2016.4.11 【笑福亭たまの実験落語会・ナイトヘッド@動楽亭】

【笑福亭たまの実験落語会・ナイトヘッド

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たまさんが、大阪で主催してる会を今年から再編したことによって復活した「ナイトヘッド」。かつては繁昌亭で土曜日の深夜枠で開催されていた会で、今回の主旨は新作古典を問わずネタおろしの会になっている。しかし、再編した主催会を再々編することになったため、今の形の会は6月までの4カ月限定となった。
3月からのスタートだったが、来れなかったため今回が初めてになる。「一人大喜利」てのがみなさんの話を聴いてもどんなのか想像がつかなかった。古典ネタおろしの二席と合わせて楽しみだ。

米輝 / 千早ふる
たま / 一人大喜利~蛸芝居
染左 / 猿後家
たま / 強情
仲入り
たま / いらちの愛宕詣り

米輝さん、米團治さんのまくらでえらく受ける。まくら受けしやすい師匠も弟子にとっては財産なのか。
そこから「千早ふる」。相変わらずうまい。で、ビジュアルも、なんて言うか見ている誰もが不快感を持たない風貌だな。素人時代からこんな感じだったのだろうか。

たまさん、一人大喜利は開場時から一人ふたつずつ五文字の題を出してくださいということで、それから無作為に選んで「しりとり川柳」をすると。五文字と五文字の間の七文字を即興でつくってつなげていく。5~6題ぐらいできたのかな。しかし毎月高津で鍛えてるとはいえ早いな。五文字が選ばれた人には、その川柳入りのミニ色紙がたまさんからプレゼントされる。
基本まくらなしになっているんだけど、ひとつだけと今日のゲスト染左さんの話を始めた。文珍さんがらみの下座の手順違いの件だ。大いに受けてネタは染丸さんからの「蛸芝居」。以前に一度だけ聴いているけど、一段とアクションの大きさが目についた。切れがあっていい芝居噺だ。にらみとかの表情もいい。たまさんの芝居噺はやっぱり独特だな。全部の要素が他の人よりも少しずつ派手目になってる。

続いて今日のゲストの染左さん、たまさんの二年先輩だと。で、前回ゲストの由瓶さんは一年上。普通自分の会のゲストにあまり年期の近い先輩は呼ばないものだけど、たまさんは多分先輩だとは思っていないのだろうと。
で、「芝居噺は芝居のパロディなんですけど、たまさんのは芝居噺のパロディみたいですね」。うまいこと言わはる。この先もどんどんパロディ化が進みそうだ。
噺は「猿後家」、この噺冒頭の「胴乱の幸助」なんかとかぶるところ、最近省くこともあると思うのだけど、そこもきっちりと。噺の芯はお家へのべんちゃらと、お家の喜怒哀楽の反応の面白さだけど、奈良名所の言い立てとか、内外美女の紹介とかなかなか格調高い部分もあって、その辺りがとても端正に進んでいく。そしてしくじっての繰り返し。これも筋のはっきりしてる噺でやや飽き気味だったけど、今日で復活した。
染左さんもっと聴きたいな。

たまさんによると、染左さんはたまさんの弟さんの落語の先生らしい。

ここから二席がネタおろし、まず最初は「強情」。案外聴く機会が少ないけど、しょうもない意地を張り合うどちらか言うと江戸っ子的な噺なのかな。僕は嫌いじゃないし、もっと掛けてほしい。たまさんがすると、内容は全然違うんだけど噺の出入りの仕方が「蛸芝居」と似ている気がした。15分ということだったけど、いろんな形でもう使えるネタになってると思う。正直僕はどこがたまさんのオリジナルなのかわからなかったんだけど、これからも聴きたい。

休憩入れて最後は「いらちの愛宕詣り」、そういえば3日前に「堀之内」を聴いたばかりで、噺の筋は東西でもほとんどかわらないけど、聴いた印象は随分違ってた。やっぱりたまさんのは前かがりになるので、こういうわちゃわちゃと動き回る噺は楽しい。出ていく前のふんどしのところがちょっとしつこくフューチャーされてていい。で、後半の弁当を間違える件からはバサッとカット。これで10分らしい。この間の若手グランプリ予選の時も言ったけど、たまさんの古典カットの技は大胆かつ的確だ。だから笑いの密度が更に濃くなる。

初めての会だったけど楽しかった。この会5月6月と後2回で、それ以降はネタおろしの会がどうなるのか分からないけど、たまさんのネタおろしは噺を楽しむ+噺の完成度を楽しむ+長崎さわぎを楽しむ、だと思っているのでどんなになるのか興味は尽きない。