2016.4.26 【できちゃったらくご!~オール新作ネタおろし~@動楽亭】

【できちゃったらくご!~オール新作ネタおろし~】

今日は写真を撮るのを忘れた。その替わりメモをとらせてもらった。なぜこんなことを言うのかというと、今日のこのブログの内容はメモとってないと書けないことが出てくるから。
僕はいつもはネタとネタの間に演題とかささっとメモするだけなんだけど、この「できちゃったらくご」だけはネタ中も時々メモさせてもらってる。新作ネタおろし6本だと内容がアバウトにでもなかなか覚えられないので。
そんなことで、今日もどんな噺がでるかと楽しみに開演を待った。

全員 / 出番決めじゃんけん
三風 / アバタラ人がやってきた
三金 / 廃校の怪談
あやめ / はばたけトップスター
たま / 落語と私
仲入り
南湖 / ガンジス川の仇討
遊方 / プカプカ抗争
全員 / あいさつと告知

最初に全員舞台に上がって出番順をじゃんけんで決めるんだけど、この時いつもうだうだ言うのが楽しい。この会はマニアックな会なので案外客数少ないのだけど、今日は50人近い。そんな客席に向かってたまさんが、「できちゃった初めての人?」  「落語初めての人?」  「道具屋聴いた事ない人?」 「胴切り知らない人?」 とか質問連発。何のリサーチやと思ってたけど、後で判明する。
で、結局上のような順番になってスタートした。

最初は三風さん、今日は三風さんだけネタおろしでなくて、先日の「創作落語の会」で披露したネタの再現。そういう人は開口一番に出るのが決まりになっている。
ネタは「アバタラ人がやってきた」。アバタラ人にマンツーマンで日本語を教える講師の話だけど、結局アバタラ人の方が日本語が達者で立場が逆転するという噺。アバタラ人の訳のわからないしゃべりが笑わせどころなんだけど、今回もこの人の新作はひっかかるところがある。対象のある部分を茶化して笑われるようにもっていく。
それがハゲとかの肉体的コンプレックスだったり、定年おやじの無理からな悲哀だったり、今日はある大陸の人たちを連想させるようなしゃべり方が度々でてくる。一言でいえば落語的なやさしさが感じられないことが多い。
面白いんだけどね、ひっかかるんだ。僕は。

次は三金さん、自分が中学時代の避難訓練で先生との行き違いからえらいめにあった話。でも結局給食で先生の分をもらえるようになったと。いつもながら食べ物がらみのハッピーエンドが多くて楽しい。
ここから「廃校の怪談」。廃校の一番奥にある宿直室に案内される時、七つの不思議にすべてあたってしまうと死ぬという噺。この七不思議がバカバカしくていい。で、結構意表をついていて先がよめない。「幽霊の辻」とかでもそうだけど、一本道で逃げ場がなくて次々いろんなことが起きるっていうのは聴いてるとなかなかのドキドキ感だ。そして下げもスコンとおさまる。

続いてあやめさん、5月の「はなしか宝塚」の公演に花組がミーマイをぶつけてきた、らしい。で、娘さんの宝塚ファンぶりがエスカレートしてる話から、ダチョウの羽の飾り物がとても重くてトップスターは大変だ、と。
ネタは、その「はなしか宝塚」でかける噺。トップが三人集まって食事している時に、ダチョウののろいで追いかけられる夢をみて、とりという言葉を口にすると「クククククー」と鳴くようになることが分かる。
設定は宝塚だけど、女三人寄ってわちゃわちゃするというあやめさん得意のパターンで爆笑。下げも決まってもうすっかり出来上がっている。
ちなみに、今回の「はなしか宝塚」で三公演通しチケットは20枚lぐらい売れているらいい。多分知り合い何人かいるだろう。

中トリはたまさん、出囃子が長い。ついに、できちゃった、でもこんな状況に。そこから神戸2号店の件に少し触れて話は「落語と私」。すごくマニアックなネタなので、あまり落語聴いてない人はすみません、と。
男二人の会話から、片方が「たちぎれ線香」を聴いて小糸に惚れてしまったと。そして、それが載ってる本をあぶればその物語の中に入れるということがわかり、米朝全集から噺の中に入っていく。果たして本当に小糸に会えるのか。
そこから、噺は古典落語のネタをつなげてストーリーが展開していく。これが圧巻だ。
まず、たちぎれ線香、肝つぶし、こぶ弁慶、平林、植木屋娘、胴切り、鉄砲勇助、道具屋、動物園、明石飛脚、書割盗人、花色木綿、皿屋敷、いらち俥、仔猫、お玉牛、三十石、延陽伯、崇徳院、時うどん、七度狐、ちしゃ医者、禁酒関所、看板の一、再びたちぎれ線香、下げは天狗裁き
何か抜けてるかな。しかし、よくもまあここまでの構成を考えたな。僕は動物園のところで一番笑った。鉄砲でうった猪の腹を開けると人間が出てきた。実はぬいぐるみやった、と。こんな調子でネタをつないでいく。
何度でも聴きたいな。確かに場所を選ぶネタだけど。

中入り後は南湖さん、インドに行った時のこと。インドにも語り部のような仕事があって、そのカーン君という人と知り合いになり意気投合した。その日とは噺を書くこともする。で、日本に来たことないけど日本のこと詳しくて、講談の台本を書くことを約束し後日送られてきた。それを今日はすると。
で、カーン君の台本で、インド人だから突然踊りだす場面がある。南湖さん講談師は踊らない、と言いながら三味線が鳴りだす。でもいや踊らないと。でも三味線鳴りやまず。ついに踊った。あの天井の低い動楽亭の高座で。
噺の内容はある事情で捨て子をして、その子が自分のところに戻ってくる算段が狂い戻らなくなってその子が成長してからの後日談。それが仇討につながる。中途半端なところで終わったのは、何も講談だからでなく、カーン君の台本がそこで終わっていたから。続きが届くのが待たれる。

最後は遊方さん、ネタが三金さんとかぶるけど学校ものだと。で、昔は学校でのあだ名のつけ方がひどく単純だった。先生にも生徒にでもすぐにあだ名がついた。そんな話で自分の空気に変える。そして、いままで学校もの三本創ったけど、なかなかやりにくくなったネタもあるのでそれを合体させると。
噺は出来の悪い生徒が喫煙のあらぬ疑いをかけられて処分されそうになる。先生はえこひいきして端からその生徒の言い分をきかない。そこで彼をかばう生徒が出てきて流れは変わっていくという、遊方さんらしいバカバカしくも友情の熱い噺だった。

今日も楽しかったけど、やっぱりたまさんに尽きる。こういう発想するひとは新作派の人なら他にもいるかも「しれないけど、あれだけのネタつなげて一つの噺としてもちろん受けまくりながらつくれるというのはちょっとすごいと思う。マニア向けネタとして大事にしてほしい。そういえば他にも「客いじり殺人事件」とかたまさんマニア向け新作結構創ってるな。自分が誰よりマニアなんだろう。