まるでざこばさんがしゃべっているように感じたのも何か所かあった。下げが少しちがってた。

最後は三喬さん、何がかかるのか注目だった。だいたいこういうホール落語ではネタ出しの方がずっと多いと思うのだけど、今日はすべて出ていなかった。出すか出さないかは何を基準に決めるんだろうか。聴き手としてはどちらも悪くないけど、僕は出てない方が好きだな。
そして、質屋のシステムについての話が始まった。月替わりとか利上げとか、なかなかここまで詳しい話をまくらで聴いたことはない。
そこから 「質屋蔵」。この噺も本筋から外れる熊はんが本家からいろいろちょろまかした件が面白い。他にも「近日息子」の謝らない男とか「くやみ」ののろけとか、本筋を忘れそうなほど長々と脱線する噺があるけどこういうところをだれずに爆笑させ続けるのはなかなか難しいと思うのだけど、三喬さんは「近日息子」でもそうだけど抜群にうまい。同じトーンでなく段々上げていく呼吸がいい。きっちりした、江戸で言う本寸法な落語でしかも爆笑が続く。理想的な形で締めた。

三喬さんは、僕は近い将来「上方の大看板」と呼ばれるようになると確信している。で、同じ年代でこういう人が後3~4人いれば上方落語の将来は安泰だと思うのだけど、なかなか難しい。800人のホールで独演会して余裕で完売できる。そういう意味ではやっぱり人気も大切だ。