2016.4.19 【吉坊ノ会@近鉄アート館】

【吉坊ノ会】

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毎年ほぼ春秋のの二度開催される「吉坊ノ会」。いつもなかなかのネタを二席披露で楽しみな会だ。また、ゲストもよく考えられたような人選で、会場が少し不満だけど、まあ、それはとりあえず置いといて、今回で11回連続の参加になるから長く皆勤を続けている方だろう。その間に確実に進化していると思える吉坊の落語。今日はどんな顔をみせてくれるのか。さあ開演だ。

呂好 / みかん屋
吉坊 / 三枚起請
春野恵子(浪曲) / 両国夫婦花火
吉坊 / 本能寺

呂好さん、髪が短くなったのか少し印象が変わった。そのせいか落語もえらく勢いが前面に出ていた。やっぱり聴き手にこんな風に伝わる時は演者がのっているてことなんだろう。今までも悪くなかったんだけど、また聴きたいと思わせるまであと一歩だった。これから先が楽しみだ。

吉坊、まくらは米朝さんの金比羅落語研究会での話。厳しかったと。そこから、今日の日程が直弟子米左さんの繁昌亭独演会とかぶって米左さんがずっといろいろ気にしてる。今日も朝からメールがあったと。何か米左さんの人柄が出てるいい話だ。
一席目は「三枚起請」。茶屋噺の中でもかなり好きな噺だ。三者三様の反応と、小照の生き様、開き直り。筋が細かく次々に展開する。最終的に噺を宙に浮かしてポンと放り投げるような下げもいい。
吉坊のは、まず小照のことを話す喜六のうれしそうな顔がいい。これがあるから噺がトゲトゲしない。そして、登場して起請が三枚ときいて怒る清八。妹が金の算段したことを告白。これきくと小照は極悪人なんだけど、そこから開き直らせて下げに持っていく。
すべて、流れるように噺がすすむ。見事だった。

そして、今回のゲストは浪曲春野恵子さん。以前は繁昌亭昼席とかでよく聴いていたけど、最近あまり機会がなくてかなり久しぶりだ。当時僕はほとんど浪曲を聴いていなかったけど、この人は見た目が麗しいとか、地声がかわいいとかいう印象で、芸人の場合それが必ずしもプラスに作用しないなと思っていたけど、今日は全く違ってた。声が圧倒的に違ってた。数年でこれだけ変わるかというぐらい。この演目以前にも恵子さんで聴いてるけど、もちろん聴いてて気持ちよかったし、心もつかまれた。
また、気になる浪曲の人が一人増えた。

吉坊最後は、国立演芸場銀賞をもらった噺を軽くして、「本能寺」へ。
この噺は米朝一門の人数人しか聴いていないけど、パロディというより本息で芝居をする噺。で、その方がやってる方は楽しいと、吉坊。芝居上での「明礬」の説明よく分かった。明礬丁稚はそこからきてるんだな。
そして、下げの仕込みをさりげなく前半で触れて、このさりげなくが難しいと思うのだけど、そこから芝居振りに入っていった。これも所作のひとつひとつが切れていて素晴らしかったな。
最初に花粉症で声が不調て言ってたけど、そんなこと全く感じさせなかった。

てことで、2時間半強、堪能したというのがぴったりな会だった。知り合いの落語ファンも言ってたけど、四席でこの時間だからゆったりとしているんだけど長さを感じないという理想的な時間経過だった。
プログラムに次回12月13日て載ってたけど、まだ近鉄アート館が続くんだな。仕方ないか。
それと、「本能寺」で「吉坊!」とかやたら声をかける客が下手後ろの方にいたけど、困ったものだ。落語ファンじゃないと思うけど、芝居噺のたびにこういうのが現れたらどうしたらいいのだろうか。