2016.5.10 【繁昌亭昼席・仁智 新治 文化庁芸術祭優秀賞受賞記念ウィーク】

【繁昌亭昼席・仁智 新治 文化庁芸術祭優秀賞受賞記念ウィーク】

今日はずっと雨だったから写真はなし。
長いタイトルの今席、仁智さん、新治さんが去年文化庁芸術祭の優秀賞を受賞したことを記念する週だ。
そして、前座以外の演者のみなさんも、この関係の何らかの賞を過去に受賞した人達ばかりで組んでいる。
そら豪華なはずやわ。こんな顔ぶれの昼席なんて年に何週もない。発売日に速攻でおさえて楽しみのしていたのが、いよいよ開演だ。

華紋 / 普請ほめ
佐ん吉 / いらち俥
文華 / 八五郎坊主
小二三 / 山崎の合戦~天王山~
米紫 / 宗論
仁智 / 源太と兄貴
仲入り
口上 / (司会) 文華、新治・仁智・小二三
三三 / 元犬
英華 / (女動楽)~踊り・こうもり
新治 / 中村仲蔵

華紋さん、普請ほめは何度も聴いてるけど今日がベストかと思えるほどトントンとリズムよくすすむ。今日の顔ぶれならこの後いい寄席になるのがかなり期待できるので、そんな当席では前座もいつも以上に大切。華紋さんなら十分だろう。早く文化庁芸術祭の新人賞をとっていただきたい。

その新人賞を受賞している佐ん吉さん。NHK優勝以来定番のまくらで拍手!拍手!拍手! 客席もよく分かっている。 そして、昼席での優勝記念ウイークの開催を希望。この秋に今年の受賞者が決まるとできなくなると。
また客席も後押しする。近いうちに実現する気がした。
噺は「いらち俥」、この噺に出てくる二人の車夫のうち、やはり後の勢いのいい方がメインになる人多いのだけど、佐ん吉さんは先のじいいさんぽい疲れた車夫がとてもよかった。その辺がこの人の個性だろう。元気な方の引き立て役じゃなくて、きっちりと可笑しみが表現できていたと思う。

次は文華さん、華紋さんの師匠になる。華紋さんが一番弟子だけどいいお弟子さんを育てたはるなと。
文華さん自体はあまり聴く機会がないのだけど、そんな中でこれも聴く機会の案外少ない「八五郎坊主」。
落語には宗教、坊主をおちょくったネタも多いのだけど、この噺米つぶのところのしつこさがいいな。
この人も口跡のリズムが流れるようだ。ただちょっと声が不調だったのかな。

続いて去年新人賞を受賞した講談の小二三さん、初めてだったけどなかなかいい。講談師は東では女流が随分台頭してきてるけれども上方はまだまだ少ない。そんな話、また講談師自体が少ないことを話題にして「山崎の合戦」。僕は落語と比べれば講談や浪曲の方が芸の上での男女の差は少ない気がするのだけど。
小二三さん、言葉の切味いいし、結構ピタッと決まるし、上方でも女流講談師続いてほしい。

米紫さん、東京と大阪の違いのについてサラッと話して、そこから日本と外国の宗教観の違いに話がとんだ。
もうこれで今日のネタはわかった。
「宗論だ」、米紫さん、寄席の出番でそれまでの流れがすごくいい時はかなりの確率で「宗論」を掛けてると思う。
米紫さんのは「主、イエス、キリストは」というところの間と所作だけでもこの噺聴く価値あると思う。落語は口だけじゃないてのが本当によくわかる。米紫さんで5回目だけど、常に宗論だとわかった時点でうれしくなる。

中トリは仁智さん、米紫さんに続いて東京大阪のまくら、これは大爆笑さったけど、そこから野球の話に入っていき客席は依然大爆笑なんだけど、僕はこれは「スタディベースボール」の流れだと嫌な気がしてた。正直完全に飽きている噺で今更設定も古すぎて笑えない。まあ、受けるから単に僕のわがままなんだけど。
そしたらなぜか「源太と兄貴」。これも度々聴いてるけれどまだ爆笑できる。
でも、面白いネタやまほどあるのになんで同じ噺ばかり、というのを夜席でもまた感じることになる。

中入り後は口上、司会が文華さんで、左から新治さん、仁智さん、小二三さんと並ぶ。
普通の口上じゃなくて、対象の三人がそれぞれ挨拶をする形だ。
ちょっと変わっていて新鮮だった。新治さん、ここで今日のトリネタ「中村仲蔵」を予告して拍手が起きる。

次はいよいよ三三さん、かつてよく聴いていたんだけど、去年の小三治さんとの親子会で三年ぶりだった。でもその時は物足りなさがすごく残って残念だったので、今日の昼夜がすごく楽しみだった。
動物の小噺いくつかしてから「元犬」。この噺なぜか上方ではほとんどやらない。移すのにネックになるところとかないと思うし、動物ネタはいくつあってもいいと思うしみなさんすればいいのにと東京の人で聴くたびに思う。
三三さん、もちろん年齢の割には圧倒的に上手いのは分かっているけど、ひとつひとつ人間が犬のしぐさをするおかしさを丁寧にとぼけた味わいで表現しててさすがだった。昼席で上方の中に一人江戸でもきっちりと空気を伝えた。

続いて色変わりで英華さん、だけどこの人は文化庁芸術祭の大賞受賞者だ。出てきただけで舞台が圧倒的に華やかになるし、都々逸の拍手の反応でいつものように客席をつかむ。あとは客席の視線を集めて離さない。
そして少し早く三味線置いたなと思うと、踊ります、ここで大きな拍手。
こうもり、ていうらしい。「こうもりが、出て北浜の夕涼み」だって。歌舞伎役者がからんでるらいいけど、
北浜の夕涼みというとなにわ橋、「遊山船」聴きたくなった。
英華さん、いいな。

最後は新治さん、予告通り「中村仲蔵」。
もうね4回目なんだけど、なか仲蔵の設えに似せた衣装の佇まいがとてもいいし。終始クールに進める中にポンとギャグ入れるタイミングもいい。そして仲蔵の喜怒哀楽の変化の表現が聴き手の心を揺さぶる。
だけど、今日一番よかったのは「役者の意地は舞台で通せ」という女房のセリフ。そして、それで動く仲蔵。
たまたま酒屋で会った侍のビジュアルの表現が簡潔でいてとても伝わってくる。
盛り上げて、盛り上げて、下げは落語らしくすとんと落とす。
まさか今日仲蔵聴けるとは思ってなかった。
新治さん、ありがとう。

てことで、期待以上に言い寄席になった。繁昌亭昼席もこういう企画を次々打ち出してほしい。客の立場から言えば平等主義はいらない。
次に昼席行くのは佐ん吉さんの受賞記念ウィークかな。