2016.3.3 【動楽亭昼席】

【動楽亭昼席】

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3月の昼席日程が判明した時点で、一番いい顔ぶれだともっぱら話題になっていた今日の番組。さぞや客が殺到するだろうと思っていたが50人台ぐらいか。ちょっと拍子抜けだ。まあ、考えたら木曜の昼間なんだからこんなものか。でもかなりの数並べられて結構空席だった座椅子をみると、主催者の思惑も外れたようだ。
それはともかく、仕事が休みなのか、休んだのか、してないのか、今日ここにこれた人はうらやましがられるいいメンバーなのは間違いない。期待が一杯で開演だ。

米輝 / 動物園
吉の丞 / 軽業
雀喜 / がまの油
紅雀 / 饅頭こわい
仲入り
雀三郎 / 哀愁列車
南天 / 火焔太鼓

米輝さん、「動物園」は初めて。でもこの人、何を聴いてもきちっとメリハリのある噺をするな。最初は若手というにはちょっと勢いがないかなと思ったけど、何度か聴いてるとむしろ落着きが気持ちよく聴けるようになってきた。こういう人のもっと大きなネタも聴きたい。

次は吉の丞さん、ニューヨークにいる妹さんが外人と結婚して弟ができた話。とまどってると。
ネタは「軽業」、吉の丞さんのこの噺何度か聴いてるけど、とにかくノリがいい。いいリズムを刻んでトントンと進んでいく。今日は特別に綱渡りの実演つき。といっても吉の丞さんがしたわけではない。扇子と指で見立てていろんな技を繰り出す。この人の落語はこういう切れ味勝負みたいな噺がとにかく楽しい。

続いて雀喜さん、上がっていきなり落語の基本知識の話。上方と江戸の違いとか、なぜ見台を使うとか、でもここのお客さんはそういうことはほとんど知ってる気がするのだけど。繁昌亭昼席とは違う。
で、動楽亭はどうしても古典中心になるので、雀喜さんには新作を期待した。でも今日は「がまの油」。
酔っぱらってから二回目の口上がよかったな。あまり酔っ払い系の噺しないイメージがあるけど、なんて言うかよくみなさんがする酔っ払いとはちょっと違ってた。あまりデフォルメされてなくて本物ぽかった。こういう酔っぱらいもいいな。

ここまでで、すでに客席は相当出来上がってる。て言うと酔っぱらいみたいやけど、ここから更に強力な三枚看板が登場するわけだ。

中トリは紅雀さん、本来は僕はこんな出番でなく雀喜兄さんがここになる。でも動楽亭はそういう出番も組んでもらえるからありがたいと。何かえらく後輩然とした物言いで始まったが、そこから楽屋での雀喜さんの話になって、着替えを手伝おうと思ってるのにどうこうとか、着物着ないで羽織を着ていたとか、真意は単に雀喜さんをいらいたかっただけだった。それで客席爆笑。さすがだ、使えるものは目の前の先輩でも使う。
噺は「饅頭こわい」。このネタ、前半にいろんな人がいろんなものを好きだ嫌いだと言う時の表情がそれぞれすごく豊かで楽しい。やっぱり顔芸の第一人者だな。で、怪談めく部分をきっちり演じて、この部分はとってつけた感はあるけど、クライマックスの饅頭シーンへ。ここはもう紅雀さん、わちゃわちゃの第一人者でもあるわけだからまた大爆笑。きっちりと中トリを務めた。

仲入り後は雀三郎さん、この出番も本来なら南天さんと逆だけど動楽亭ではよくある。やはり聴き手としても自分の目当ての人が三つ目やモタレより、中トリ、トリだと気合が入る。
まくらで乗り物の話、乗り物ネタと言えばあれとあれと、どっちも新作だけど。
「哀愁列車」だ。好きな方でよかった。
雀三郎さんがなんで面白いとか今更言ってもしょうがないけど、この人はやっぱり全身落語家だ。
声、口跡、顔、表情、所作、身体の動き、すべて面白い。そしてもちろん、歌もいい。
こんな人もなかなかいない。

トリは南天さん、上がってこの動楽亭は1月から木戸を500円上げたけど、幸いお客さんは減っていないと。確かにそれは僕らも感じる。普通は2000円→2500円になったら客数は減るだろう。それが減らないてことは魅力的な番組が提供できているからだろう。僕も、えー2500円かと思ったけど結局来る回数は今のところ減っていないと思う。そこから、寄席の出番の組み合わせでお客さん増えたり減ったり、いろいろあってなかなか分かりにくいと。自分の好きな人が誰と相性いいかは長年聴いていればわかってくるけどね。
で、今日は何が掛かるかと思っていたら「火焔太鼓」4日前に神戸で聴いたばかりだ。でも今日も爆笑だった。
「目いっぱい」とか「おさよー」とか、下げも含めてもう完成品だな。僕はこれで3回目だけど、南天さんの火焔太鼓、まだ聴いてないという人、これから結構掛けられる気がする。

ということで、今日も開口一番からトリまで、全員楽しくて途切れることなく爆笑が続いて寄席の醍醐味を十分に味あわせてもらった。期待したメンバーで期待通りきっちり客を楽しませて帰す。プロの仕事だ。