2016.4.30 【第90回・千朝落語を聴く会@太融寺本坊】

 【第90回・千朝落語を聴く会】

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2か月に一度の千朝さんの会、今日のネタは「天王寺詣り」と「口入屋」。前者は初めてだ。千朝さんネタおろしとかいちいち断らないし、いつもきっちりした出来だから聴き手としてもそういうのを意識しない。
さて、「天王寺詣り」といえばやはり笑福亭のイメージが強くて、現に今もとてもいい口演する人いるけど、僕はこのネタ五代目文枝のがすごく好きなんだ。あの人のなんとも軽妙な雰囲気がこのネタの情景描写にすごく合ってると思ってて、一門は違うといいえ千朝さんにもある意味そんな「天王寺詣り」を期待してやって来た。

米輝 / 千早ふる
千朝 / 天王寺詣り
米團治 / 七段目
千朝 / 口入屋

開場前に待っているとき何かクールビズサラリーマンみたいな人がかがんで作業してて、そういえばもうそんな季節だなと思っていたら米輝さんだった。
ネタは「千早ふる」、この人で何度か聴いているけど、相川らす達者だ。そしてやっぱり視線の送り方がいい。みなさん上下振るので、なかなか視線は目がいくこと少ないのだけど。

そして千朝さん、一席目から「天王寺詣り」。あの界隈の話、夕陽ケ丘の地名のいわれ、四天王寺の石の鳥居の間に、春分秋分の年に二度だけ夕陽が沈むという「日想観(じっそうかん)」の話。格調高く?ネタに入った。
この噺、「ヒガンやがな」 で始まって、四天王寺界隈や境内をゆるく紹介していく。そんな中で過去現在の出来事が語られる。狭い範囲のロードムービーみたいだ。
で、千朝さんの語りに気持ちよくなっていたら、急に話が止まった。何かギャグでも入れるのかと思っていたら、どうもつまったみたいだ。10秒ぐらいで戻って後はまた元のいい流れになったのだけど、千朝さん、かなり聴いてるけど、つまるどころか噛んだのを見た記憶もほとんどない。伽藍を紹介していく場面でそんなつまりそうなところでもないと思うんだけど、千朝さんほどの人でも魔がさすことあるんだな。

そして今日のゲストは弟弟子の米團治さん。この人やっぱり上がっただけで空気が華やかになる。こういう人はなかなかいない。米朝ばなしをひとくさり語った後、兄弟子千朝さんは米團治さんが高校生の頃の入門だけど、弟子の中で唯一米朝がスカウトした人だと。素人名人会の審査員をしている時、当時の千朝さんが出演してもちろん名人賞を獲得して、米朝さんが「君、よかったらうちに来ないか」と言ったらしい。
余談だけど、関西では現在プロであってもなくても、素人名人会で名人賞をとった、と言えば、「ほおーっ」と感心され一目おかれる。持ってる人も今だに自慢する。
で、米團治さんのネタは「七段目」。声もいいし、振りも決まるし芝居噺がすごく合ってる。なんて言うかサラッとクサい感じだ。米朝さん亡くなって一年過ぎたし、これからのこの人にはいろんな意味で期待したい。

最後千朝さん、上がってすぐに「なんであんなことになったんでしょうね。」と先ほどの出来事あまりく納得できないようだ。聴いてる方も同じ気持ちだった。
で、「米團治さんが言ってたスカウトされたというのは勘違いで他の人のことでしょう。スカウトされるような人があんなミスはしません」と。やっぱりこだわってはる。
「口入屋」は、商家のいろんなことが出てきて、登場人物も場面転換も多くて、下げに向かってたたみかけるリズムがあって、難しいと思うけど好きな噺だ。だけど千朝さん今日はやっぱり今一ついつもの軽やかなリズムにのれてなかったように思う。まあ、こういう日もある。

今日は千朝さんのトラブルに驚いたわけだけど、ネタおろしから手の内にいれるまでのプロセスて、いろんな人を聴いてると全然違う。ある程度粗削りなままで客前で掛けて反応とか見ながら仕上げていく人と、ほぼ固めてからおろす人と。千朝さんは圧倒的に後者だと思うので、たまにはこういうこともあった方が、また次回以降が楽しみになってくる。
あっ、「天王寺詣り」は僕が初めてだっただけでネタおろしかどうかは分からないけどね。