2016.5.20 【島之内寄席5月席・繁昌亭大賞受賞者の会@大阪市立中央会館】

【島之内寄席5月席・繁昌亭大賞受賞者の会】

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「島之内寄席」は、1972年に島之内教会で上方落語の定席として、当時協会会長六代目松鶴の肝いりで始まった伝統の寄席だ。その後場所を転々とし、日程も月一度まで縮小されながらも44年間ずっと続いてきた。
で、先月の4月席からまた会場が変わり中央会館という本来の島之内エリアでの開催となった。この「島之内寄席」については以前から言いたいことがあるのだけど、それは後にして、繁昌亭大賞各賞受賞者を並べたいい顔ぶれの今日の落語の話から。

二乗 / 阿弥陀池
たま / ぐつぐつ
吉弥 / 蛸芝居
仲入り
米紫 / 宗論
菊丸 / 幸助餅

二乗さんといえば、というくらいおなじみなのが「癪の合い薬」で、こういう出番で他のネタが出ているのが意外な気もしたけど、「阿弥陀池」もよかった。二乗さんの落語はとにかく明るくて、きっちりしていて、聴きやすい。こういう記念落語会のトップにはぴったりだ。当然確実に客席が暖まった。

次は早くもたまさん。でも年季で言えばそうなる。今日の会について繁昌亭大賞各賞の受賞者を2000円で聴けるのはとてもお得だと。ひょっとして、これたまさんの企画なのかな。チラシも創ってるて言ってたし。サブタイトルもどこかでいつも見てる感じだし。
この後ネタに入るのかと思っていたら、会長選挙の話に。どこでもするな。面白いけど。
で、ネタは「ぐつぐつ」。おでん鍋の中の具材を擬人化した東京の小ゑんさん作の噺だ。たまさんで聴くの4回目で、いつも楽しいんだけど今日は小ゑんさんでこの噺をとても聴きたくなった。たまさんとはかなり印象が違うと思うし。たまさんのはやっぱりこんにゃく系が好きだな。

続いて中トリは吉弥さん、ネタ出しに関係なく 「とと姉ちゃん」 の噺が始まったので、一昨日と同じ展開かと。
てことで宇多田ヒカルの曲を今日も1コーラス聴くことになった。早く本家の方を聴かなくては。
噺は「蛸芝居」、吉弥さんでは初めて。噺を穏やかに展開させて客席をほわっとした空気で包み込むのが吉弥さんの落語の持ち味だと思っているので、こういうエキセントリックな噺になると少し戸惑う。蛸の顔が最後まで似合うように感じられなかった。

仲入り後は米紫さんから。前名の「都んぼ」にまつわる定番まくらで爆笑。
ネタ出しの「宗論」は10日前にも聴いたけど、やっぱりすごいな。米紫さんで聴くの6回目で、その都度絶賛してるから誉め言葉がなくなりそうなものだけど、今日感じたのは膝の動きとかも含めた所作としゃべりが気持ちよくシンクロしてるてこと。で、どっと受ける大きな所作だけでなくて、手足のちょっとした動きに客席が細かく反応しつづけるのもすごい。ずっとそんな状態が続く。もちろんしゃべりもいろんな間が出てきて、その間に合わせて手がでてくる。米紫さんのすごいところはそれらの一連の動きとしゃべりが本能的な動物的なアクションのように見えることだ。これだけほめていても次聴けばまた新しい発見があるのだろうか。いやきっとあるんだろう。

最後は菊丸さん、高校野球が好きだと。それで、ABCで解説に出てくる現役の著名高校の監督が面白いと。
確かに爆笑だった。少しはデフォルメしてるんだろうけど。しかし今日はネタと関係のない爆笑まくらが続く。でももちろん、それはそれで楽しい。
噺は「幸助餅」。聴いた気になっていたけど意外に菊丸さんでは初めて。30両を何につかったのか叔父に問い詰められた時の幸助の困惑ぶりがかなりダメな奴にみえた。僕はこの幸助は最終的には餅屋で成功するんだけど、本来ダメな奴だと思っているのでこういう感じの方がしっくりくる。幸助餅で一旦うまくいっても、また失敗するかもしれない奴に描くのは難しいだろうけど。

そういうことでリニューアル最初の有料公演は楽しく終わったけれども、従来からこの「島之内寄席」は協会員に順番に出番をふっている感じでほとんど魅力のない番組が多かった。だからたまにしか行かなかったんだけど、今回6月7月席の番組をみていると少し変わってくるのかなと感じる。ぜひこういう組み方を続けていってほしい。それと定席だというのならせめて三日でもいいから公演日を増やせないのかな。
そして、今回島之内に戻ったてことでの疑問は、それならどうして故郷の島之内教会に戻らなかったのか。去年の12月に吉弥さんが島之内教会での連続6日公演を成功させていて、僕も2日行ったけど落語をするにはすごくいい建物だった。それならもっと話題になっていたのにと思うと、それが残念だ。