2016.4.16 【繁昌亭昼席】

【繁昌亭昼席】

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いい顔ぶれなので発売日におさえた昼席、土曜日とあって当然完売で補助席二列だった。これぐらいの番組の日がせめて月の1/3ぐらいあれば、落語ファンの目ももうすこし昼席に向くのではないだろうか。まあ、それでも客入りは悪くないからいいのかもしれないけど、寄席文化ということを考えるとやはりさびしい。東京の寄席はもちろん、上方の落語ファンの評価は動楽亭昼席の方がまだ高い。繁昌亭が上方落語のメッカを自認するのであれば、やはり昼席番組の改編は必要と思うのだけど。

瓶生 / 牛ほめ
三幸 / 空みなよ
今輔 / 飽食の城
ぽんぽ娘 / (メイド漫談)
恭瓶 / 平の陰
新治 / 狼講釈
仲入り
伏見龍水 / (曲独楽)
さん喬 / 井戸の茶碗
文昇 / 紀州
雀三郎 / 親子酒

瓶生さんは初めて。キャリアみると由瓶さんのすぐ上になってるけど、どうしてこの出番なんだろう。
ネタは「牛ほめ」。何かつかみどころのない印象だった。

続いて三幸さん。この人の新作これまで結構聴く機会あったんだけど、それほどピンとくるのはなかった。でも今日のはかなり面白い。
九州から出てきて大阪で彼女と暮す男が、二人共通の友人である主人公にもう彼女と別れて九州に帰ると電話してくる。そこで思いとどまるよう説得試みるけど相手は次々場所が変わって大阪の地理を知らないから想定外の動きをする。そこで主人公が彼女に指令を出して追いかけさせる。それを電車の発車チャイムとかを入れながらするのですごく臨場感がある。果たして二人は出会えるのか。舞台は主に御堂筋線阪急電車。更にどうにでもアレンジできると思うし、この噺秘かに新作の傑作ではないのか。

次の今輔さん、初めてでこの人も江戸の新作派だけど、今日の噺は斬新だった。
まくらで落研時代や修業時代の話、またラーメン屋の話とかをとりとめなく続けていて、これはこのまま気がついたらネタに入っているパターンかなと思っていたらその通りだった。
戦国時代の設定でいくら兵糧攻めをしても相手が降参しなくて、どうなってるんだとなって、実は相手が自分の城をお菓子の城に作り替えて、それをずっと食べていたと。どの部位が○○でとか細かく出てくる。
これも相当すごい発想の新作だ。今輔さんぜひまた聴きたい。

続いてぽんぽ娘さんだけど、この新作連発の前にはメイド漫談も少し色あせていた。でも今日の演者を順番にいらっていくのは相変わらずシャープだったけど。

次は恭瓶さんで「平の陰」。何度か聴いてる。上手いと思うけどもう一つ色がない。鶴瓶一門にはそんな人も何人かいる。師匠の影響が感じられない人が。

中トリ新治さん。「待ってました!」と拍手喝采。今日の着物がなかなかだった。濃い茶色に朱色の柄、何の柄かわからなかったけれど。そこからいつもの毛生え薬のまくら、床屋の場面から「狼講釈」。久しぶりだけど相変わらず見事だ。ただただ講釈のシーンに聞きほれる。

中入り後は伏見龍水さんの曲独楽から。最近大阪では曲独楽をみられる機会が減っているから久しぶりで楽しかった。大神楽でもそうだけど、「おおーっ」てなる技がいくつ繰り出せるかだな。

続いてさん喬さん、何を掛けるのかと楽しみにしてたら、なんと「井戸の茶碗」だ。まくらなしでちょうど20分。しかも通常の下げまで。細かいところ省いているところはあったけど、大きな流れはそのままで。何か得した気分だ。
さん喬さんのは、高木も千代田も小判をもらうことをそれほど強固に固辞しない。だから清兵衛の困惑もそれほど大きくない。このあたりひょうっとしたら通常バージョンだと違うのかなと思った。固辞と困惑でかなり時間をつかってるもんな。いや、それは関係ないかな。

モタレは文昇さん、坂本龍馬に似てると言われると。そこから幕末の話、最後の将軍の話になり、徳川7代将軍が8才で亡くなった時の、尾張紀伊の後継争いの話に。これがネタの「紀州」だ。地語りが多い話で会話は少ないんだけど、文昇さんの語り口が楽しくて、あまり掛からない話だけど逆に良かった。文昇さんはいつも彦八の龍踊りで大活躍だけど、落語ももっと聴きたい人だ。

そしてトリは雀三郎さん、いつもの実は歌手ですまくら。これは絶対受ける。今日は結構歌って、そこから今席実は酒の噺が一度も出ていないのでお酒の噺をします、と。楽日なのに珍しいな。
「親子酒」だ。雀三郎さんの酔っ払いはすごく楽しいんだけど、この人の落語は酔っ払いに限らず、すごく映像的にみえる。俥の噺ならもう俥屋にしかみえなくなる。技術なんだろうけど、どこが違うんだろうか。酔っ払いは上手い人たくさんいるんだけど、雀三郎さん、あんなに特徴的な顔なのに出演者が憑依してるかのようになる。
今日も最後は二人の違う酔っ払いが激突して終わった。

ということで今日はいい寄席だった。雀三郎さん、新治さん、さん喬さん。ベテラン三人の見事な技。文昇さんのなかなか観れない語り口。新作ではじける東西の若手。これだけそろうと寄席の楽しさ満載だ。やっぱり繁昌亭昼席、楽しそうだと思った時は期待を裏切らない。