2016.5.5 【繁昌亭GW特別公演 5/5・3回目】

【繁昌亭GW特別公演 5/5・3回目】 

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このブログは去年の5月から始めたので、ちょうど1年になる。元々ツイッターに落語会の感想を書いていたのだけど、長くなってきて140字で切っていくのが面倒になったのが、ブログを始めたきっかけだった。
1年間で195本、そのうち落語と関係ないのは10本ぐらいだろうけど、これだけ落語会に行って、よくこれだけ書いたなと思う。それで、実はブログが結構しんどくなってきてたので、1周年を機会に落語会の感想を気楽なツイッターの方に戻そうかと考えていて、何人かの人にそんなこと話したら、ダメと言われたので結局継続することにした。

そんな感じのこのブログ、2年目最初の記事は繁昌亭のGW特別公演だ。
繁昌亭では正月の三が日、5/3.4.5の三日間と9/15の周年日。この年に7日間が特別公演日となっている。
何が違うかというと、出演者がいい。1月5月の公演なら1口演で落語6席、色物2席の1日3公演なので3日間で落語は54席。それを選りすぐられて噺家が務めるわけだから、普段の昼席よりはかなりいい顔ぶれになる。
ただ、単純に計算しても一人あたりの持ち時間は昼席よりも短くなるので、必ずしもメンバーが満足度に結びつくとは限らない。
そして今日は3連休最後の夜とあってか少し寂しい客入りでのスタートとなった。

佐ん吉 / 田楽喰い
生喬 / 虱茶屋
小染 / 酔い亭主
姉様キングス(あやめ・染雀) / (音曲漫才)
春若 / 三十石
仲入り
文福 / 歌謡笑
あやめ / 妙齢女子の微妙なところ
福笑 / 桃太郎

佐ん吉さん、例によってNHK優勝まくらから。拍手、拍手、拍手! この話、一年間使えるな。
そして繁昌亭特別公演に初めて出番をもらったと。やっぱり優勝するといろいろと変わってくるんだな。
ネタは「田楽喰い」、何度も聴いているけど安定した面白さだ。佐ん吉さんの落語ってぶれないな、ということ改めて感じた。あまり出来が悪いと感じたことない。NHKでもそのあたりの評価も大きかったんだろう。

続いて生喬さん、昨日一昨日と池袋演芸場に出していただいたと。最近はとみに東西交流が活発になてきているけれど、生喬さんクラスの人が東京へ行くのはすごくいいことなのでは。よく「江戸の風」て言い方するけど、生喬さんの落語なんかは正に「上方の風」だと思うから。
そして、生喬さんのようなネタ数の多い人を寄席で聴く時は、何が聴けるのかとすごく楽しみになってくる。
と思っていたら、「虱茶屋」だった。何度か聴いてるけど粋さと汚さが混じり合ったような噺なので、生喬さんにあっているのかも。落語らしい楽しい噺だ。

次は小染さん、あまり聴く機会は多くないけど、なかなか渋くていい噺家さんだと思っている。特に酒の噺がよくて、以前聴いた「試し酒」は絶品だったなと考えていたら「替り目」だった。相変わらず酔っ払いが上手い。
演題が「酔い亭主」となっているのは独自の下げがからんでくるからで、いわゆる「替り目」半ばまでのことだ。
それと、この人の落語は持久力があるというか、爆発的じゃないけど、面白さ楽しさがだれることなくずっと続いていく感じだ。

そして姉様キングス、キャリアとか結成のきっかけとか言いだすと長くなるので省くけど、とりあえず久しぶりだ。
このブログで姉キンのこと書いた記憶がないので、一年以上聴いていなかったんだろう。
で、昼席同様の定番ネタだけど、とにかく受ける。何言っても受ける。まあ、繁昌亭最強の色物だろう。
やっぱりこの人たちの魅力は多芸さと徹底した創り込み。なんだ、「はなしか宝塚」と同じじゃないか。
残念だったのは、今日は染雀さんの落語の出番がなかったことだ。

中トリは春若さん、姉キンのこと、染雀さんのこと少しいらってから「三十石」
以前聴いた時、この日の三十石は独特だな、誰の型なんだろうと考えてたけど、今日春若さんが五代目文枝さんからつけてもらったと。春若さんは、船唄だけじゃなくて、機織りや麦踏みの唄も入れる。これが何言ってるのか分からないのだけど、なんとも川下りの風情がある。そして八軒家で余韻を残して旅は終わる。

仲入り後は、文福さんから。今日は色物枠だと思うのだけど、外の香盤は黒だった。まあ、黒でも赤でもどっちにしても楽しい芸なんだけど。冒頭から定番のなぞかけ連発。しつこく連発して受け続ける。最後の方は、たまさんのショート落語も影響受けてるのかなという感じだった。それからは相撲甚句昭和歌謡を歌いまくる。特に昔の歌謡曲は文福さんと同世代のおばちゃんたちに大人気だった。
やっぱり寄席にはこんな人絶対必要だ。

次はあやめさん、あがっていきなり「今のん兄弟子ですねん。まあ、色物でも古典落語でもほとんど変わりませんけど。」そこから昔自分がSM大喜利とかやっていた時の文福さんのことをちょっと暴露。
文福さん左右の袖から二度顔出し。
で、あやめさんのネタは久しぶりに聴くけど鉄板だ。40代後半三人での女子会の噺。この間の「できちゃった落語」の新ネタもそうだけど、あやめさん、女三人寄ればのネタいくつかあって、基本同じ流れなんだけど、設定の違いで同じようには聴かせない。これもよく受けてて、何度聴いても面白い。

そしてトリはいよいよ福笑さん。最初にいつものように最近の世間の動向いろいろ言って大変な中、そして三連休最終日の夜という普通は家にいる時間に、よくここへ来ていただいたと大層に感謝する。
寄席では基本ここから入る。分かっているんだけど受ける。もはや予定調和の世界だ。
そして、ネタは「桃太郎」。こちらも以前頻繁に聴いたけど、かなり久しぶりだ。
まあ、普通は前座噺なんだけど、福笑さんのは途中で語り手が親父から健坊にかわる。そこからの展開がとんでもなくて、鬼ヶ島に渡って鬼との大スペクタクルが始まる。最初の人情噺から芝居噺になり、最後は勧善懲悪の話が出てきて、世相を皮肉って下げは普通の桃太郎と同じに下げる。
この噺をここまで変えてしまう発想がすごい。
でも、少し声が不調だった気がするけど、来月文楽劇場の独演会もあるし楽しみだ。

てことで、特別公演らしく盛りだくさんでそれぞれの演者が全開で競い合ったいい会だったんだけど、残念ながら客席が淋しかった。1Fは100人いなかったし、2Fは見てないけどほぼいないだろう。三日目の最後の回だからと言って以前はここまで少ないことはなかったと思う。今回の他の回はそれなりに入っていたのかもしれないけれど、規模が違うとはいえ、動楽亭や雀のおやどの大入りの話を聴けば少し寂しい。何か新しい仕掛けが特別公演にも必要だなと強く思った。